受刑者が刑務官に暴力をふるう事件続発!その“ストレスが溜まる原因”とは?

  by 丸野裕行  Tags :  

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

新型コロナウイルス感染症が猛威をふるってから、街には混乱が生じ、いつも喧騒に包まれている繁華街などもひとっ子一人歩いていない状態になっていたことを皆さんは憶えているでしょうか?

今回のオミクロン株の蔓延で再び緊急事態宣言を発令する自治体も出てくる状態ですが、休業要請に従えない常に営業し続けていなければならない施設というのがあります。それは《刑務所》。

【実録! 刑務所シリーズ】
https://getnews.jp/search/%E4%B8%B8%E9%87%8E%E3%80%80%E5%88%91%E5%8B%99%E6%89%80

この混沌とした時代、刑務所内では様々な変化が起こっています。増加している刑務所内での事件というのが、公務執行妨害と傷害事件です。

暴行事件が非常に増えている

数えただけでもこれだけの事件が起こっています。

・2020年5月 受刑者が刑務官をペンで刺す(千葉刑務所)
・2020年9月 反則行為をして懲罰房に入っていた受刑者が突然刑務官に殴りかかる(名古屋刑務所)
・2021年3月 受刑者が刑務官を殴る(秋田刑務所)
・2021年6月 受刑者が刑務官に暴行する(千葉刑務所)
・2021年6月 60代の受刑者が親族から届いた手紙にイライラし、刑務官の顔面を殴る(岐阜刑務所)
・2021年12月 男性受刑者が刑務官を殴り書類送検(福島刑務所)
・2021年12月 精神鑑定中の被告が医師を殴って書類送検される(千葉刑務所)
・2021年12月 受刑者が「指導に頭がくる」という理由で刑務官を殴る(長野刑務所)

続発する受刑者が刑務官に暴行する事件、ちょっとおかしくないですか? 一体刑務所の中でなにが起こっているんでしょうか?
今回、刑務所内の事情に詳しい元受刑者支援をしているTさんに《なぜ、今受刑者の刑務官に対する暴行傷害事件が頻発しているのか?》のお話を伺いました。

受刑者の恨みは日に日に増す

――前回のインタビューありがとうございました。今回続発している刑務所内での暴力事件、Tさんはどのように思いますか?

Tさん「受刑者は日頃から刑務官に恨みを持っている。そういうことですね。昔は、官舎は通勤に便利な近隣にあって、自分たちの情報網があれば、すぐにその部屋かがわかるので“コノヤロウ、外に出たら殺してやる”と日々考えているわけです」

――なるほど、日頃の鬱憤ですか……

Tさん「受刑者とのコミュニケーションが取れていて、ときに優しく、ときに厳しい慕われている刑務官というのが最近は減ってきましたね。というよりも、あまりにも早く代替わりが繰り返されるのが、刑務官なんです」

――どのくらいのスピードで異動になるんですか?

Tさん「同じ管区内での異動がある、都市や地方から自分が育った地元に帰りたいと転勤願いの申請をする、キャリア組は矯正管区内で栄転して全国どこの刑務所にも飛ばなければいけないということがあってね。年2回、4月と10月に移動があるわけです。所内でポカをやった刑務官は早いときには半年、2~3年ごとに刑務官がどんどん入れ替わっていくんですよね。そうなると、新任の刑務官の注意が敏感になる」

――なるほど、それは受刑者にとっても悪循環ですね

Tさん「それもこれも、刑務官と受刑者のなれ合いを防ぐためです。新任は現担当者(オヤジ)と行動を共にします。受刑者は、新しい担当の様子を窺っているそうです。自分に都合がいいかどうかを……。もちろん、誰が問題受刑者なのかは前の担当者から聞いていますから、できるだけ刑務官としての威厳を保ち、都合がよくないという部分を見せるようです」

――やはり、こっちとあっちの違いを見せつけるのは大事と……。新人さんの教育は大変そうですね

Tさん「そうですね。若手の刑務官が増えてきたので、年嵩の受刑者やLB刑務所(ロング=長い、B=犯罪傾向の進んでいる者)に入所してきている凶悪犯やヤクザなどは、なかなか言うことを聞くことはないでしょう。助勤という《副担当者》として入って、正担当者が休憩中に各工場を巡回。そのときの緊張感はハンパないと思いますよ」

――若手の刑務官には厳しいでしょうね

Tさん「マニュアル世代ですから、四角四面過ぎてね。マニュアルとは違う、ひと昔前にいたベテラン刑務官のちょっとした労いの一声っていうのは、塀から出ることができない人間にはじんわりとくるものらしいです」

――今回のコロナウイルスとの関連というのはあるのでしょうか?

Tさん「被疑者・被告人など罪状の未確定者をいったん収容する警察署なんかでもコロナのクラスターが発生していますよね。以前であれば、刑務所内でもマスク使用は許可が必要だったのですが、今では所内の全員がマスク姿です

――マスクをつけるのに許可が必要だったんですね。コロナで息が詰まるほどさらに厳しくなったわけですか

Tさん「手を消毒したりしてお互いに気を遣ったりしたりするわけです。刑務作業のときもマスクで苦しい、刑務官も誰が誰だかわかりにくい。受刑者はたいして気にしていない人間もいるのに、規則でそう決まっているわけです。アウトローが細かなルールを守ることなんて、かなりのストレスになるでしょう。ましてや、年下の刑務官に“マスクから鼻が出ている”なんて注意を受ければなおさらです」

――で、暴力事件の引き金になったと

Tさん「それも要因のひとつでしょうね。所内の受刑者は、テレビを視聴する時間が決まっているし、刑務所が指定した番組しか見られない。もちろんニュース番組なんてね。そこまでコロナ情報は入っていないと思うんですが、刑務官の方はどんどん入ってきます。そうなると敏感になって、注意も厳しくなると……

――はぁ、なるほど……

Tさん「様々な要因が合わさって、昨年や一昨年の事件が多発したんじゃないかと思いますね

情報すら入ってこない刑務所の中の住人に、コロナの怖さを伝えることなど非常に難しいことです。様々なイライラが積もり積もってこのような事件が頻発したというのが、Tさんの見解でした。

完全に閉鎖された空間でどうしても情報弱者になってしまう受刑者たちに、重要で必要な情報をなんらかの形で伝えられないものなのでしょうか? 読者のあなたはこの数々の事件、どう思いますか?

(C)写真AC
※写真はイメージです

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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