立ちションで「罰金5万円」取られる?! 福岡中洲の風俗街の噂は本当?

  by 丸野裕行  Tags :  

どうもライター丸野裕行です。

今回のかなり長期の福岡出張。

敬愛するヤクザ社会学者の廣末登先生を頼って福岡へ上陸したわけですが、実はライター垂涎ものの様々なスポットがあるというわけです。もちろんグルメスポットにも当然興味があり、こちらも当然、取材予定。

しかし一番行ってみたかった場所は、撮影不可の中洲の風俗街。大阪でいえば、飛田新地のような場所です。そこで、先生からこの風俗エリアの「顔役」である『(有)中溝観光開発』の中溝代表をご紹介していただきました。

<写真:社会学者でヤクザ博士の廣末登先生(左)>

今回は撮影不可の街や風俗店店内の画像とともに、新聞、テレビメディアで取り上げられた立ちション罰金5万円の真実をしていきたいと思います。

中洲の歓楽街の中心部に位置する南新地

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、福岡県のほとんどの店舗が休業要請をしている中で、特に性風俗店が集まる福岡・中洲南新地は大きな打撃を受けているといいます。

<写真:後ろに見える風俗ビルの中が南新地>

福岡を代表する中洲繁華街の中で、南側にあるのが中洲南新地になります。元々は、料亭などが立ち並び、一歩立ち入ると、色街のにおいを色濃く残してきたエリアになるので、懐かしい町屋づくりのお店がよく目に飛び込んできます。

このエリア、福岡を代表する商業施設『キャナルシティ』のほど近くで、子供連れなどが立ち入ることは許されません。それほど、治外法権なこの場所は派手派手しい風俗ビルが立ち並び、写真撮影することもご法度。

<写真:南新地内の風俗が入店しているビル>

筆者がそこを訪ねたときは、まさに緊急事態宣言の真っ最中。しかし、店先には男性スタッフや年配の女性が立ち、夜にはきっちりネオンが灯るそうです。コロナ禍で数店舗が店を閉めてしまいましたが、南新地の数十店舗はなんとか営業中。
お店のスタッフさんたちは「一生懸命生きている女の子を見捨てるわけにいかない」と口々に言います。そりゃそうだろうな……。

いよいよ中溝社長と対面へ

<写真:テナント募集が増える南新地>

廣末先生に連れられ、少しビクビクしながら街の中へ。その中のビルを経営する中溝社長のもとへ……。高級ソープを抜けた細い路地に入ると『(有)中溝観光開発』の作業するスタッフたちの詰め所がありました。

扉の前には作業服を着た若者たちが、元気よく笑顔で挨拶してくれます。さあて、中溝社長とはどのような方なのか……。

事務所内に入ると、一人の若者が熱中症にも似た症状を訴え、トイレでもどしていました。

<写真:全国の施設を飛び回り、悪事に手を染めてしまった少年たちを受け入れる中溝社長>

さっきまで電話で打ち合わせをしていた社長は、一見すると怖い印象でした。が、先ほどのトイレの若者にも「調子が悪かったら、寮に帰って一旦休め。今日は帰って体調を整えろ」と声をかけていて、意外なやさしさにほっと胸をなでおろしたことを覚えています。

その街並みは?

中溝社長と街に繰り出してみます。
するとさすがは顔役。店先のボーイさんたちが皆頭を下げ、気さくな会話。「最近はどうだ?」と相手の人柄や人生を知らないとできないようないたわりのある声がけをみんなにしていきます。ちなみに社長、8棟ものビルを所有しているそうです。

<写真:南新地内部マップ>

中溝社長はそのビル管理の仕事を、保護司や厚生施設などの業界用語である≪協力雇用主≫企業として、元半グレや元受刑者を受け入れ、与えているそうです。しかも寮まで用意して……。

筆者は、その≪協力企業主≫の存在を、朝日放送系のドキュメンタリー番組で視聴したことがあったので、この世界観が“実録か!”と全身で実感しました。


【(有)中溝観光開発朝礼風景】

事務所に戻り、若手にやさしく声をかけ、それからデスクの椅子に鎮座した中溝社長。

<写真:若者のことは絶対に見捨てないと豪語する代表>

廣末先生は顔なじみなのですが、やはり社長自身が昔は札付きのワル。正面に座り小さくなっていると、様々なお話をされました。

なぜ≪協力雇用主≫になったのか、少年たちの家庭環境の悪さ、働くこととよりも手っ取り早く金を手に入れることに走ってしまう無軌道さetc……。協力雇用主としての熱い想いがしっかりと伝わってきました。

そこからは本題へ

丸野(以下、丸)「あのう、このエリアって立小便したら5万円の罰金というのは本当なんですか?

