コロナで苦境の酒蔵を応援する日本酒文化応援プロジェクト『WAX&WANE』の成功を受けて他では飲めない限定の日本酒が市販へ!

  by 古川 智規  Tags :  

東京に集まる面白いモノやコトを「オンライン商店街」という形で販売するアーケードトーキョーが、新型コロナウイルス感染症まん延による飲食店休業の影響で出荷と消費が著しく減少し、今後危機的な状況に置かれる可能性がある日本酒とその文化継続の一助となるためのプロジェクト『WAX&WANE(ワックス・アンド・ウェイン)』を立ち上げた。これはすでに終了しているクラウドファンディングで、返礼品にはこの企画に賛同した12酒蔵の他では飲めないWAX & WANE限定酒だ。

全国の12酒蔵と連携して日本酒の新たな価値提供を実現するブランドを生み出し、日本酒文化を未来に残し日本が誇るべきプロダクトとして日本酒を世界に広める事を目指す。
パッケージにもこだわり、タイダイ染めの手ぬぐいでそれぞれのお酒のイメージを表現している。この手ぬぐいも逸品で、普段使いのハンカチやクロスとしても利用可能なので大切にしたい。タイダイ染めとは、しばったり折ったりした布地に染料を掛ける手法のこと。漬け込んで煮るのではなく、染料を掛けるだけなので多色を使用してグラデーションを表現することも可能だ。

日本酒が危ない!というのは単純に売れないからという経済的な理由だけではない。日本酒の醸造に欠かせないのがお米だ。それも普段私たちが食べている飯用のコメではなく、酒造のための酒米である。当然のことだが、酒米も米農家が丹精を込めて作る。ところが、日本酒が売れないと酒造メーカーは生産調整をしなければならなくなり、結果として原材料である酒米の消費量も減る。こうなると農家は売れない酒米ではなく、食べるための普通のお米に作付けを変更するのは当然と言える。このまま今の状態が続けば最終的には原材料の「コメ不足」という事態にもなりかねない。そのような事情を含めての「お助けプロジェクト」なのである。
では購入可能な全12種類のお酒を紹介しよう。それぞれのお酒には番号が1から12まで振られているので、その順でペアリングメニューとともに紹介する。

01 若駒

若駒の特徴は何といってもジューシーな酸。
一口目、とろっとした口当たりがネクターのようにまるでフルーツをそのまま搾ったかのような印象を受けます。さっぱりフルーティというよりは濃厚フルーティ。フルーツ感の後には、少しだけの熟香、それが八角やシナモンのようなイメージをもたらしてくれます。
お料理は、パイナップルを入れた黒酢酢豚のような甘、酸、果実感が有るものなんかがいいのではないでしょうか。

ペアリングメニュー
生ハム無花果、欧風カレー、茄子の揚げびたし

02 青煌

圧倒的な透明感と花酵母の穏やかさを楽しむお酒。
青煌を楽しむにはぜひ冷やしてお召し上がりください。
まず最初の一口は透明感と爽快感が前面に出て綺麗広がります。そのあとで一瞬だけ顔を出すお米本来のコクとそれを包む穏やか、かつフルーティな酸はこの蔵独自の花酵母を使ったものだから。
そしてまた次の一杯を促すような静かな後引きを見せ、消えていく。
お酒が苦手な人にも飲んでほしい、そんなお酒です。 お料理は生のお野菜や、鶏肉を使ったお料理などお勧めです。

ペアリングメニュー
山菜の天ぷら、ほうれん草のお浸し、薬味どっさりの鰹のたたき

03 松の寿

食中酒として世界に認められた”いぶし銀”純米酒
松の寿を醸す松井酒造店はIWC2020(インターナショナルワインチャレンジ)で純米酒部門でトロフィーという世代一位を受賞した実力蔵です。
まずはどんなお食事をも邪魔しないその優しい酒質を感じてみてください。運転の上手いタクシードライバーのブレーキのように最後の最後にスッと消えていく、そんな優しさと派手さは無いけれど上品な香りや透明感に包まれるお酒です。
お料理は無花果の天ぷらのように、甘さとしょっぱさが混在したシンプルなお料理が良いと思います。

