映画『SING/シング:ネクストステージ』ガース・ジェニングス監督インタビュー「キャラクターたちが経験する旅、喜びを分かち合ってほしい」

  by ときたたかし  Tags :  

興収51億円超の大ヒットを記録した『SING/シング』待望の最新作、『SING/シング:ネクストステージ』が現在大ヒット上映中です。

最新作『SING/シング:ネクストステージ』では、バスター率いるロジータやグンターたちは地元で人気者となり、ニュー・ムーン・シアターは連日満席状態に!しかしバスターはエンターテイメントの聖地、レッド・ショア・シティにあるクリスタル・タワー・シアターで新しいショーを披露するという大きな夢を抱いていました。

人生最大の夢の舞台に向けてバスターたちの新たな挑戦が始まる本作には、お馴染みのニュー・ムーン・シアターの面々に加え、本作で声優デビューを果たしたU2ボノが伝説のロックスター・ライオンのクレイ役を演じるほか、魅力的な新キャラクターが数多く登場しています。はたしてバスターたちはショーを成功させることができるのか!?

新たな仲間も加わり、彼らが新たなステージへと踏み出す本作は、本年度の第49回アニー賞で長編アニメ映画賞にノミネートもされました。前作同様、監督・脚本を務めたガース・ジェニングス監督にオンラインでお話をうかがいました。

●まずは続編の完成を受け、手応えなどはいかがでしょうか?

監督以下、すべてのスタッフの愛情とエネルギーが注ぎ込まれている作品なので、「ここだけを観て!」とは言えません(笑)。とても感動する瞬間も、ちょっとしたジョークも僕にとっては同じくらい重要ですからね。観客にはこの世界に誘われる、この世界に踏み込むような感じで体験してほしいですし、何か現実に引き戻される瞬間は一度もないと思います。最初から没入して観ていただけたらうれしいです!

この4年間、本当に素晴らしいアーティストたちとこの作品を作り上げましたが、映画を観ていただければ、彼らの素晴らしい仕事を観ていただけると思います。

●続編の構想はいつくらいにスタートしたのでしょうか?

1作目を完パケする、ちょうど1年前くらいに取り掛かっていた、という感じです。100パーセント続編を制作すると決まっていたわけではなかったのですが、少し考えてみようという感じでした。1本目の作品のことを思い起こせば、キャラクターたちは自分たちのゴールを達成したばかりでしたよね。しかも初めてみんなが歌った、自分たちのやりたいことを始めたところで終わっているんです。でもだからこそ、そういう彼らが次にどうなるかを考えることは楽しい作業でした。

そして1作目が公開された頃には、ある程度のストーリーのガイドラインはできていました。ただ、この映画の制作過程はかなり流動的で、たとえば物語のアウトラインを書いてそれを元に脚本化して制作を始めるという、普通の段取りではないんです。なんとなく脚本開発をしつつ、キャラクターをデザインしつつ、音楽は何を使うか考えつつというように、一度にいろいろなことが起きていると考えていい。なので、いつから?とはっきりとした期間は言えないのですが、1本目の作品が公開された時に、すべてが一気に始まった感じは覚えています。

●新旧キャラクターのバランスについては、どのように考えましたか?

まさにその作業は難しいものでした。思っていた以上に大変でした。新しいキャラクターにはしっかりと尺を当てて描きたい、でも同時に前から登場しているキャラクターもきちんと描きたいんです。不当には扱いたくないんですよね。でも、時間の問題があり、新しいキャラクターのスペースを作るために旧キャラクターをそこまで描けないことはありました。今回登場が少なかったキャラクターは次に帰って来るかも知れないけれど、そのバランスは本当に難しかったですね。やりながら答えを見つけていかなければいけませんでした。というのも、配分は最初からわからないです。なので、やりながらバランスを見つけていかなければならなかったのです。

●ちなみに個人的に思い入れがあるキャラクターは???

やはり自分が声を当てているミス・クローリーが本当に好きですね。自分が演じているということもありますが、このキャラクターをストーリーで動かすことが本当に楽しいんです。それから何かストーリー的に何か課題みたいなものがあった時に、それを解決するために彼女が活躍しますから。後は感情面で言うと、バスター・ムーンですかね。彼のナイーブなところ、頑張りすぎてしまうところ、自分の手に余る状況にすぐ陥ってしまうところは、すごくすごく共感します(笑)。自分の人生を振り返ってみても、始めてはしまったものの、よく考えてみたら、どうしていいかよくわからないことが多かったです。まさしくアニメーションもそうで、やるとなってから始めたけれどそもそも作ったことがないから、最初に何をしていいかわからないんです。なので、とにかくバスターですかね。でも、ミス・クローリーもとても好きなキャラです。

●『SING』と言うと歌ですが、今回の楽曲面も素晴らしかったです。

音楽のレコーディングなどで達成感を感じる瞬間はたくさんあり、レコーディングなどは本当にエモーショナルで美しい瞬間でしたが、ほかのどの瞬間もどのパーツも、本当にすごく楽しみました。初めて観客に向けて試写をした時に、観客の反応から、これが作品として成立していることが初めてわかったんです。なので、その瞬間は奇跡のような感動がありました。パンデミックもありましたしね。これは今回だけでなく、僕のキャリアにおいても素晴らしい瞬間でもありました。

●ちなみに邦題にはネクストステージと付いているのですが、監督のそれはいかがでしょうか?

僕のですか(笑)。今ちょうど次の作品の脚本を書いているところで、スケッチブックを使いながら物語を組み立てているんです。今は次回作、実写映画の脚本を書いています。かなり初期の段階なのでこれから膨大な作業があるけれど、ちょうどその作品の夢を見ているところです。次の実写映画が撮れればと、それがネクストステージです。

●今日はありがとうございました。日本のファンには何を感じとってほしいですか?

感じとってほしいという質問のされ方がとてもうれしいですね。それは、この映画の中心にあるもっとも重要なものは、フィーリングだからです。音楽からそれは来ていますし、キャラクターからもそれはきていますが、やっぱり作り手としても、それはすごく大事なことです。僕はこの作品は映画館だけで終わるのではなく、映画館を出た後も持って帰れる作品になればいいと思っています。外へ出て通りまで、家まで、一緒に持ち帰ることができる作品になっていてほしいのです。

このキャラクターたちは、ある旅、道のりを経験します。それはとても大変であり、楽しかったり、奇妙であったりもしますが、観客には彼らが経験する喜びなどを分かち合ってほしいと思います。彼らは動物たちでクレイジーな生活をしているけれども、観ている方たちが共感できるとうれしいです!

■監督・脚本:ガース・ジェニングス
■製作:クリス・メレダンドリ、ジャネット・ヒーリー
■日本語吹替版キャスト:内村光良、MISIA、長澤まさみ、大橋卓弥(スキマスイッチ)、斎藤司(トレンディエンジェル)、坂本真綾、田中真弓、大地真央ほか
■日本語吹替版新キャスト: ジェシー (SixTONES)、アイナ・ジ・エンド、akane
■キャスト:マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン、スカーレット・ヨハンソン、タロン・エガートン、トリー・ケリー、ニック・クロールほか
■新キャスト:ボビー・カナヴェイル、ホールジー、ファレル・ウィリアムス、ニック・オファーマン、レティーシャ・ライト、エリック・アンドレ、チェルシー・ペレッティ、ボノ (U2)、ほか
■配給:東宝東和
■コピーライト:
(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
(C)ABImages
■公式HP:http://sing-movie.jp [リンク]

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo