反社と組んで特殊詐欺用電話回線を提供する「数億円超の被害」を叩き出す業者にインタビューした

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

今月3月3日、特殊詐欺用の電話回線を提供して、電話回線販売会社『ボイスオーバー』の元取締役ら3人が、福岡、秋田、岡山、青森の4県警の合同捜査本部によって逮捕されました。その被害総額はなんと驚愕の“約15億円”。容疑者らは、暴力団や半グレなど反社会勢力と組んで、特殊詐欺に利用されると知りながら、電話回線を販売。

逮捕された3人は、別の4人と共謀して昨年4月に徳島県在住の女性が200万円を騙し取られたなりすまし詐欺事件に協力。特殊詐欺に使用されることを知りながら、犯行を実行したグループに電話回線を販売したという疑いが持たれているというのです。警察の調べに対して、3人は容疑を否認。

今回は、急増する特殊犯罪への電話回線提供業者であるX氏(51歳)に、その手口についてインタビューしてみました。

電話回線は余りに余っている

丸野(以下、丸)「特殊詐欺の電話というのは全国でも相次いでいるのですが、それを販売する業者が増えているんですか?」

X氏「特殊詐欺に使われている電話のほとんどが、ネット回線を利用する《IP電話》。これを悪用して実行に移すケースが多い。なんでも新しいものを使った犯罪は、まだまだ対策が進んでいないわけだよね。携帯電話なんかは対策を講じてはいても、IP電話は除外。IP電話のいいところは、特別な接続機器や回線を引く工事もない。簡単に導入できて、転売することもいとも簡単。対策や規制がまったく追いついていないわけ」

丸「IP電話といえば、ネットのデータ通信を利用した電話サービスですよね」

X氏「IP電話は2種類あって、総務省から番号をもらった大手の通信会社などが販売する《03》《06》などの市外局番ではじまる《0ABJ型》と、電話番号が《050》ではじまる《050型》がある。電話線なんかを引くことなく、スマホなどがあれば安く導入できるもので、ご存知のように今利用者が急増しているよね」

丸「私も使っていますが、そんなにIP電話回線転売業者は増えているのですか?」

X氏「俺たち、IP電話回線を売る業者のことを反社会勢力の連中は、《道具屋》と呼んでる。この間摘発された『ボイスオーバー』は、国内でも有数の《道具屋》として有名だった。それだけ、IP電話回線は余りに余っているわけ」

法整備が進んだかに見られたが……

丸「詐欺グループは、再販業者から購入した電話番号を悪用。それでも、警察は手をこまねいて見ているわけではないでしょう」

X氏「これまでに、詐欺で使われた番号を再販していた業者11社が、新しい番号を一定の期間、購入することができないようにするというペナルティーを受けたけど、再販する《道具屋》は国内にごまんとある。そりゃ、一時期は大変だった時期もあったよ。携帯電話不正利用防止法や犯罪収益移転防止なんかの法整備で本人確認義務化の徹底なんかがあって、昔、固定電話が使えなくなった時期があった。俺はそのとき、インチキ通販会社を一手に引き受ける秘書代行の会社をやっていてね。これがほとんど詐欺だった。そのときは番号が一時停止になって、俺たちに新しい番号を売らないように、警察が大手電話会社に要請して、まったく購入できなくなったんだ」

丸「なるほど」

X氏「でも、そこに彗星のごとく現れたのが050のIP電話だったわけ。それを転売して生業にした。IP電話なら、詐欺に使われても法律の対象外なので、大手電話会社が番号停止なんかをできないから。詐欺グループが050番号の悪用することを防ぐ法整備が進んでいなわけよね」

丸「そんなに簡単に契約できるものなんですか?

X氏「クレジットカードの情報さえあれば、Web上で契約ができる通信会社もあるし、偽造カードなんかでも契約はできてしまう。本当にいたちごっこだよ。下手な固定電話回線よりも安いし、使用端末に制限がない。安価な基本料金と通話料で、PCやスマホにアプリをインストールするだけで使える。SIMカードも不要。今じゃ、900万回線以上の電話番号が利用されている。歯止めが利かないよ、そりゃ」

会食、誕生パーティーなど詐欺グループと蜜月関係

丸「詐欺グループとの面識なんかはあったりするんですか?

X氏「あ? まぁね。連中は俺たち《道具屋》がいないと商売あがったりなわけ。スムーズなIP電話回線の供給を求めているわけだよね。だから、連中とつるむこともある。食事をごちそうになって、新しい大規模な特殊詐欺なんかの打ち合わせをしたり、誕生パーティーなんかもやってくれるよ。半グレはパーティー好きだから(笑)。それに出会い系サイトの運営なんかも昔からやっているから、会社ぐるみでの慰安旅行に連れて行ってもらったっこともあったな」

丸「慰安旅行にまでですか?」

X氏「どうせなら来ませんか、って言われたらそりゃ行くでしょ。それから、そろそろ警察の手が回ってきたと思ったときには、トカゲの尻尾切りみたいに《かけ子》や《出し子》を警察へのいけにえに出す。それが、詐欺グループの背後にいる暴力団のやり方だから……。闇バイトに応募する若者の寿命は実に短いよ。まだ、出し子なら自由に街を歩けるけど、かけ子だと長期間監禁される。そう、外出禁止。2019年6月にタイで起こった海外の電話回線を使った特殊詐欺でアジト摘発と逮捕、強制送還劇があったことが記憶に新しいけど、外出が許されなくてほとんどタコ部屋だよね。朝から夕方までずっと仕事。飯、運ばれた名簿を見ながらひたすら電話」

丸「そんな状態で、精神状態が正常なわけがないですよね」

X氏「使い物にならなくなった闇バイトくんは警察に突き出されるわけ、親玉としてね。クレジットカードをそいつから借りて、そいつの名義で回線を借りれば、親玉のいっちょ上がり。そのあとの事務所はもぬけの殻さ」

丸「でも、仲間の本名とかバレているんじゃ?」

X氏「闇バイトで人を集めた時点で、全員が偽名。集めた連中も、集まった連中も、全員ね。それじゃ、警察にうたいようがない」

何か防ぐ手立ては?」という筆者の言葉に、X氏は「自動録音できる防犯機能付き電話機やナンバー表示サービスを利用して、050番号には気をつけるしかない」と答えました。

一時は減少傾向になった特殊詐欺件数、彼らのような裏稼業の人間たちが暗躍している現状をみれば、まだまだ被害は止まることを知らないのかもしれません。

(C)写真AC
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丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』やその他有名週刊誌で執筆、『プレジデントオンライン』の待機中。 『丸野裕行の裏ネタJournal』や『初めての不動産投資マガジン』のポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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