ペアリングメニュー
鮎の塩焼き、鶏モモのグリル 柚子胡椒、ささみのサラダチキン

04 陸奥八仙

エレガントでフルーティ、華やかな果実味を感じるお酒。
陸奥八仙のお酒の特徴は何といってもその完熟した果実のような上品な華やかさ。
日本酒が苦手、そういう人にこそ飲んでいただきたいお酒です。これがお米だけでできているのが信じられないほどにジューシーな甘みがあります。
全体としてのバランスがとてもいいためその甘みが心地よいお酒です。
そのままフルーツを使ったような料理でもいいですし、案外ソース料理なんかとも相性が良いです。

ペアリングメニュー
鮭の西京味噌焼き、柿の白和え、パイナップルケーキ(台湾)

05 ロ万

究極の軟水で醸された、優しい味付けのお料理に合うお酒
ロ万の特徴はなんといっても山の上からわざわざ引いてきた超超軟水を使って仕込んだことによる柔らかさです。
ほのかに甘みを感じる和三盆を使った和菓子のように上品な飲み心地は、野菜の天ぷらとか、貝出汁のお吸い物など優しい味付けのお料理と相性の良い日本酒です。
アルコール度数も日本酒にしてはかなり低めに造られているので食中酒としておすすめです。
軽い飲み口ですがもち米四段仕込みという、仕込みの最後にもち米を入れて旨味を引き出す花泉酒造独自の造り方で造られているために旨味もちゃんと感じられるお酒です。

ペアリングメニュー
茶碗蒸し、アサリバター、揚げだし豆腐

06 川鶴

濃厚でパワフル!
まるで滋味深いスープのようなお酒。
ジュースのように飲みやすいタイプではなく、一口の中にいろいろな味わいがあり複雑に合わさりながらもまとまっているのがわかります。
口に含むとお米の味がガツンと現れ、その次には少し焦げたお餅や煎餅のようなテイストが。温めると焦げ感の中にも蒸篭蒸しのちまきのような香りと味。
皮目をしっかりと焼いたスパイシーな鶏もも肉や、クミンを効かせたひき肉などとどうぞ。

ペアリングメニュー
鶏の黒胡椒焼き、ハンバーグ、プルコギ

07 大那

素材を活かした料理に合うお酒
大那は甘いタイプのお酒が苦手な方に是非お勧めしたいお酒です。
ただ、するすると水のように飲めるタイプではなくお米のコクを感じながらも、キレ良くドライな仕上がりになっています。
出汁巻き玉子のようにお酒が一歩引いて幅広く様々なお料理を受け止めてくれる万能食中酒です。
お料理はお刺身やシンプルな味付けの肉料理、少し甘く炊いた野菜などお勧めです。

ペアリングメニュー
里芋の煮っ転がし、いんげんの胡麻和え、白身魚の刺身

08 酒屋八兵衛

三重県で栽培された伊勢錦というお米を使って醸されたお酒です。
山廃特有の酸はありますが新平君の上手なコントロールで主張しすぎず、香りも穏やかに。少し温めてあげると仄かな穀物感が漂う優しいスープのように味わいが広がります。
相方の料理を選ばないお酒なので淡白なものから濃いものまで何でも来いですが、心地よい米感を感じるお酒なので白いご飯のお供になるような牛すじの煮込みやカレーなどとのマッチングが旨いです。

ペアリングメニュー
キーマカレー、豚の角煮、餃子

09 山城屋

山城屋はぜひ、バターやクリームを使った料理やチーズなどの乳製品と一緒に飲んでみてください。タンドリーチキンもお勧めです。
山城屋自体はグレープフルーツやレモンのような柑橘感を感じさせるお酒なのですが、乳製品と楽しむことでこのお酒が本来持っているその潜在能力が一気に花開き、お互いの良さを引き出しあうのがわかります。

