牛乳に種菌を入れて温度を管理すればヨーグルトになる。コメに米麹を投入して温度を管理すれば甘酒になる。よく知られた健康飲料や食品を自作できる機器は多く販売されているが、今回は東京企画販売のTO-PLAN(トープラン) 甘酒・ヨーグルトファクトリーを取り上げる。
理由は簡単で放置しておくだけでヨーグルトも甘酒も両方作れてしまう手軽さが良かったからだ。
プレーンヨーグルト
まずはヨーグルト。必要なものはパック入りの牛乳と種となるプレーンヨーグルトだけだ。本品は牛乳パックのままヨーグルトを作ることができるので容器は不要だ。同梱されている容器は甘酒用なのでここでは使用しない。
牛乳パックは500mlでも1リットルでも構わない。記者は500mlで作った。「プレーン」のボタンを押して後は放置するだけだ。カスピ海ヨーグルトを種菌として使用する場合は「カスピ海」ボタンを押せばよい。
忘れたころに電源が勝手に切れたら出来上がりだ。確かに中にはヨーグルトが出来上がっている。理論上はこのできたヨーグルトを種菌にしてまた作ることができ、延々とこのループを繰り返すことができるのだが、現実には空気中の雑菌も一緒に繁殖してしまうので、気を付けて器具を殺菌消毒しても永遠にというわけにはいかず味が落ちたと感じたらまた市販の新鮮なヨーグルトから作り直した方が良いだろう。
出来上がったヨーグルトはプレーンで食べてもよいが、コンポートやハチミツを加えて好みの味に調えるのも楽しい。夕方に仕込んで寝る前に冷蔵庫に入れておけば朝には冷たいヨーグルトを食べることができる。ただし、冷蔵してもヨーグルトは発酵を続けるのであまり長い時間置いておくと発酵が進んで酸味が増してしまうので保存はほどほどに。
甘酒
一方、甘酒は付属の容器を使用して作る。甘酒は主に2つの作り方があり、米を麹菌で糖化発酵させるのが昔からある本来の作り方。そして簡易的な作り方は市販の酒粕を水に溶いて砂糖を加えたものだ。
本機では糖化発酵させる本来の作り方で甘酒を作る。この作り方で大切なのは温度管理だ。麹菌が発酵するのに必要な温度を保つ必要があるので、家庭で一晩かけて作るには炊飯器の保温機能が流用される。それを自動化して一晩の放置で見事に発酵させる。
容器をよく消毒して、炊いたご飯と水、乾燥米麹を入れる。記者の場合は200gのパックご飯を電子レンジで食べられる状態にして投入した。米麹はスーパーの漬物コーナーにあったのでそれを使用した。
この時に米麹が死滅しないようにご飯を水で冷やすために少し置いておいた後に米麹を投入するのがコツだ。
よくかき混ぜて「甘酒」ボタンを押して一晩放置する。
甘酒は飲む点滴として一時期ブームになったが、これについて専門家の意見を聞いてみた。栄養士の藤村直加さんによると、要旨次のような回答を得た。
甘酒は酒粕から作られるものと米麹から作られるものがあります。酒粕から作られるものにはアルコールが若干含まれ甘味は砂糖でつけられます。一方、米麹で作る本来の甘酒はアルコールが含まれないため、子どもや妊婦なども安心して召し上がっていただけます。米のデンプンを麹の酵素(アミラーゼ)で糖化してブドウ糖に分解することで甘みをつけるので、本来の甘酒の甘さには砂糖は一切使いません。このブドウ糖などの糖質が不足すると身体は疲れやすくなり、疲労回復のための点滴は主にブドウ糖なので『飲む点滴』と言われます。つまり点滴の成分と甘酒はよく似ているのです。また脳が消費できるエネルギーは単糖(ブドウ糖)だけなので、寝ている間にも脳で消費されたブドウ糖を補うために甘酒を飲むことは脳を目覚めさせるためには最適な飲み物のひとつであると言えます。
出来上がった甘酒は米粒が残っているものの、砂糖を加えていないにもかかわらず非常に甘く、米麹が一晩かけてコメを糖化した「仕事」の成果が出ていた。この甘酒を熱くすために電子レンジで加熱する場合は少し水を加えて出力を控えめにして加熱することをお勧めする。突沸の危険を防ぐためだ。
応用で美味しい漬物にも!
この甘酒を少し失敬して、お好きな野菜を漬け込めば甘酒から作る「べったら漬け」の出来上がりだ。大根が広く使われるが、キュウリでも構わず非常に甘くて美味しいので子供にもご飯の付け合わせとして嫌われることはないだろう。
冬の時期に何となく飲んでいる甘酒だが、ヨーグルトとともに年中飲んで食べることができる健康的な食品なので、寝ている間やテレワークの合間に仕込んでみてはいかがだろうか。
※写真はすべて記者撮影