我が家の住まいはマンハッタンのミッドタウンと言う中心部に位置している。築90余年になる古い集合住宅で日本風に言うのであればマンションだけど、アメリカのマンションの意味は大邸宅なので、我が家は慎ましやかなアパートである。
800世帯以上のこの集合住宅はマンハッタンの航空写真からもハッキリわかる。Historic District と言って歴史的な地区と言うのか、辺り一帯指定されていて、よく映画撮影やテレビドラマのロケ地に使われている。
古き良き時代のニューヨークが今もそのままの姿で、マンハッタンのミッドタウンに現存しているのである。だから、築90有余年となる我が住まいは、歴史的地区に位置するゆえ、残念ながら水漏れが不定期に起こってしまう。
9時から5時までの勤め人時代には、アパートの管理人にアポを取りつけ合鍵で係の方に来ていただき、不在中に直してもらっていたし、上の階からの水漏れも時にあるので、天井が少しただれたようになった時などは、不在中に壁塗りをしてもらっていた。
今現在、職場は自宅となりテレワークでことが足りる。…となると常に自宅にいるので壁が少々水漏れで膨れようが、バスルームでチョット水漏れがしようが、もう、気にしないようになった神経の図太さだ。
さて、先週の金曜日、夕方近くドアをバンバン!と異常な大きさでノックされた。何か緊急の出来事とわかったけど、あまりの無神経なドアの叩き方に腹が立ち、その音を無視した。しかし、無神経なドアを叩く主はその手を休めない。相手が不躾ならこちらもそう出て「ナニ?」っと大声でドアを開けないまま対応した。
どうやら我が家から水漏れがして、そのチェックに来ており、仕方なく部屋に入れると白い作業服のビルの男は、シンクの下のドアを無造作に開け水漏れの確認。なぜか冷蔵庫を開けたり、クロゼットまでガサツにあける始末。バスルームにも入り水漏れの原因を調べている。業務とは関係ないが腕から刺青が見える。
男は「月曜日の朝10時に工事の人が来るから、キッチン周りのものを片付けて置くように」と言うので、「家で仕事をしており9時から11時はどうしても外せないので11時以降にしてもらえませんか?」とお願いしても、「10時!」と言いきられてしまった。
本日は、その工事の約束の月曜日で、今現在お昼の12時46分。笑っちゃうのだが、誰も来ていない! 約束の時間から20分過ぎた頃、ロビーに繋がる内線で「本日の10時の工事の約束が、誰も来ないですが….」と言うと、「係の人に伝えます」と返ってきた。
約束の時間から1時間後の11時にロビーに再度電話をすると「今、2階で水漏れが発生してそちらを対応しています」と言われたしまった。おそらく、そちらの方が急を要する状態だったのだろうと素直に約束の反故を受け入れた。
日本に住んでいると約束事はキチンと守られることが多い。鉄道のスケジュールのち密さ、日本は時間を守る国民性だ。その時間に対しての優等生の日本人が外国に住むと、往々にしてこの約束を平気で無視されることに出くわす。
人間は学ぶもので、約束を取り付けた瞬間に『時間通りにくることはない…』と予想はつく。予想どころか100%に限りなく近い程、時間が守られることはない。ただ、完全に約束を反故にされるとは思わなかった。
海外に住むと日本の良さが身に染みてわかる。勤勉な国民性、時間厳守、責任感も強い。そして、日本人、皆…と言える程、優秀である。例えばマクドナルドの店員なんてアメリカは酷いものだ。すべてがすべてとは言わないが、日本のファストフードや飲食業界に従事する方々の、プロ意識は本当に素晴らしいと思う。言葉遣いや丁寧な所作、拍手喝采を送りたい。
ただ、アメリカにも良い点はいくらでもあるし、日本が逆に残念に思う事柄もいくつかはある。日米両国に住んだ経験から比較できることは幸せなことに思う。アメリカ、日本と比較できるから、それぞれのマイナス部分に妥協できるようになってきた。この妥協は忍耐と言った方が的確かもしれない。
何はともあれ本日は仕事を休んだ。このようなことは予想はついたが、それでもアポを取ったのだからそちらを優先した。明日は休まずに働こう。明日、勝手に仕事中に部屋に入ってこられようが、テレワークを続けよう。そっちは勝手に工事をしてくれればいい。
海外に住んだ経験のある方は大いに共感してもらえると思う。そして、これから海外に留学や駐在に来られる方々は、この忍耐力が海外で暮らす肝になることも覚悟をされるといいと思う。
それにしても、ホント~にこういう事は一事が万事だから、参っちゃうね~と苦笑い、苦笑い。この無責任さこそをニューヨーク流と言う!とサラリと流せばいいか。 人は経験を積むと学ぶものなのであ~る。