ペアリングメニュー
鶏のクリーム煮、タンドリーチキン、グラタン

10 中島屋

蔵内で1年以上低温貯蔵した贅沢な純米大吟醸のブレンドをご用意していただきました。 中島屋本来の力強さを持ちながらも、低温でじっくり熟成したことによりお酒としての円熟を迎えており、角が取れてなめらかでクリーミーな飲み心地です。 バターチキンカレーや八角の効いた角煮など、スパイスとトロっとした油分のあるお料理と相性が良いです。

ペアリングメニュー
燻製チーズ、手羽先のスパイス焼き、麻婆豆腐

11 東照

「陽だまり」のような、刺激のない優しさ。
「優しさドライ」とでも言いましょうか、お餅のような香りがあり「あぁ、日本酒ってお米でできたお酒なんだなぁ」としみじみ実感します。
豚ヒレ肉の西京味噌焼きなど、優しい味わい+香りやえぐみなどの要素がある食事とのマッチングがおすすめ。 冷たくても美味しいですがぜひ常温~少し温めて外で飲んでいただくとよりいっそう陽だまり感が出てお勧めです。

ペアリングメニュー
手羽元のあっさり醤油煮、ベーコンを入れたポトフ、シンプルな豚のグリル

12 結

ふくよかで瑞々しい、果実感を感じるお酒
柔らかくふくよか!と言う蔵元杜氏の浦里美智子さんの言葉通りのお酒です。
そしてこの結ゆいはそのふくよかさの中にエレガントな香りが顔を出しています。冷たくして飲むと華やかで綺麗なイメージですが常温、少し温めるとふくよかさが増して全然表情を変えるのも面白いお酒です。
甘さは感じるもののそれが心地よさを生んでくれている感じがします。果物を使った白和えなどいかがでしょうか。

ペアリングメニュー
魚の煮つけ、照り焼きチキン、蓮根のきんぴら

日本酒は個人の好みで選ぶべし!

日本酒は一定の決まった味わいはあるものの、二つと同じものはない。傾向はあるが味の好みはぜひとも自身の舌と感性で決めていただきたい。この12本のお酒はX軸に「軽やか」から「濃厚」、Y軸に「コク」から「フルーティー」をとったチャートがある。記者の好みはワインのようなフルーティーなものではなく、日本酒らしい酒臭さのある、チャートでいうとX軸で最もプラス側に、Y軸で最もマイナス側にある、位置でいうと右下にあるものだ。それは6番・香川県観音寺市は川鶴酒造の「川鶴」だった。単純にチャートだけで選んで飲んでみた。

色は思った通りの琥珀色。冷酒で飲んだので想像していたほどのパンチは感じなかったが、品の良い昔ながらの日本酒感は残しつつも、確実に酔いに導く飲みやすさはさすがだ。日本酒が苦手な人には飲みにくいと感じるだろうが、これが個人の好みの差だ。このような飲み比べで好みの酒造メーカーを探し出しだせば、自分の好みに近い日本酒を醸造していると確信が持てるので、以降は市販品で追っかけやすくなるというものだ。数ある日本酒メーカーの中で「これは!」と感じるお酒に巡り合うのはなかなか難しいが、1本が330mlおよそ2合弱の量、しかも栓抜きで開栓する瓶入り完全飲み切りサイズなので、飲み比べできっといい日本酒に巡り合うことだろう。外食でお酒を飲むことが難しい今だからこそ、自宅で自分が好みの日本酒探しをしてみてはいかがだろうか。

米写真はすべて記者撮影

乗り物大好き。好奇心旺盛。いいことも悪いこともあるさ。どうせなら知らないことを知って、違う価値観を覗いて、上も下も右も左もそれぞれの立ち位置で一緒に見聞を広げましょう。

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