映画『フタリノセカイ』片山友希&坂東龍汰インタビュー「ありのままで生きていい」「伝えたい言葉がある」 形に囚われない愛の物語へ込めた想い

  by ときたたかし  Tags :  

出会った時から互いに惹かれあったユイ(片山)とトランスジェンダーの真也(坂東)が数々の現実を乗り越え、ある決断をするまでを描く愛の物語、映画『フタリノセカイ』が公開中です。

自身もトランスジェンダーである飯塚花笑さんが監督・脚本を務め、「性別を超え、常識を越え、時を越えた、新しい映画を作ろう。そしてどんな形にも囚われることのない、“愛”を描き出そうと思う」と、恋愛や夫婦、家族のあり方で悩む「現在(いま)」と「未来への希望」を丁寧に描いています。

その公開を受け、トランスジェンダーの彼に対しさまざまな葛藤に揺れつつも一緒に生き、支えていくことを選択するユイ役の片山友希さん、子どもの頃から違和感を覚えていた自身の性に対し、向き合い、自分らしく生きていこうとする真也役の坂東龍汰さんにインタビュー。お話をうかがいました。

■公式サイト:https://futarinosekai.com/ [リンク]

●本作に出演するにあたって、俳優として楽しみに感じたところや、反対に不安に感じるところはありましたか?

坂東:個人的には、ここまでの大役を映画で演じたことがなかったので、決まった時は素直にうれしかったです。でも、内容やテーマを知れば知るほど自分には難しいなと思い、僕自身にとっても役作りを含め、挑戦的な題材だと思いました。この役をクリアにして現場に行くまで時間がかかりそうだったので、大変な作業だなと。センシティブな役柄を演じることの責任も感じたので、どうしようと不安になりました。

片山:セクシャルマイノリティがテーマの日本映画はあまりない印象があって、セクシャルマイノリティについて考えるきっかけを与えてくれた映画なのですが、それまではわたし自身認識が薄かったので、監督にお話を聞くなどして向き合おうと思いました。

●監督はどう説明を?

片山:セクシャルマイノリティについての雑誌や監督ご自身の学生の頃に受けた診断書など、映画に出てくるふたりのようなカップルは世界中にいるということも知り、撮影前に教えていただいたのは大きかったと思っています。

坂東:役柄の気持ちについてわからないではなく、理解をしてほしいと言われていました。どういうことを乗り越えながら生きていくのか、ということを学びましょうと。その一環でトランスジェンダーの方々が集うバーに監督と取材に行ったり、映画の真也とユイと同じシチュエーションの、実際のカップルの方たちに取材をしたりしました。

片山:それはわたしが彼女(ユイ)の気持ちを勝手に暗く考えてしまって分からなくなったところがあったんです。真也は監督と同じ立場なので真也の悩みや葛藤に対して共感する部分はあったと思うけどユイの気持ちはユイ側の立場の人にしか分からないんじゃないかと思ったので、ユイの立場の方とお話をしてみたいとわたしからお願いしました。

●この映画が今の時代に世に出ていくことや、撮影に参加してみてよかったと感じることなど、これから映画を観る方々に向けて一言いただけますか?

片山:「女っぽい」とか「ゲイっぽいよな」とか、そういう言葉を耳にした時、わたしは当事者ではないのでその言葉が無意識だったり、差別発言のつもりで言ったわけではないというのも分かるけど、この作品と出会ってからあまり笑えないなぁ思うようになりました。その言葉で傷つく人がいるかもしれないよと、当事者ではないからこそ、伝える言葉があるんじゃないのかなと思います。

坂東:僕も勉強になりました。真也はトランスジェンダーのFTM(Female to Male)なのですが、そういう言葉を僕も知らなかったんです。ただ、ゲイの友だちがいて僕の中では当たり前のことだから偏見も何もなかったので、好きになった人を好きになればいいし、自分の好きなように生きればいいとは思っていたのですが、より理解は深まりましたよね。なので作品をとおして伝えたいことは、ありのままで生きていいということ。大変なことがあるかも知れないけれど、背中を押される映画だなと思うんです。

片山:撮影は2年半くらい前だったのですが、この1年の間に選択的夫婦別姓や同性婚を認めるかどうかなど、そういうニュースをよく目にするようになりました。いまみんなで関心を深めようとしている時期だと思うので、公開が1年前では早く、1年後では遅かったんじゃないかなと思います。いま公開されるということに関してこの映画は本当にいいタイミングを持っている映画だと思いました。たくさんの人が自分の意見を持って伝え合え、分かり合えたらいいなと思います。

坂東:今の時代の流れにリンクしていると思いますし、今だからこそ伝えたい内容になっていると僕自身も思います。ぜひ劇場で観てください。

■ストーリー

保育園に勤める今野ユイ(片山友希)と実家の弁当屋を手伝っている小堀真也(坂東龍汰)は、出会ってすぐに恋に落ちる。付き合い始めた2人は、将来結婚する約束を交わし、幸せな日々を過ごしていた。

真也には、ユイに伝えていないことがあった。それは、体は女性、心は男性のトランスジェンダーだということ。

真也が時折見せる思い詰めた顔に不安を感じていたユイは、ある時、その理由を知る。結婚もできない、子どももできない・・・。
子どもが大好きで家庭を持つことが夢だったユイは、真也と一緒にいるべきか否かを悩む。

だが2人は、事実上の結婚をし、同棲生活をスタートさせた。

数年後。確かな愛を感じながらも、ユイは子どもや家庭を持つ夢を捨てきれずにいた。このまま真也と一緒にいていいのだろうか。

そう思い悩むユイの気持ちに真也もまた気づいていた。真也はユイに別れを切り出し、2人は別々の道を歩むことになった。

ユイは、新しいパートナー・内田勇人(関幸治)と出会い、結婚する。一方、真也は友人・添田俊平(松永拓野)と静かに暮らしていた。子どもを持つことに憧れていたユイは、妊活に励む。だが夫との間に子どもは出来なかった。

夫と気持ちが徐々にすれ違う日々のなか、真也と再会したユイは胸が高まる。実は、真也もユイのことを忘れられずにいたのだ。
お互いの気持ちを確かめ合った2人は、再び一緒に生きることを選択する。

そうして歩み始めたユイと真也は、ある決断をするのだった・・・。

クレジット
ヘアメイク:浅井美智恵
スタイリスト:髙山エリ(片山友希さん)

衣装クレジット(片山友希さん):
オールインワン(セラー ドアー/アントリム)
ほかスタイリスト私物
問合せ先:アントリム 03−5466−1662

全国順次公開中
(C) 2021 フタリノセカイ製作委員会

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo