川栄李奈「座りながらアフレコを…」幽霊役の“はかなさ”表現を追求 アニメーション映画『サマーゴースト』全国順次公開中

  by ときたたかし  Tags :  

俳優の川栄李奈さんが、アニメーション映画『サマーゴースト』で“幽霊”役を務めました。本作は、気鋭のイラストレーターloundraw(ラウンドロー)が監督を、安達寛高(乙一)が脚本を務めるオリジナル短編アニメーションで、忘れられない“ひと夏の出逢い”を現代青春群像劇として描いた一作です。川栄さんにお話をうかがいました。

■公式サイト:https://summerghost.jp/ [リンク]

追加上映劇場
◆12/10(金)~
山梨:TOHOシネマズ 甲府
◆12/17(金)~
岡山:岡山メルパ

●映画拝見しました。観る人の人生や背中をそっと押すような優しい作品ですよね。

わたしもそう思いました。この作品は観る人に「頑張れよ」と強い想いを押し付けるのではなく、ひとつひとつ乗り越えて頑張っていこうという優しい想いがつまっているんですよね。軽い気持ちで生きて行っていいと、そう感じてくれたらとも思います。

●タイトルでもある“サマーゴースト”の佐藤絢音というキャラクターは、どう理解して演じたのでしょうか?

普通の女の子があることがきっかけに亡くなってしまうのですが、監督から言われたことは、ちょっと年上な感じで演じてほしいということでした。「彼女はお化けだけれど、余裕がある感じでお願いします」と。でもちょっと寂しさであったり、幽霊のはかなさがあるとも言われていて、そこを表現することは難しかったです。

●もともと抱かれていたイメージとは近かったですか?

近くはなかったですね。わたしは、もう少し少女を想像していたと言うか、よくあるようなアニメの女の子を想像していたのですが、監督は「語尾も上げないでほしい」と言われていて、こだわりを持たれていました。どうしてもしゃべる時に語尾が上がってしまうので、アフレコは大変でした。あとは「力を抜いてほしい」ということで、座りながらアフレコをしたのですが、家にいるみたいに座っていましたね。

●それはめずらしいですね。アニメの収録現場は何回も見学したことがありますが、座ってアフレコをしている場面に遭遇したことはなかったです。

そうかも知れないですね。座りながらアフレコをすることは、わたしも初めてのことでした。いつもなら「声を張ってください」とも言われがちですが、そこも「リラックスしてやってください」ということだったので、経験としても新しかったです。

●大胆な工夫ですよね。座ると、出てくる声量も変わりそうです。

セリフも声の仕事ではわりと張ったりするものなのですが、本当にボソボソしゃべっている感じにマイクを調節してくださったんです。なので本当にリラックスして話しているような感じがします。距離感的にはアニメというより、現実に近いようなしゃべりかたでした。

●今回のように座りながらアフレコをするということは、従来のメソッドが通用しないかも知れなかったですよね。

今回は幽霊の役ということもあって、しゃべり方で語尾を上げないなど、それがとても難しかったですね。自分の耳で自分の声を聴いていてもまったくわからなくて、一個前と今のテイクの違いがまったくわからないこともあり、とても難しかったです。普通のお芝居の場合は、明確な動作の違いなどがあるのですが、声ひとつで違いを表現する作業は、とても難しい作業だなと改めて感じました。

●今回みたいな時は、気持ち的にどう立ち向かうのですか?

わたしは普段それほどテンションが高くないので、自分自身と演じる役柄が遠かったりする時は、「頑張らなきゃ!」と、スイッチを入れて現場に行くようにしています。

●以前のディズニー映画『ソウルフル・ワールド』のソウルの女の子にイメージとしては近かったですか?

あれは幽霊ではなくて魂のような存在だったので(笑)、今回はより人間に近いということもあり、難しかったんです。

●今日はありがとうございました。最後にメッセージをお願いいたします。

この作品、10代、20代の方には、自分もこういうことがあるなと身近に感じてもらうことがあると思いますし、30代とか40代の方も生き方としてみんなが悩みを抱えているなかで、どう答えを出していくか、どう一歩踏み出すかということが、この物語につまっていると思うので、そこに注目してほしいと思います。本当にリラックスした状態で生きるということがいいということを、この作品が教えてくれているような気がするので、いろいろな方に観ていただければなと思います。

■ストーリー

「サマーゴーストって知ってる?」

ネットを通じて知り合った高校生、友也・あおい・涼。都市伝説として囁かれる“通称:サマーゴースト”は、若い女性の幽霊で、花火をすると姿を現すという。自身が望む人生へ踏み出せない”友也”。

居場所を見つけられない”あおい”。輝く未来が突然閉ざされた”涼”。彼等にはそれぞれ、サマーゴーストに会わなくてはならない理由があった。

生と死が交錯する夏の夜、各々の想いが向かう先はー。

(c) サマーゴースト
全国順次公開中

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo