ホリプロ60周年記念作品『NO CALL NO LIFE』優希美青&井上祐貴インタビュー:「誰にも真似できない純愛があります」

  by ときたたかし  Tags :  

壁井ユカコの同名小説「NO CALL NO LIFE」(角川文庫刊)を、ホリプロ60周年記念作品として実写映画化した『NO CALL NO LIFE』が公開(3月5日)になります。親からの愛情を知らずに育った主人公の女子高校生・有海と、同じ境遇の不良少年・春川が織りなす、痛いほどに切ないミステリー・ラブストーリーとなっています。

親の愛を知らず、悲しい過去を背負った女子高生・有海を、第37回ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリ受賞の優希美青さんが、そして有海と同様に親の愛を知らずに育った不良少年・春川を、連続ドラマ「ウルトラマンタイガ」で主演を務めている井上祐貴さんが、むき出しの感情で熱演しています。

その公開を前に、優希さんと井上さんへインタビュー。心に傷を背負った高校生をどう表現したのか、また、ホリプロ60周年記念作品というプレッシャーをどう乗り越えたのか、お話をうかがいました!

■ストーリー~怖いものなんて何もなかった

高校3年生の夏、携帯電話に残された過去からの留守電メッセージに導かれ、佐倉有海は学校一の問題児・春川と出会い、恋に落ちた。親の愛を受けることなく育った有海と春川。似た者同士のような2人の恋には、恐いものなんて何もないと思っていた。明日、地球に隕石が衝突して世界中の人類が滅んで2人きりになったって、困ることは何もないような気がした。無敵になった気分だった。それはあまりにも拙く刹那的で欠陥だらけの恋なのに・・・。やがて、時を越えた留守電が有海の衝撃の過去を浮かび上がらせる。一方、母親にも見捨てられ、学校でも厄介者となり、警察にまで追われる身となってしまう春川。それでも2人は一緒にいれば何かできる、何とかなると思っていたのか・・・。そんな2人には、あまりにも切ない衝撃の結末が待っていた――。

●センセーショナルな題材ですが、脚本の最初の印象は?

優希:原作より脚本を先に読みましたが、有海に感情移入して涙が止まらなくなりました。どうしてこれほどまで報われないのだろうと、トラウマを乗り越えて一緒にいたい人と出会ったのにあまりにも上手くいかないので、辛くなりました。その一方で有海のことをふと考えた時に、まったく役どころが理解できなかったんです。なので、とても難しい役だなって思いました。

井上:僕も最初は難しいという印象でした。今でも難しいと思っていますが、脚本を何度も読むうちに、難しいけれど、わかったことや共感したこともあり、いろいろな発見がある作品だなと思いました。自分の中に春川を刷り込んでいくうちに、春川という子は辛い思いをした子だなと、より深く感じました。それは演じている時も思いましたね。

●人物像については、どう解釈して演じたのですか?

優希:普通の女の子だけれど、どこか普通ではない、それが有海かなと思っていたのですが、自分の中ではどうしても理解できなくて、どうしようと思っていた時に、監督がふたりだけでお話をする機会をくださいました。その時にわたしには闇があると(笑)。「その闇の部分を上手く表に出せたら、それが有海のキャラクターとして本当にピッタリだとわたしは思っているから、普段隠している闇の部分を表に出して素でやってください。お芝居をしないでください」と、現場で何度もおっしゃったんです。

●春川については、いかがですか?

井上:春川は有海と出会って心を開く前と、開いた後での心境や感情が違うのですが、そこを上手く表現できたらと思いながらずっと演じてました。すごく繊細で難しいことなんですが、それがこの物語を観る人によって本当に捉え方が違うところでもあるので、どこでこのふたりは心をわかちあったのか、はたしてふたりは同時にわかちあったのか、どっちかが先なのか、そして最後の結末も見る人によって全然違うと思います。なので、その奥深さというものはすごく意識しました。

●これだけの役柄だと演じる上での精神的・肉体的負荷も少なくなさそうですが、それだけに成長などを感じる瞬間もあったのでは?

