コリン・パウエル氏が亡くなった。テレビも新聞も扱いが大きい。パウエル氏はアメリカで初めて黒人で国防長官になった人物で、政治家であり、陸軍軍人であり、米軍制服組トップの統合参謀本部議長として、1991年の湾岸戦争を指揮した。
先述の通り、2001年のブッシュ（ジュニア）政権時には、黒人で初めて国防長官という重責に就いた人物だ。まさにたたき上げの人物で、ご自身はジャマイカ移民の子どもとして、1937年ニューヨークのハーレムで生まれ、サウス・ブロンクスで育った。
このサウス・ブロンクスという地域は実に治安が悪い。パウエル氏が育った頃も決して治安はよくなかったと思う。ニューヨーク市立大学を卒業後は、アメリカ陸軍に入隊した。
市立大学卒のイチ軍人が出世し続けたのには、勿論ストーリーがある。パウエル氏が入隊したアメリカ軍自体で差別撤廃を謳っており『人種、肌の色、宗教または出身国に基づく差別撤廃』が実践されていたので、出世が出来る土壌が確立されていた。
それにパウエル氏は敵を作りにくい性格のようで、加えて人柄も良く軍隊という特殊な職場でも人との調和に優れていた。
更に大学院に進み、1971年に卒業している。その大学院はジョージ・ワシントン大学院で経営学修士を取得している。この大学および大学院は政治に突出しており、多くの偉大な政治家を輩出している。このジョージ・ワシントン大学院は大きな成功への切り札となったことだろう。
学歴がすべてではないが、ニューヨーク市立大学が最終学歴のままでは、アメリカ初の黒人の国務長官は生まれなかったと思う。タフでありながらジェントルな面を併せもった魅力的な人物だった。アメリカ人は誰でもコリン・パウエル氏が好きだったと思う。
ニューヨークタイムズ紙の一面はパウエル氏の訃報のニュースだった。CNNのニュースもパウエル氏の訃報の報道に時間を割いている。
パウエル氏はワクチン接種は完了していたが、死因は新型コロナウイルスによる合併症で死去した、84歳だった。この方のように人種関係なく、誰からも受け入れられた政治家をこの方以外、思う浮かべることが出来ない。
惜しまれつつ亡くなることの美しさをパウエル氏が現世に教えているように思えた。
合掌。
