花江夏樹、声優業にやりがい 「自然と話せるキャラクターは、僕は好きです」 劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』

  by ときたたかし  Tags :  

明石家さんまが西加奈子の同名小説に惚れ込み、企画・プロデュースした劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』に、人気声優の花江夏樹さんが出演しました。漁港の船で生活するちょっとワケあり母娘・肉子ちゃんとキクコの愉快な暮らしぶりを、自然残るノスタルジックな漁港の景色や季節の移り変わりとともに美しく描き出した、感動のハートフル・コメディーとなっています。花江さん自身、「観終わった後に、自分にとっての大切な人を思い浮かべてしまうはず」と太鼓判を押す本作。その公開を前に、花江さんにいろいろなお話を聞く機会を得ました。

■公式サイト:https://29kochanmovie.com/ [リンク]

■ストーリー

愛情深い性格ゆえに、これまでの人生、ダメ男ばかりを引き寄せては、何度もだまされてきた母・肉子ちゃん。
とんでもなく豪快で、子どもみたいに純粋な母に比べて、しっかりもので大人びた性格の小学5年の娘・キクコ。
ふたりは肉子ちゃんの恋が終わるたびに各地を放浪し、北の漁港の町へと流れ着く。
漁港で途方にくれる母娘の胃を満たしたのは、一軒の焼き肉屋「うをがし」の焼肉だった。
妻に先立たれ、店をたたもうとしていた店主・サッサンは、目の前に現れた肉子ちゃんを”肉の神様”だと思い、「決しておなかを壊さないこと」を条件に肉子ちゃんを雇いいれる。こうして、サッサンが所有する漁港の船を住処に、肉子ちゃんとキクコの新しい生活が始まった……!

●心に残る感動作でしたが、最初の印象はいかがでしたか?

港町を中心に繰り広げられる親子愛のドラマで、人と人との気持ちの揺れ動くさまが重要なのだなと、台本を読みながら思いました。肉子とキクコの会話も面白いですし、なんとなしにされている会話にクスッとしてしまいました。最後はちょっとしたどんでん返しもあり、物語の世界のフィールドとしては狭いのですが、その中ですごい世界が広がっている作品だなと思いました。

●演じられた二宮というキャラクターは、いかがでしたでしょうか?

正直なところ、物語の本筋に関わってくるキャラクターではないんですよね。キクコと会話をするなかで、彼女にとって大切なものを思いださせてあげられるような、そういう導いてあげられるキャラクターなのですが、けっこう不思議な子で、会話をしているようでしていない(笑)。「自分の言いたいことを一方的に投げかけているような子です」と監督のディレクションもありました。それは意識して演じていました。

たぶんこの作品に出てくるキャラクターのなかで、一番声も小さいと思います。僕、声優なんですけどね(笑)。

●今までの花江さんに比べて、落ち着いたトーンも印象的でした。

そうですね。今回は大竹しのぶさんとCocomiさんがメインキャストなので、そのテイストに合わせていく感じでした。たぶんおふたりとも型にはまらないというか、言い方が難しいのですが、声優としての技術をあまり使わない、どちらかというと実写よりに近いお芝居でやるのかなと思っていたので、二宮もそこまで作り込まずに、ただそこで立って話しているイメージで演じていました。

●それは難しい作業でしたか?

僕は好きですね。どちらかというと、デフォルメしたお芝居のほうが難しいと思っているので、ギャグなどは難しいんですよ(笑)。こういう自然と話せるキャラクターは、僕は好きですね。

作品によって監督がイメージしている演技プランみたいなものが全部違うと思うので、そこに都度都度合わせる作業は毎回あり、大変ですがやりがいがあります。

●方言(?)もありましたよね。指導などもあったのでしょうか?

それが実在の方言なのか確かめたくて、ガイド音声や指導の方はいるのか質問したのですが、そこまで厳密にどこかの方言ではないとのことでした。わりと標準語のイントネーションで、語尾だけあのように変えるみたいなことだったんです。なので、そんなに大変ではなかったですね。実在のものが元になっている場合、忠実にしないといけないのですが、あくまでもフィクションの中でのことなので。

●今日はありがとうございました!映画を待っている方たちへメッセージをお願いします!

幅広い世代の方たちに観ていただきたいですし、観終わった後に自分にとっての大切な人を思い浮かべて、またちょっと気持ちも変わってくる、そういう作品だと思います。この肉子ちゃんのパワフルさを映画館で観ていただいて、元気をもらってほしいなと思います。楽しみにしていてください!

劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』
公開中
(C) 2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会
配給:アスミック・エース

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo