転売ヤーの依頼でヤクザが“ホームレスの行列”を召喚!「ホームレス錬金ヤクザ」の今

  by 丸野裕行  Tags :  

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

世の中の嫌われ者の中に《転売ヤー》という存在があります。転売ヤーたちは人気商品や限定商品を買い占め、転がし、正規の流通を阻害するばかりでなく、無用な値段の吊り上げを行います。そのため、本来必要とする人のところに商品が回ってこない根源となっています。昨年のマスク騒動のときでよくわかりましたよね。

この転売ヤーという仕事、支えているのが実は“ホームレス”ということをご存知でしょうか?

公営ギャンブル博打サロン、名義貸し、架空口座販売などなど貧困ビジネスでホールレスが体よく使われることは多いのですが、今はもっぱら転売ヤーが大きな収益を上げるための“行列に並ぶ”というミッションが急増中とか……。

今回は転売ヤーから依頼を受け、ホームレスに動員をかける暴力団員のU氏(51歳)に、その手口について話を聞きました。

なぜホームレスを並ばせる仕事を選んだのか?

丸野(以下、丸)「ホームレスを並ばせる仕事って、はじめたキッカケは何だったんですか?

U氏「昔からあったんやて、そんなもん。俺たちヤクザは人を集めて人夫仕事を仕切ったり、あいりん地区からドカタをバンに乗っけて運んだりしとったんやから……。本格的に行列に並ばせはじめたのは、ドラクエが発売されたときやな。シリーズで並ばせた。あとはウィンドウズ。あれは、ごっつう儲かったわ」

丸「懐かしいですね」

U氏「ホームレスたちとの縁は、汚いボロアパートをひと棟借り切って、住民票を上げて、生活保護を受給させるというやつ(生活保護費受給ビジネス)からはじまった。別名・囲い屋というんやけど、低額宿泊所として貸し出して、保護費の半額以上を毟り取るわけ。あとは、ホームレスを病院に通わせて、向精神薬を処方してもらう。それをスポーツ新聞の三行広告やネットを使って捌くわけ。西成なんかは、昔路上の露店で買えたわ」

丸「僕も昔取材で西成で暮らしたときに、ハルシオンが売られているのを見ました」

U氏「人を並ばせる仕事っていうのは、いわばその仕事の副産物やな。何度も何度もホームレスを使って錬金していくことが、俺らの仕事なわけよ。ホームレスも仕事がないから喜んでやってくれるし、正直コロナなんて連中は怖がってないし(笑)

ひとり並ばせて600円!

丸「どうやってホームレスを集めてくるんですか?

U氏「昔はあいりん労働福祉センターの周りで、職にあぶれて路上生活している連中に声をかけてたけど、今はキリスト教系のボランティア団体の炊き出しの列に声をかけてる。名刺つくって、渡してね。公園はヒマなホームレスの宝庫やから。今や600億円規模にまで膨らんでる転売ビジネスは常に人手不足や。そうなると、人集めのプロである俺らの需要が高まってくるわけ」

丸「へぇ、600億円市場! 単価的にはいくらくらいなんですか、ひとり集めて?

U氏「数年前は、ひとり並ばせられれば500円程度やったんやけど、現時点ではコロナ禍で活況になってて、600円くらい。並ぶホームレスのギャラとしては、季節によって変わるね。大体、冬場に一晩並んで店の開店を迎えて5,500円、早朝に2時間並ぶなら1,100円程度が妥当な相場やわ。マスクと消毒液のときには、全国的に並ぶホームレスも儲かったし、俺らも儲かった」

丸「コロナショックで、かなり活況だったということですね

意外に気苦労が絶えない仕事

U氏「でも、ひと言で“並ばせる”といっても、気苦労が絶へんねん。時間になって、その行列で商品を購入してくれるまで根気よく並ばせなあかん。腹が減らんように、夏はアイスキャンディー、冬は熱々の肉まんを差し入れるのなんて当然やし、トイレに行きたいといえば、代わってやったり大変。さもないと、行列に並ぶんが辛くて、途中でおらんようになるやつも多いから……」

丸「営業活動も大変そうですね」

U氏「昔は縁故で転売業者を探して仕事を請け負ってたけど、今では転売業者に営業メールを送るだけで、レスポンスがあるから楽。最近では中国の転売ヤーからもオファーがくるよ」

丸「店舗側はどう感じているんでしょうか? 転売目的で買いにきていると思われると売ってもらえないなんてことはないですか?」

U氏「何度も限定品を買いに行くと顔を憶えられることもあるから、ちゃんと策は講じてるよ。例えば話しかけてコミュニケーションをとったり、在庫処分品を買ったり、目こぼししてくれる立場のスタッフから商品を購入したり、売り上げがあがる上客やったら文句はいわれへんから。それも転売ヤーから経費でもらってる。身銭を切っていたら、この報酬やと合わんからね。人間関係は金を生むから……。もちろん、ヤクザやということは隠してるよ」

『シュプリーム』騒動で抽選販売に拍車

丸「今の売れ筋はなんですか?」

U氏「最近では、ニンテンドースイッチ、あつ森(あつまれどうぶつの森)、PS5なんてのは高額で転売されている。鬼滅の刃チョコはさすがにどこ探してもなかったから、断ったけど……。根強いのはバッシュやね。それもこのコロナ禍と200人余りの行列が問題になったシュプリーム事件のせいで、最近では抽選販売になってもうた。コロナでは、SNSで転売ヤーが休校でヒマな学生をバイトで集めて並ばせたり……」

丸「商売あがったりですね」

U氏「いや。意外にそうでもないねん。転売ビジネスの締め出しをしているオークションサイトがゴチャゴチャとうるさいことをいいだしたから、最近では転売ヤーは、世界最大のオークションサイトの『ebay』への乗り換えを考えているらしい。《ebay輸出》というらしいが、輸出といってもヤフーオークションやメルカリの感覚で売買することができるんやて。それにebay市場の規模は、1億8,000万人もいるというし、プレイヤー数が少ないから、商売しやすいわけ」

丸「そんなサイトが……」

U氏「それに、日本では人が少し並ぶ程度の商品でも、品質がいい日本製品は人気やし、アニメカルチャーに関しても商品価値が高い。日本のオークションとは違って、青天井で売ることができるっていうからおいしいよね。最低限の英語力は必要やけど」

ここまで転売に関して詳しいU氏。それならいっそのこと、自分が転売ヤーになればいいのではと聞くと「俺はヤクザやで。人の足元見てまで商売したくないし、転売ヤーっていうのが人のフンドシで相撲をとってるみたいで嫌いや」と答えました。

トラブルになったこともあるらしく、金払いが悪かった転売ヤーの腕をへし折った経験があるそうです。

いずれにしても、転売ヤーは年々増え続け、その規模は拡大しています。これから、転売ヤーはどんな方法で人から大金を巻き上げるのか。みなさん注意してください!

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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