井上:役に対する愛が深まったような気がしています。監督が僕たちを信じてくださっていたので、基本的には任せていただいていたんです。全部を説明することは簡単ですが、監督がある程度外側だけを固めて、後は自分が感じたことを表現する。なので考える楽しさがありました。そのためには役に対する愛が要るので、愛が深まったと思いますね。

優希:自分が感じたままに演じるということは、それが合っているかどうか、作品を見て改めて考えました。作品の中のわたし私はいきいきしていました。スクリーンをとおして苦しい役をやっているのに、あの時は幸せに撮影をしていたんだろうなっていうのを、すごく感じたんです。ドキュメンタリーに近い、自然体の素でやるような芝居が好きなんだなってことにも気づいて、成長できたのではと思います。

●また、今回の共演で、お互いの「ここがすごい!」みたいな発見は?

井上:優希さんは僕にはない魅力を持った方です(笑)

優希:わたしたちは面白いくらい真逆なんです。何も一致することがないほど(笑)

井上:似ているところがないという話をよくしていました。

優希:考え方もまるで違うんです。わたしが現場で井上さんを見ていて思ったのは、真面目で勉強熱心なんですよ。事前にリサーチをして深く考えて挑み、作り上げていくタイプ。わたし私は、プライベートでも同じなのですが、どちらかというと「なんとかなる!」ってタイプなんです。現場に入って、その雰囲気でわかることもあるだろうと思っていて。。だからわからないことが不安で現場に行くということがないんですよね。

井上:そうですね。僕には無理。かなり準備しないと不安です(笑)

優希:ノリだけでいけないですよね(笑)

井上:不安で仕方がない。セリフをまったく覚えないで現場入るのと同じくらい不安です。そこだけじゃなくて、いろいろと違うんですよ。でも、自分と違うところが多かったですが、お芝居ではすごく助けていただいて、自分で想像していた以上のものが撮影中に生まれたり、感じたりすることが多くて。自分で台本を読んでいるだけじゃ生まれなかった感情などを与えていただいた、ということは終始ありました。

●さて、所属事務所の60周年記念作ということで、大変な大任でもあったと思うのですが、そこへのプレッッシャーは?

井上:かなりのプレッシャーは感じましたし、これから公開するにあたって今でも感じてますが、ずっといつまでもプレッシャーだけを感じていてもダメだなと。そのプレッシャーに負けないくらい自信を持って、撮影に挑みましたね。60周年は会社の大きな節目ですが、だからといって特別に頑張るわけではなく、役に対して真正面から向き合おうという気持ちのほうが大きかったです。

優希:もちろんすごいプレッシャーでしたし、監督、プロデューサーから、「わたしたちはこの作品に全力で人生を賭けるくらいの気持ちでやっています」と言われた時に、これは覚悟をもってやらなければと思いました。監督が、本読みの後に「わたしたちと心中するくらいの気持ちでやってください」とおっしゃったのがとても心に残っています。その言葉で、自分一人だけで背負っているわけじゃなくて全力で支えてくれる人たちがいて、みんなで一緒に頑張ろうと言ってくだ下さっている。そこで大きなプレッシャーが解けました。

●今日はありがとうございました!最後に映画を待っている方たちへメッセージをお願いいたします!

優希:この映画の魅力は、危うくて、誰にも真似できない純愛だと思います。この人とだったら地獄にまで行けるって人に出会えるって、人生でなかなかないですよね。若さゆえに恋は盲目になり、この人がいれば平気、この人とこの先ずっと一緒にいるみたいな。そういう気持ちになることは誰にでもあるのかもしれません。でも、そうじゃない、上手くいかない恋愛を経験したことは誰しもあると思うから、今同年代の方が観たら、まさにわたしの今と重なるなって感じる方もいると思いますし、大人の方が観たら懐かしいと思うかもしれません。どんな世代の方にも共感していただ頂ける映画だと思います。

井上:難しい部分もたくさんある作品だと思うのですが、10代ならではの発想や言動がすごく散りばめられていて、まずはそこを共感していただければ。自分に置き換えてというのが作品全体を通してだと難しいかもしれませんが、春川目線、有海目線で楽しんで観ていただけたらと思います。かなり苦しい思いをしたり、そしてちょっと泣けたり、擦り切れるような恋というフレーズがありますが、本当にそのとおりだなって思う作品なので、笑って見終われるかどうかわからないですが(笑)、人それぞれにいろいろな楽しみ方があると思うので、楽しんでいただきたいですね。

『NO CALL NO LIFE』
公開表記:2021年3月5日(金)テアトル新宿ほか全国公開
配給:アークエンタテインメント
(C) 2021 映画「NO CALL NO LIFE」製作委員会

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo