恒松祐里「怖いのはお化けではなく、人間」 主演ホラー『きさらぎ駅』には「意外と道徳的なメッセージが込められているのかなと思います」

  by ときたたかし  Tags :  

インターネット掲示板から始まり現代版“神隠し”とも言われ、人々の心を虜にしてきたKING OF 都市伝説を原案に映画化したホラー映画、『きさらぎ駅』が全国公開中です。

大学で民俗学を学ぶ女子大生の堤春奈(恒松祐里)が、インターネット上で話題となった「きさらぎ駅」という異世界駅を卒業論文の題材として決めたことで、その謎に迫る姿を描いた恐怖作品となっています。

ガジェット通信では、主演の恒松祐里さんにインタビュー。作品のテーマのことや、映画初主演の感想など、さまざまなことをうかがいました。

■公式サイト:https://kisaragimovie.com/ [リンク]

●「きさらぎ駅」は有名な題材ではありますが、今回の脚本の最初の印象はいかがでしたか?

実は私、ホラー作品が苦手なんです。この話をいただいて、初めて映画の元になった2ちゃんねるの投稿を読んだんですが、とても怖かったので、台本を読む時も「怖いだろうな」と思いながら読み始めました。確かに怖かったんですが、それだけではなくエンタメ的な面白さもたくさん散りばめられていて、面白いって感じました。

●映画は興味が途切れないというか、先が気になる構成でしたよね。

そうですね。特に前半ではFPSという手法で撮られているのですが、一人称視点の映像になるので、VRを観ているような感覚になりますよね。あたかも自分がカメラの視点になる手法を用いているので、観客のみなさんも自分がきさらぎ駅に行っているような感覚になると思うんです。

●そうなんです。自分が映画の中の世界に行っているような気にもなるというか。

それまでの展開も記憶に残りやすいですよね。ちょっと前に何が起こったのか考えながら観ると言いますか…観客のみなさんもただ観ているだけでなく、自分が記憶している台詞などを頼りにいろいろなことを考えながら、体験しながら楽しめる映画なんです。一方的に驚かされるだけでなく、自分でも推理できるような面白い作品だなと思いました。

●ストーリーを通して伝えるこの作品のテーマについてはどう考えていますか?

ホラー作品なのですが、怖いのはお化けではなく、人間ですよね。人間のずる賢いところや、偽善者になってしまうところや、好奇心があり過ぎると危険に巻き込まれてしまう、そうですね…全体的に人間の闇や危うさを描いていると思いました。だからこそ観客のみなさんも共感できると思いますし、意外と道徳的なメッセージが込められているのかなと思います。

●主人公の春奈のようなところはありますか?

もし、わたしが春奈と同じような状況になってしまったら、多分…けっこう冷静に対応できるような気がします。「あー!どうしよう!」とはならないような気がします。でもそもそもわたしは行き方がわかったとしても、めちゃくちゃ怖がりなので行かないと思いますが(笑)。

●ところで今回、意外にも映画初主演でしたね。

お話が決まった時、とてもうれしい気持ちになったのと、実はわたしには密かな目標がありまして、22歳までに初主演映画に出たいという想いが自分の中にあったんです。この撮影が始まった日が、23歳になる2日前だったので、ちゃんと目標を果たすこともできたんです。だから、個人的な意味でもとても印象に残る作品になりました。主演だからと気負わずに、みんなで協力しながら楽しめました。

●ホラー作品を経験して、何か学びはありましたか?

「ホラー映画は緊張と笑いが紙一重」と永江監督がいつも言われていて、コミカルなシーンが実際あったのですが、そのシーンを撮影しながらその言葉が理解できたんです。緊迫したシーンでは、真剣にやればやるほど面白くなるという。なんとなくわかってはいたのですが、今回の撮影で体感としてつかめた部分はありますね。

●映画での主演が叶った今、次の目標は何でしょうか?

今年はドラマ、映画、3月にアミューズ主催のステージで歌やダンスなどを披露して、いろいろな経験をさせてもらいました。今年の夏はストレートプレイを初めてやるのですが、いろいろなジャンルで初めて体験することが多い年になりました。長い俳優人生の中、どこが自分のホームが見つけたいですし、苦手なところを探して克服していけるように頑張りたい。これからの道筋を立てていける一年にしたいなと思っているんです。

●初めてのことに立ち向かう時に不安はないですか?

楽しみです。子どもの頃からずっと舞台に出たかったので、念願のストレートプレイなんです。楽しみという気持ちの方が大きいです。

●今日はありがとうございました。最後にメッセージをお願いします。

この作品はホラーというジャンルではあるのですが、ホラー映画が苦手なわたしもとても楽しめた作品になっています。FPSという手法を採用して「きさらぎ駅」の世界を再現して体験型アトラクション・ホラー映画になっていると思います。R指定でもないですし、お子さんから大人まで楽しめるホラー映画になっていますので、ぜひ映画館でご覧ください。

■ストーリー
大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松祐里)は、卒業論文で十数年来、ネットで現代版”神隠し”と話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を題材に取り上げることにした。リサーチの結果、「きさらぎ駅」の原点となった書き込みの投稿者『はすみ』ではないかとされる葉山純子(佐藤江梨子)という女性の存在を知る。ようやく純子への連絡先を知り、数ヵ月にわたりメールでやり取りした結果、春奈は遂に純子と会う約束を取り付ける。指定された場所は「きさらぎ駅」の舞台となった路線にある一軒家。春奈を出迎えた純子はどこか影のある雰囲気を持つ女性。部屋へ案内され、早速、ネットで噂される『はすみ』本人との真偽を確かめる春奈に対して、純子はどこか謎めいた笑いを浮かべながらも春奈からの問いかけに静かに頷く。続けて、純子から「きさらぎ駅」へたどり着いた経緯、その後の出来事などを聞いた。その内容は春奈には到底信じられるものではなかったが、純子の話の中で春奈はなぜ純子だけが「きさらぎ駅」へたどり着くことができたヒントに気づく。純子の別れた春奈は自然に「きさらぎ駅」の舞台となった遠州鉄道の駅へ向かう。この選択が春奈の運命を大きく狂わせることになってゆく。

スタッフクレジット:
スタイリング/武久真理江
ヘアメイク/安海督曜
衣装協力/lilith art duct chabi jewelry

全国公開中

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo