カタカナ好きの“意識高い”新社会人が狙われる? 現在の「マルチ商法」の手口とは

  by 丸野裕行  Tags :  

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

詐欺は時代を巡り巡って、またブームというものがやってきます。それは「犯罪まがいの商売」についてもしかり。最近被害者が多いのが「マルチ商法」「マルチまがい商法」

マルチやマルチまがいという組織は、新興宗教にも似たカルト的な団体との共通点というものがあります。標的になった人間をメンバー全員で囲い込み、取り扱っている商材を「他にはないいい商品」であると信じ込ませます。一度足を踏み入れ、いったん洗脳されると簡単には離脱できなくなるものです

「マルチ商法」は、そのサービスを契約した人間が、次は勧誘者となって自身の家族や知人に契約を進めていくというもの。英語では《マルチレベルマーケティング》などといいます。これは「連鎖販売取引」とも呼ばれる業態ですが、以前からトラブルが多く、中には多重債務を抱え込み、人生が破滅する人もいるほどです。

このような販売方法は、決められた商法ルールさえ守ってしまえば「合法」扱い
。ツリー状の組織でお金だけが連鎖的に動く《ねずみ講》は現行法では禁じられていますが、物品が流通しているマルチ商法は違法にはならないのです。中には、巧妙に法の抜け穴を突く「マルチまがい」的な手口や仮想通貨を用いたイマドキの形態も非常に増えはじめました。
インターネットの普及により、「パソコンひとつで簡単にできる」という触れ込みでも、結局は「人集め」に直結してくるわけです。

今回はマルチ商法(マルチレベルマーケティング)が現在どのような動きを見せているのかということを、元マルチ商法経験者の筆者が、今のマルチ商法に詳しい知人の烏丸勇樹さん(仮名、44歳)と共に解説していきたいと思います。

昔の商材主流は「日常生活の消耗品」だった

丸野(以下、丸)「昔、僕が『N』というマルチ商法をやっていたときには、洗剤や化粧品、口にする健康食品など、日用品なんかを扱っていましたよね。消耗品だから、毎月のリピーターがいるっていうね。現在は、どんなものが主流の商品になっているんですか?」

烏丸さん「今でも、水や健康食品、サプリ、化粧品なんかは扱われていますが、現代らしく《投資学習教材》や《英会話教材》、《FX自動売買ソフト》、《仮想通貨情報ソフト》、《オンラインゲームアカウント取得》などいろいろとありますね。昔ながらの寝具販売や矯正下着販売なんかも根強く生き残っています

丸「一度、広告代理店に勤めているときに『K』という寝具メーカーの社長がマルチ商法のパンフレットを作ってくれと依頼してきたときがありました。僕はまがりなりにも少しはネットワークビジネスの知識があるのでノリノリで作ろうと思っていたんですが、ウチの会社の制作基準に引っかかって、結局は着手できませんでしたよ」

烏丸さん「そうでしょうね。寝具などわかりやすいものであれば気をつけられますが、新手のマルチに関しては非常に巧妙です。しかし、いずれにしても共通しているのは、“他者を勧誘することで稼いでいく”という点です」

今のターゲットは世間の厳しさに直面した高学歴新卒社会人

丸「昔は老若男女、誰でもターゲットになりましたが、とある年代でマルチにハマる人が急増しているそうですね?

烏丸さん「今、ターゲットになっているのは意識の高いインテリジェンスな高学歴・新卒社会人です

丸「ほほう」

烏丸さん「新社会人は、上京したりして親元を離れたことの不安や寂しさ、経済的な問題などから、少し誘いを受けただけでセミナーなどに参加してしまいます。知らず知らずのうちに口車に乗せられ、マルチ商法の世界に取り込まれてしまうんですね。初めは“簡単に儲かる”、“自分自身を高められる”、“人生の成功者になれる”などという甘い言葉で誘われます。これがね、本当に怪しくないんです。その巧妙さは堂に入ったものですよ」

丸「社会人になって、現実を突きつけられて、不安な心理につけ込まれるわけですね。理想と現実のギャップに打ちのめされているときにつけ込まれるということですね」

烏丸さん「マルチ商法の成功者というのは、芸能人のような派手な生活をわざと見せつけます。高級車に乗ったり、高級時計を見せびらかしたり、高層マンションを事務所代わりに持ったりと、“キラキラした生活”を演出します。新社会人は、自意識と功名心、自己顕示欲が強いので、“自分は社会で成功者になれるはずだ”と考えているわけですね」

丸「都会でのひとり暮らしで初任給を見たときに愕然とするわけですもんね。一攫千金を狙わないといけないという焦りがあるわけなんですね」

烏丸さん「大学生のときとは違い、給料はもらえるし、下手をするとボーナスも出る。マルチの格好の標的になるわけですね。会社の先輩や同僚が“副業”を勧めてきたり、“同じ業種の会社に勤めていてこれで大儲けした人がいる”と誘ってきたら、マルチの可能性が高いでしょう

横文字ばかり使う意識の高い新社会人は意味が分からないまま契約しやすい

丸「新社会人でも一番引っかかりやすいのは?」

烏丸さん「高学歴でプライドが高い新社会人ですね。彼らは自分の頭がいいと考えているので、高みを目指します。勧誘者が自尊心をくすぐったりすれば、いまいち意味が分からなくても契約してしてしまいやすいわけです。“〇〇さん、は〇〇大学出身だから意味が分かりますよね?”なんて言われたら、首を縦に振るしかしかありません。逆にバカですよね」

丸「キラーワードのような勧誘テクニックなんてあるんですか?

烏丸さん「自分のことは頭がいいと思っている、インテリぶっている若者に市販されているメーカーの商品は危険、悪いものばかり入っているなどと陰謀的な話をすると、信じやすいですね。自分は一般人が買うことができない非常にいい商品を使っている、という自負から優越感を持ってしまうのも高学歴者の典型です。しかし、マルチで扱う商品がいずれも本当にいい商品なのかどうかといえば、それには根拠がありません。いわば勧誘者から言われた言葉の思い込み。マインドコントロールされた状態なんですね

丸「ほほう」

烏丸さん「自分を成功者と重ねてみるように仕向けて、自分でもああなれるという思い込みをさせて、さらに煽り立てます。勧誘する彼らの多くはなんの罪悪感もなく、正しいことをしていると幻想を抱き、もっともっと傾倒して、被害を広げていきます」

危険なのは20代前半、30代、人生に疲れた40代、はたまた女性

丸「年代的に言うと現実を突きつけられた20代前半、他には?」

烏丸さん「そうですね。負け越した人生を見つめ直す人生の曲がり角である30代、一発逆転を夢見る40代初め、神様にすがるようにスピリチュアル系の自己啓発にハマる女性などもこれに当たります。いずれにせよ、カルトは精神的に弱い人々の心の隙間につけ込むわけですね」

丸「しかし、浮足立って夢見がちになった人間の話を普通の人は取り合わないと思うのですが……」

烏丸さん「ええ。今まで築き上げた人間関係は一瞬にして崩壊。彼らが気づくのは、多額の借金を拵えてしまったあとで、その頃には商業カルトに尻の毛までむしられています」

法律を巧みにかわし、犠牲者を増やし続ける「マルチ商法」、「マルチまがい商法」。カルト、ねずみ講の一種にかかわってしまっていると気付いた場合には、ぜひ消費者センターや弁護士へ相談するべきです。

ターゲットにされやすい新社会人は、不安な一人暮らしの中でもくれぐれも気をつけていただきたいと思います。

(C)写真AC
※写真はイメージです

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』やその他有名週刊誌で執筆、『プレジデントオンライン』の待機中。 『丸野裕行の裏ネタJournal』や『初めての不動産投資マガジン』のポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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