この季節になるといつも思い出す。
学生の頃,郵便局で年賀状の仕分けをするアルバイトをしたことがあった。
山のように届けられる年賀状のはがき。それらを手作業で郵便番号ごとに仕分けるのだ。
自動で仕分ける機械もあるのだがとてもそれだけでは追いつけない量である。だから機械を補うためにバイト達が一枚一枚小箱に仕分けていく。
ある日,そんな中で見つけた可愛らしい年賀状。子供からの年賀状。干支の絵が描かれてあって,それはいいんだけど,宛名が「おじいちゃんのいえ」。
思わず作業の手を止めてしまった。これじゃ届くはずがない。おそらく家族が書いてるのを見て「ぼくもおじいちゃんにねんがじょうかく」って言ったんだろう。で出来上がったのが件の年賀状。次から次へと年賀はがきが届けられる。たった一枚のはがきに時間を取られるわけにいかない。迷わず「宛先不明」の小箱に放り込んだ。
思えば可哀そうなことをしたのかもしれない。正月になっても,いや,いつまでたっても届くはずのない年賀状。あの子の思いはおじいちゃんに届かなかった。その事実を知った時,あの子はどう思うだろう。まぁ泣くだろう。「せっかくおじいちゃんにかいたのに」って。そう言われたおじいちゃんも困ったことだろう。
今年も年賀状の季節がきた。宛名は正確に書きましょう。大人は子供が書いた年賀状に責任持ちましょう。あの子の悲劇が繰り返されないためにも。