巨額詐欺のマドフ、刑務所で死去82歳

  by あおぞら  Tags :  

 アメリカで一人の受刑者が亡くなった。写真はマグショットと呼ばれ逮捕後に撮影される写真で、有名人が逮捕された時に画像として使われることが多い。

 この人物はバーナード・ローレンス・マドフと言い、1938年にニューヨークで生まれたユダヤ系アメリカ人で、投資顧問や金融業を職業とし、NASDAQ(ナスダック)の会長職にも就いたことがあり、信頼は絶大だった。

 その信頼、信用を悪用し、詐欺に転じ膨大な利益を上げた。この元ナスダック会長は、自身が運営する投資ファンドは運用次第で10%を超える高利回りと言葉巧みに投資家たちから多額の資金を集めそれを運用することもなく、既存の顧客の配当金捻出のために使う自転車操業を繰り返していた。

 被害者はアメリカ人だけでなく、日本も被害を受けた人たちがいた。正確に言うと人というより日本の企業が被害を受けた。被害企業が野村證券、住友生命、三井住友生命、明治安田生命と他複数の大手保険会社だった。

 大手企業もNASDAQ(ナスダック)の元会長が犯罪に手を染めているとは到底思うまい。巧いこと元NASDAQ(ナスダック)の会長職を利用したに違いない。

 マドフ元NASDAQ(ナスダック)会長が逮捕されたのは2008年12月、もう12年以上が経過したが、逮捕当時のアメリカの報道の過熱ぶりは凄かった。

 自身の過去の経歴は十分人を信用させられる価値があり、その悪用で稼いだ金は日本円で5兆円、或いは6兆円ともいわれている。詐欺により得た悪銭は不動産所有にも当てられ、ニューヨークではマンハッタンと、セカンドハウス的にロングアイランドに住まいを持ち、フロリダ州のパームビーチ、またフランスにまで別荘を持っていたそうだ。

 詐欺で得た金で贅沢三昧の生活を愉しんだが、法治国家のアメリカでそんな不正が見逃されることはない。70歳で逮捕され2009年の6月からノースキャロライナ州の刑務所に収監された。その半年後の12月、同刑務所で薬物犯罪で服役中のボディービルダーに殴打され、数か所を骨折する事件に巻き込まれた。

 悪さに手を染めなければ、それだけの経歴もあるのだから悠々自適で、また人から敬意を持たれ後年の人生を送られた筈なのに、詐欺師へと成り下がったマドフ。NASDAQ(ナスダック)の元会長は、服役中に複数骨折させられるという、経歴と不相応な人生を歩むことになる。

 マドフには息子が二人いた。二人とも大学卒業後父親の経営する会社に就職した。世の中にはその人と関わると不幸になる人がいるようだ。マドフの息子達は、父親と全く別の仕事をしていれば人生が狂うことはなかっただろうが、親は息子達に悪影響を及ぼした。

 長男のマークはマンハッタンの自宅で父親逮捕後、首つり自殺をした、2010年12月のこと。そして次男のアンドリューは2014年9月、悪性リンパ腫により48歳で他界した。人を利用し、人を騙し、人を欺くと結果家族も不幸になっていく。

 バーナード・ローレンス・マドフ、巨額詐欺事件の当事者は82歳、刑務所で人生を終えた、没年月日2021年4月14日。

 マドフと小室佳代さんは何の接点もないが、マドフの過去を紐解くうちに、長男の自殺を思い出すと、小室佳代さんの夫の焼身自殺という痛々しい死に方を思い出し、マドフと小室佳代さんは関わると不幸になっていく共通点があるような気がした。

 人を騙しては決して幸せにはなれないのである。そして、人を欺くと自分のみならず家族も不幸に巻き込んでいくようだ。
 

画像: U.S. Department of Justice, Public domain, via Wikimedia Commons

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