【渡辺結花の本棚】魔女への第一歩を踏み出せる一冊

  by 渡辺結花  Tags :  

いじめ、仲間はずれ、心ない言葉。
そういった外部からの悪い刺激によって、心が蝕まれていきます。

『出る杭は打たれる』という言葉があります。
どこか周りの人と違ったり、独特の何かを持っていたりすると、周囲から浮いてしまい、攻撃の的となってしまいがちだという意味の言葉です。

昔いたとされる魔女もそうでした。
特別な力を持っているがゆえに、社会の枠に当てはまらないとみなされ、排斥される運命にあったのです。

自分が攻撃の的となってしまうのは辛いことです。
「どうして私ばかりこんな目に遭うの?」
そう思ってしまうこともあるでしょう。

だけどそれは違った捉え方をすると、“周りから注目されている”“特別な何かを持っている”ということ。
これは、特別な力を持っていたために排斥された魔女と通じるものがあります。

今回ご紹介する小説『西の魔女が死んだ』の主人公のまいは、クラスで仲間はずれにされたことが原因で不登校になってしまいます。
療養として“西の魔女”ことおばあちゃんの家で暮らしながら魔女修行をする、そんな物語です。

魔女修行の基礎トレーニングとしてまいに課されたのは、自分の意思をしっかりと持つこと。

日々の行動を自分で決めて、決めたことをしっかりとやり遂げる。
外からの悪い刺激に反応したり動揺したりせず、平常心を保つ。
そんなことです。

最初は、そんな簡単なことで魔女に近付けるのかと不信感を抱いていたまいですが、実は簡単なことではありません。
精神がしっかり鍛えられていないと、これらのことを守るのは難しいのです。

事実、関わりたくないほど“下品で、粗野で、卑しい男”の出現や、目をそむけたくなるほどに心が痛む出来事など、外からの悪い刺激が次から次へとまいの身を襲います。
それらによって取り乱してしまう心と、動揺してはいけないと思う気持ちとが葛藤します。
このようにして、まいはおばあちゃんと二人三脚で魔女修行に励むのです。

不器用ながらも、自分の心や行動を律して、丁寧に真摯に毎日を過ごそうとするまい。
そんなまいを、時に厳しく、だけどやっぱり温かく見守るおばあちゃん。

2人の生活が描かれたこの作品は、何度読んでも心が洗われます。
読むだけで魔女への第一歩を踏み出せる、そんな一冊です。

最後、おばあちゃんが約束を果たしてくれるシーンは、結末がわかっていても、毎回泣いてしまうほど、心にグッときます。

その約束とは…。

気になるあなたは、ぜひ読んでみてください。

いじめられたり、心ない言葉を投げかけられたりして、攻撃の的となってしまうあなた。
もしかすると、“特別な何か”を持っていて、魔女になる素質があるのかもしれません。

『西の魔女が死んだ』を読んで、おばあちゃんに助言してもらいながら、まいと一緒に魔女修行をしてみませんか?

『西の魔女が死んだ』
著者:梨木香歩
出版社:株式会社新潮社
定価:400円(税別)

某会社にて駆け出しコピーライター&個人的にWEBライターやってます。 以前はアイドルとレースクイーンやってました。 趣味は読書で、好きな場所は本屋。 清く正しく美しく且つ遊び心を忘れずにやっていきたいです。

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