中溝社長「立小便したら、罰金5万円。そうだよ、当然のことやね。そこにポスターや張り紙がしてあるでしょ」

丸「本当ですね! いつくらいからこれをはじめたんですか?

中溝社長「最近だね。人の庭先で男も女も酒に酔っ払ったからといってあたりかまわず、小便をするというのはどういう了見なのかわからん。コンビニも公衆トイレも近くにあるというのに……

丸「そりゃそうですよね」

中溝社長「各風俗ビルの前には防犯カメラがある。この街の副理事長のオレが動かなくてどうする?

中溝社長の話では、まず深夜勤務をしているスタッフが仕事中に犯人に声掛けをし、当たり前のように「高い!」と口論になるそう。しかし、街の中には≪立小便禁止! 罰金5万円≫という張り紙が張り巡らされています。さらに、中溝社長は続けます。

スタッフたちの労働力を考えてもらいたい

中溝社長「もし5万円支払ってもらったとしても、スタッフの労働量が半端ない。実際業者に頼むと、夜間手数料がかかるので膨大な金額になるんだわ。そのあとウチが、清掃して消毒液を噴霧して、臭いを消し去って、やっとこの街がキレイに保てるようにするわけ……

丸「自分たちが暮らす街ですもんね」

廣末先生「そんなこと、丸野さんはしたいと思う? 真夜中、スタッフたちは眠気を噛み殺しながら頑張っているのに、そんな不束者のために時間を割かないといけない。しかも、実はこの罰金の5万円は、少年たちや元受刑者の施設などの支援に全額寄付されているので、この会社の利益になっているわけではないんですよ」

すべてを寄付……正直言葉が出ませんでした。人のためにここまでできるのが≪協力企業主≫なのか……。

中溝社長は静かに、タバコをくゆらせているだけでした。

なるほど……と筆者はカメラのシャッターを切りました。しかし同時に街を守ることにつながる罰金を科すという行為に法的な問題はないのだろうか、と。

<写真:当時掲載された某紙>

地元近隣警察署の見解によれば、請求したスタッフから脅迫などを受けた場合であれば事件として着手する。しかし彼らの声掛けは「先ほど用を足されていましたよね?」と実に紳士的なんです。

そうなると【私有地でのトラブルは基本当事者同士で解決するという事案】にあたるといいます。

ちなみに、全国各都道府県の各繁華街でこのような厳しい取り組みをしているところは見つかりませんでした。確かに張り紙はされていますが、実際に罰金を徴収するのは中洲南新地だということです。

「それは、その人個人の“モラル”を問いたいから」「酒を飲んだことで気が大きくなり、他人や所有者など迷惑を考えず、違法行為をする者がいるんですよ」と最後に中溝社長はおっしゃっていました。

それはどんなに言い訳をしても、立小便は≪軽犯罪法違反≫。実際にその場で暴れた酔客が現行犯逮捕されたこともあるそうです。

※この記事を執筆した後日。2021年9月18日早朝、立小便を注意した会社スタッフが、その相手に暴力行為をふるわれました。現在、その立小便をしていた相手は、地元近隣警察署で取り調べを受けているとの連絡が、中溝社長から入りました。自分がやった違法行為のことを咎められ、逃げた末に相手を殴る。本当に許されない行為です。

今月30日、全国的に緊急事態宣言が解除される予定ですが、ハメを外しすぎると痛い目に遭うのでくれぐれも注意です。
中州に観光に来たときにはもちろんですが、みなさん、楽しいお酒の飲み方をしましょう。

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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