凄いものを見てしまった。
7月23日、下北沢のライブハウスSHELTERで行われた『魔性姉妹』のファーストライブ。今まで見たことのないような圧倒的な世界観。その日会場は一種異様な空気に支配されていた。
『魔性姉妹』は、ともに20年以上のキャリアを持つアーティスト同士のプロジェクトで、7月15日『魔性都市 ~Femme fatale city~』を配信限定でリリース、デビューを飾った。
魔性姉妹の“姉”森若香織さんは、1988年、バンド『ゴーバンズ』のボーカルとしてデビュー。アルペンのCM曲になった『あいにきて I・NEED・YOU!』などのヒット曲があり、1994年のバンド解散後は、ソロでの音楽活動に加え、女優(実写版『セーラームーン』のお母さん役としてご記憶の方も多いのでは?)、作詞家などとしても活躍してきた。
一方“妹”宍戸留美さんは、1991年アイドル歌手としてデビュー。1993年に所属事務所を辞め、当時としては異例の“フリーのアイドル”として活動する。1995年からは声優としてもしても活躍。現在は、その他にカメラマン、イラストレーターなどマルチな才能を発揮している。
そんな二人がユニットを組んだのは、今年の初め。ライブハウスでの対バンの話からプロジェクトが発足すると、二人の人脈を通して続々と賛同者が集まり、物語の世界観の設定を嶽本野ばらさん、イメージイラストを児嶋都さん、音楽をHONDALADYがそれぞれ担当することとなった。
満員の観客の前で始まったライブでは、まず、宍戸さん、森若さん、それぞれのソロ曲を披露。続いて、音楽を担当したHONDALADYのステージの後、いよいよ『魔性姉妹』の登場となった。
壮大なSEが流れる中、オリジナルのゴスロリファッションに身を包んだ二人が登場。デビュー曲『魔性都市 ~Femme fatale city~』を歌い始めると、その瞬間会場の空気は一瞬にして彼女たちの色に染まった。
妖艶、神秘性、神々しさ、いかがわしさ。どんな言葉を持っても表現しきれない魅力がそこにはあった。20年以上もステージに立ち続けている二人が、本気でやるとこんなことまでできるのかと驚嘆した。
バンドにしてもアイドルユニットにしても様々なコンセプトや設定を作って活動する例は多いが、昨日今日に作られた世界観だけでは決して表現できない魅力が会場にあふれていた。
ステージではアンコールも合わせて8曲を披露。振付や構成も含め、これまでの彼女たちの経験と才能が遺憾なく発揮された素晴らしいひとときだった。
それにしても『魔性姉妹』とはよく名付けたものだと思う。
今にして思えば、であるけれど、ゴーバンズ時代に森若さんが歌っていた曲にも、アイドル時代の宍戸さん中にも、どこか他の人たちには無い“わずかな毒”のようなもを感じていた。その当時は「何か心に引っかかる」という程度の感覚でしかなかったが、それは確かに彼女たちの中に息づいていた“魔性の芽”だったのかもしれない。そして、何かはわからないながらも、その怪しげな魅力に私たちファンは惹かれていったのだと思う。
20数年の時を経て、歳を重ねた二人は、十分に熟成された“魔性”を存分に見せつけた。ライブ中、今まで感じたことのないような空間に身をおきながら、二人の放つ“魔性”に溺れた。
『魔性姉妹』としての活動は今後も続けていく予定で、次回は10月21日、同じく下北沢SHELTERでのライブが決定している。その“魔性”を実際に感じたい方は、会場に足を運んでみてはいかがだろうか。
デビュー曲の『魔性都市 ~Femme fatale city~』はMajixで配信限定リリース。http://www.majix.jp/artist_detail/55
※写真は魔性姉妹公式ウェブサイトより