年末年始に急増した無銭飲食!彼らは「何を食べ」逮捕されたのか?

  by 丸野裕行  Tags :  

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

昨年末と年明けに急増した犯罪──それは、無銭飲食。
新型コロナウイルス感染症拡大で、営業時間短縮を迫られた飲食店は大打撃を受け、売り上げが激減。そんな中で無銭飲食が増え、憎き犯人が逮捕されたとて、飲食店は泣き寝入りするだけです。

では、なぜ彼らは年末年始に集中して無銭飲食をしたのか? 彼らへの刑罰の流れは? 最後に彼らが食べ、飲んだ食事の内容とは? 今回は実際に無銭飲食で逮捕された長谷川良平さん(仮名、41歳)にインタビューを敢行し、無銭飲食という罪を深掘りしていきたいと思います。

※画像はすべてイメージです

その事件は年始間もないころに起こった

2022年も年始を迎え、仕事始めも終わり、世間も通常運転をはじめたころの1月9日、東京都渋谷区代々木の焼肉店で8日夜からはじまった立てこもり事件で、住所・職業不詳の28歳の男が逮捕監禁容疑で現行犯逮捕されました。

逮捕され、取り調べがはじまった当初この男は「警察に捕まって人生を終わりにしたかった」「偽物の爆弾を作って立て籠もった」「場所は考えていなかったが、最後に《焼肉》が食べたかった」などと供述していました。店長や従業員、客にけが人はなかったものの人騒がせなこの事件。

しかし捜査が進むと、知り合いのホームレスに対してよく「悪いことをして刑務所に行けば、食事もタダ、寝ると場所もタダだ」と話していたことが判明。人生に活路を見いだせなかったことで、生きるために刑務所に収監されることを狙っての犯行だったのではないかと取り調べは続いています。

この男は、店の中の従業員を牛刀で脅して出させた《焼肉》と《酒》を飲んでいたといいます。

無銭飲食の罪とは?

無銭飲食というのは、犯罪としては《詐欺罪≫にあたります。そう、無銭飲食は窃盗罪などではなく、詐欺罪になるのです。詐欺罪や詐欺未遂罪が適用されるのは、「相手をだます目的があった事実」が必要で、2通りのパターンがあります。

はじめから代金を支払わないつもりで飲食するパターンや、飲食後逃げるときに「財布を忘れてしまったから家から取ってくる」と言って従業員をだます、これらどちらかに当てはまる場合は詐欺罪に問われる可能性が高いです。

もう1パターンは、飲食中に財布がないに気がつき、従業員の目を盗み、逃走した場合は詐欺罪は成立しません。しかし、飲食中に財布がないと気がついたことを証明するのは容易ではありません。駆けつけた警察や被害を受けた飲食店を納得させる至難の業です。

刑法第246条にある詐欺罪が成立すれば、10年以下の懲役になるとのこと。また未遂の場合は、5年以下程度の懲役に減刑されるといいます。

初犯者には執行猶予が付くこともあるようですが、再犯者は実刑判決になる可能性が高いといいます。

実際の無銭飲食とは?

丸野(以下、丸)「どういった経緯で無銭飲食にいたったわけですか?

長谷川さん「5年前に親会社が倒産して、私が勤めていた部品加工の会社も連鎖倒産してしまいました。アパートを引き払い、貯金を切り崩して、ネットカフェなどで職探しをしていたのですが、なかなか見つからずに目減りしていく貯蓄額。田舎に帰って年老いた両親に心配をかけるわけはいかないので、なんとか踏ん張っていたのですが、2、3日食べない日が続きました。そのとき、空腹と出来心で無銭飲食をしてしまったという流れです」

丸「それは、大変でしたね。どんなお店に?

長谷川さん「中華料理店です。街中華のようなお店だと小さいから迷惑がかかる。チェーン展開しているようなお店なら、まだマシかなと思いまして」

丸「どちらにしても迷惑はかかりますけどね

止まらない食欲と実刑判決

長谷川さん「数日分の空腹を埋めるようにとにかく食べました。目の前に《ギョーザ》や《チャーハン》、《酢豚》などの料理が並ぶと理性が吹き飛んでしまって、口に押し込む感じで食べていました。その後、お店の方に料金が支払えないことを告げ、警察に連行。そのあとは、23日間留置場に入って、その後は判決が下るまで拘置所へ。中には、無銭飲食で捕まった方が大勢いましたよ。常習犯の人も。

丸「そうなんですか」

長谷川さん「今回の焼肉店立て籠もり犯のように、“ムショに入れば、食事も布団もタダで用意してもらえる”と好き好んで塀の中へ落ちる人が多かったですね

丸「はぁ~……長谷川さんの判決はどうなりました?

長谷川さん「私は初犯だったので情状酌量が入り、判決は懲役1年8ヵ月執行猶予3年付きの有罪判決です。その後は、就職先を決めて初任給で、ご迷惑をかけた中華料理店に飲食代金を払いにいきました

丸「ちゃんと償ったことになるんじゃないですか、それで

年末年始の主な無銭飲食事件

ここで、報道された年末年始に起こった主な無銭飲食の事件をまとめてみました。

2021年
12月1日 京都市・城陽市:「クレジットカードみせかけ無銭飲食繰り返す」38歳とび職詐欺男を再逮捕[居酒屋メニュー]
12月1日 北海道札幌市:「ガールズバーで6万円超遊ぶ」61歳男逮捕[ビールやカクテルなど] 
12月5日 青森県八戸市:「ラウンジで酒盛り」59歳無職男逮捕[ウーロンハイなど]
12月8日 奈良県奈良市:「所持金1,000円で5時間酒を飲み続け」28歳無職男逮捕。11月にも同市内のバーで計14万円弱の酒を飲み無銭飲食の余罪あり[シャンパン4本、テキーラ46杯など]
12月19日 横浜市中区:「代金を払う意思と能力があるように装い」50歳男逮捕。[瓶ビールなど]
12月21日 鳥取県鳥取市:「所持金20円で飲めや食えやの酒盛り」53歳男無銭飲食で逮捕[焼酎、居酒屋メニューなど]

2022年
1月3日 北海道森町:「無銭飲食しようと思っていたのに邪魔されたので殴った」居合わせた男性客の頭を石で殴った34歳男を逮捕[不明]
1月6日 北海道苫小牧市:「無銭飲食しようと思って店に入った」所持金数百円の49歳無職男逮捕、10,000円以上の酒盛り[ビール、ジンのボトル、ハイボール、カラオケなど]
1月9日 神戸市須磨区:「ネットカフェで宿泊飲食」34歳無職男逮捕[宿泊費用、カレーなど]
1月11日 静岡県富士宮市:「焼肉店で牛肉希少部位とワインなど無銭飲食」54歳男を逮捕[シャトーブリアン、高級ワインなど]
1月11日 新潟市西区:「スナックで無銭飲食した」26歳住居不定無職男を詐欺容疑で逮捕[焼酎、ウーロン茶、カラオケなど]

これらの事件は、あくまでも氷山の一角。オミクロン株などが再び猛威をふるうコロナ禍の中、一部の報道では《57年ぶりの低水準、倒産“予備軍”12万社!コロナ対策融資終了後の反動で倒産ラッシュが本格化》などと報じられています。

リーマンショック以上の失業者を生むと言われているコロナ不況。後先考えず、安易に飲食欲という本能のまま、無銭飲食という罪を犯してしまう人が増えないことを願うばかりです。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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