依頼がくるまでの流れも網羅!最前線捜査部隊「科捜研」のお仕事とは?

  by 丸野裕行  Tags :  

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

『科捜研の女』という沢口靖子さん主演のテレビドラマがあります。最新の科学技術を活かして、現場の証拠を徹底的に洗い出し、分析。事件解決に導くのが彼ら、彼女たちの仕事です。しかし、ほかの警察官が主役のドラマとは違い、その存在や捜査方法はベールに包まれていますよね。

今回は、科学捜査研究所(科捜研)がどのように捜査に当たっているのかを、元科捜研に所属していたF氏(61歳)にインタビューしてみました

科捜研は覚えることがたくさん

丸野(以下、丸)「科捜研の職員になるにはどのようにすればよろしいんですか?」

F氏「まずは、科捜研で3ヵ月の研修を受けることになります。そこで、科捜研のノウハウを叩き込まれるわけですね。それからは、各地へと配属に……」

丸「ほほう」

F氏「科捜研の業務は大きく分けると、血液や精液、DNA鑑定などを行う≪法医≫、毒物や薬物鑑定と工業製品などの鑑定を行う≪化学≫、筆跡やPCの鑑定と印鑑鑑定などを行う≪文書≫、プロファイリングやポリグラフの鑑定を行う≪心理≫、防犯映像解析や音声解析と事故検証を行う≪物理≫に分かれています」

丸「面白いですね」

≪心理≫は唯一現場に赴くことがある

丸「科捜研に鑑定依頼がくるというフローを教えていただきたいんですが……」

F氏「まず、鑑識官が事件があった現場で物的証拠になる様々なものを収集します。指紋や遺留品ですね。それからは、警察署長へと連絡がいき、科学捜査研究所所長へ鑑定をお願いしてきます。科捜研の所長から専門部署に鑑定を命令して、科捜研職員が鑑定。所長にその結果を報告。それをまた警察署長に戻す感じですね」

丸「ははぁ~、やっぱり面白い」

F氏「面白いといえば、その中でも≪心理≫です。科捜研の人間が事件が起こった現場に出向くことは稀なんですが、心理では現場情報を収集するために現場に出ます。ポリグラフを用いた捜査の場合は、被疑者に対する質問を絞らないといけないのです。ですから、例えばA地点からB地点まで血痕や足跡が残っていたとします」

丸「はい」

F氏「“あなたはどのような道のりでB地点まで行ったのですか?”という質問の答えを3択にします。1番は≪走って向かった≫、2番は≪ゆっくりと向かった≫、3番は≪ヨロヨロと蛇行しながら向かった≫という質問をします。どれかの質問に反応が出れば、それが答えです。凶器を捨てた場所を特定できたりするわけですね」

数年前の遺体からの毒物を検出する作業

丸「薬物ってどんな感じで鑑定するんでしょうか?」

F氏「まずは≪尿検査≫ですね。芸能人が薬物などで逮捕される事件が続発していますが、3日以内なら薬物を尿検査から検出することが可能です。1週間以内であれば、鑑定の確率は約50%、3~4週間を過ぎてしまうと難しいでしょうね。しかし、毛髪鑑定であれば、1年前の薬物使用までわかるんです」

科捜研史上難解な事件が起こった

丸「いろいろな技術が結集して、科捜研は成り立っているんですね。難解な事件はありましたか?」

F氏「そうですね……北九州監禁連続殺人じゃないでしょうか」

丸「あの地獄絵図のような事件ですね」

北九州監禁連続殺人事件……逮捕された松永太と緒方順子は、弱みにつけ込み被害者家族を地下に監禁。金を巻きあげた上に、虐待と電気ショックを用いた拷問によってマインドコントロールし、互いの不満と不信感をあおって、被害者同士で殺し合いと死体処理を行わせた事件。殺人事件史上稀に見る凶悪犯罪で、検察側は被告人の男女を「鬼畜の所業」と断罪した。

F氏「彼らの起訴は間違いないものとされていましたが、その際の罪名は明らかにできませんでした。監禁罪(逮捕・監禁罪)での起訴、もし監禁罪であれば監禁罪・傷害罪になるのか、それとも逮捕監禁致傷罪の監禁致傷罪になるのか。物的証拠がなく、非常に苦労したそうです。松永太死刑囚と緒方純子受刑者は黙秘しているうえに、物証が揃わない。当然です」

丸「ははぁ~」

F氏「めぼしい物証があれば科捜研に持ち込んで鑑定を行うのですが、科捜研にあがる資料の数は1桁足らず。被害者が殺害されたマンションの押収物であるノコギリは刃こぼれすらしていなかったといいます。1年以上放置されていた賃貸駐車場にある被害者の車を計3台押収しましたが、車内からはルミノール反応(血液反応)も出ませんでした」

丸「どうやって立件したのですか?」

F氏「捜査本部として、殺人での立件も視野に入れて、地検がひっくり返したと聞いています。遺体の解体に使われたノコギリやミキサーを購入した領収書、関係者証言から殺害に使用され、河川に捨てられていたノコギリの発見、死体解体の音や臭気、ゴキブリの大量発生などを不審に思っていた部屋の住人の証言など、間接証拠が集められ、福岡地裁小倉支部に、被告人・松永と緒方両者の起訴状を提出したということです」

丸「そんな裏側があったんですね」

様々な苦労がある科捜研のお仕事。F氏はこう締めくくりました。

F氏「科捜研でも、足で現場を回る捜査員には頭が上がりませんよ」

私たちの平和な生活を守ってくれている警察官や科捜研の方々はこのように日々自分を研鑽して努力され、お仕事をされています。警察関係者に敬礼!

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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