犯罪を犯すのは「小さな頃から何も教わっていない」から─多くの“前科”経験を生かした<元受刑者支援>という仕事

<写真:中溝社長>

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

大阪朝日放送で放送されて興味を持った、元受刑者の就職を支援する《協力雇用主》の企業にコンタクトを取ることができました。それも、保護観察官を務めるヤクザ社会学者の廣末登先生にご紹介いただいたわけです。

<写真:紹介を受けたヤクザ社会学者の廣末先生>

福岡は中洲で不動産会社を経営している中溝茂寿社長は以前取材をさせていただいた方です。それも、中洲新地で立小便をした際にキッチリと罰金を徴収するという正論を語る厳しい方です。

<写真:中洲>

『立ちションで「罰金5万円」取られる?! 福岡中洲の風俗街の噂は本当?』
https://getnews.jp/archives/3113987

彼は多くの半グレや元受刑者を受け入れ、自社の不動産会社で雇い、更生を促すという活動をしています。かくいう中溝社長も、以前は半グレどころの話ではなく、とことん行き着いた《極ワル》でした。

悪さをしていたからこそ、若い連中のことが理解でき、支援をしているというわけです。コロナ禍で一度は静まり返ってしまった九州最大の歓楽街・中洲南新町の喧騒も段々と蘇り、再びネオンがきらめきを取り戻しつつあります。そんな中、寮や身元引受まで面倒を看てやり、若者の更生に奮闘しているという中溝社長の活動について今回は密着してみようと思います。

なぜこのような活動をしているのか?

丸野(以下、丸)「社長はなぜこのような活動を?」

中溝社長「僕は7回や8回も失敗をし続けている(※前科12犯ほど)ので、気持ちがわかるわけですね。そこで法務省お墨付きの《協力雇用主》としてちょっと人助けをしてみようか、自分が苦労した分、協力をしてみようかと一念発起をしたわけです」

丸「なるほど」

中溝社長「協力雇用主の仕事は受刑者の前で自身の経験談を話したり、受刑者ひとり一人に面会したりと全国を飛び回ります。その模様を受刑者への差し入れやお手紙の画像と共に綴ります。ですから時には厳しい言葉をかけるときもありますし。ねぎらってやることもあります。若者みんなのオヤジのような立場で話をするわけですね」

丸「“人生やり直し請負人”と呼ばれて、テレビにも出演されていますよね?

<写真:朝日放送の番組>

中溝社長「いえ、いえ、恥ずかしい限りですよ。ごく当たり前のことをしているわけだけです。殺人と婦女暴行以外はすべてやっているような人間ですら……。目先の金に走っちゃダメなんです。じゃないと、数十年刑務所に入らないといけなくなる。中(刑務所)を経験してきた僕が、もし協力雇用主や保護司などで出所してきた人の支援ができれば、出てきた人間は楽じゃないかなと思いまして……

丸「これからの人生、今からが大切だということですね」

中溝社長「働く場所や居場所がないから、犯罪を犯してしまうという若者も当然多いわけで、本当に生き方が下手な不器用な人間が多いわけです。なんとか救ってやりたいな、と

幼い頃から何も教わっていない子が多い

丸「なぜこんなふうになったと思いますか、若者たちが?」

中溝社長「小さな頃から何も教わっていない、みんな。こんな子たちを受け入れて、頑張らせてあげたいと

丸「なるほど」

中溝社長「ウチには27歳でパソコンを触ったことがない子もいます。丸野さんにはまったく信じられないでしょうが……。これが反社に所属していたので、振り込みではなく現金手渡しになったのが心残りですね」

トランスジェンダーの社員にもねぎらいの言葉をかける

中溝社長「ウチにはトランスジェンダーの社員もいますよ。彼はよくやってくれる。やはり性別では男性でも、女性の感性がある。ですから、あの子には、高級店の清掃を任せています」

丸「その人その人の持ち場があるというわけですね。苦労はありませんか?」

中溝社長「苦労はないですが、女性関係と再犯、昔の仲間との交際が続くと、また元の木阿弥になることが多いですね

裏切られることが多いのが悩みの種ですね

<写真:お世話になっている中溝社長>

中溝社長「仮釈放中は、勝手に住居を変えることができません。それをしてしまうと、また刑務所に逆戻りになることがありからです。法の番人はそんなに甘くないのです。規則正しく、慎ましく暮らしいるか否か、それが一番大切なんですね。一度ウチにいる若者が、彼女と同棲したいといったときに肝を冷やしましたが、なんとかその考えを正しました」

丸「親を泣かせるということ、それが一番許せないわけですね。社長の経験ですね」

中溝社長「一般市民と違うんですよ。弁当持ち(仮釈放)は……。せめて保護観察が終わってからというのが、筋ですよね」

丸「なるほど」

中溝社長「僕みたいなバカな人間をつくりたくないだけなんですよね。それだけです

丸「再犯の従業員もいるようですよね」

中溝社長「いますよ。でもさすがに、ご家族からもほっぽりだされているわけなので、そこに追い打ちをかけにはいかない。裏切られることもありますよ。会社の寮に警察からのガサがきて、すごく悔し想いをしたときはさすがにへこみましたね」

丸「そうですか」

中溝社長「自販機荒らしで、警察から連絡があってね。でもこれからも彼のことは許そうと思いますよ。だって、誰も彼を救おうとしなかったんですからね。僕が最後の砦にならないと……。普通に生活して、普通に生きれば、何とかなります」

感謝状が届き、表彰された中溝社長の今後の奮闘はさらに続きます。九州の熱い気持ちがこうさせるのか、自分の経験が駆りたてるのは、中溝社長の今後の活動に今後も注視していきたいと思います。

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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