ヤクザが飲食店に集合→逮捕!「暴対法」「暴排条例」で地下に潜る暴力団員たち

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

今年に入ってから、暴力団関係者逮捕のニュースが後を絶ちません。

23日には、特定抗争指定暴力団『神戸山口組』系の幹部が、反社会的活動の制限がかかった“警戒区域”の岡山市の飲食店に13人が集合、食事をした疑いで逮捕されるというニュースが入ってきました。

しかも容疑は、コロナ前には抗争が一触即発状態にあった『山口組』と『神戸山口組』の活動制限がある南区の飲食店に昨年末12月25日に集まったという暴力団対策法で禁じられた多数集合違反容疑。

現代ヤクザは、集まることすら許されなくなってしまったということなのでしょうか?

今回も『ヤクザの年末年始はこうなった!コロナ禍で様変わりした迎春シノギ最前線』[リンク]で登場した実話系雑誌でライターとして活動する田中さん(仮名/46歳)にお話を伺いました。

厳しくなる「暴対法」と「暴排条例」、そのなかで地下に潜り活動を続けるヤクザたちの現状に迫ります。

ヤクザが生きづらい状況にする法律と条例

丸野(以下、丸)「暴力団対策法と暴力団排除条例は、暴力団や暴力団員の活動するための資金源を断つことが目的なんですよね?」

田中さん「そうですね。暴対法に関しては1992年3月1日、暴排条例としては2010年4月1日に施行されました。以前から都道府県ごとに公営住宅の入居制限を設けたり、組事務所開設に関しても賃貸契約を拒否したりできる条例はあったのですが、まさか複数名が集合することまで禁じられるとは思いもしませんでした

丸「一部の公共工事関係の建設業者などにも、一時期は多かったですよね。ヤクザ関係の人って

田中さん「そうですね。総会屋さんと一緒で、暴力団の意にそわないような対応をしたときには、公共工事の妨害行為をおこなったり、力を見せつけて建設業者を手なずけることは日常茶飯事でしたよ、当時は。でも、行政官庁が公共工事への参入を禁止して、暴力団が威力を発揮したときには事業契約を破棄できたり、組織からの危害には力を持ったマルボー(4課)が身を挺して助けてくれるので、ヤクザもやりにくくなって撤退している状態ですね」

丸「暴力団排除を目指す市民団体に民事訴訟支援などを行っている自治体なんかもありますよね?」

田中さん「そうですね、ヤクザが生きづらい世の中にして、暴力団への利益供与を断絶するために制定させたのが、この法律と条例です

“密接交際者”に認定されたくないからとヤクザと疎遠に

丸「罰則というか、ヤクザと親しい間柄だと大変なことになるという話も聞きましたが……

田中さん「暴力団幹部や暴力団員とゴルフを楽しんだり、食事をしたり、出張、旅行したりという交際を何度も繰り返すと、警察組織がその人物や会社に対して“密接交際者”として認定するという自治体もあります。それこそ、昔から親密だった建設業者が“密接交際者”認定されて、公共工事の入札者の中から即刻排除されることもありました

丸「商売あがったりで、いいことナシということですか……」

田中さん「その他、さらに金融機関もヤクザ締め出しに躍起です。“密接交際者”と見なされた業者が各銀行で当座預金の開設ができなくなったり、会社の運営資金の融資を断られたりと、まさに踏んだり蹴ったりです。オフィスの賃貸契約ができなくなった業者もいて、ヤクザ関係者とは疎遠になるケースが多いですね」

丸「仕方ないですよね」

警察は暴力団との絶縁を図る人のための身辺警護もはじめた

田中さん「この暴対法と暴排条例ができてから、定期的な家宅捜索を受けることになった暴力団ですが、やはりみかじめ料や事務所の貸し出しなどの便宜を図った人間まで罰せられるようになって、さらに暴力団との癒着の呪縛から抜け出す人も多くなったわけです。その最たるものが、兵庫県の露天商組合が山口組系暴力団に対して、トラブルが起こったときのためのみかじめ料を渡して、利益供与。勧告を受けて、絶縁を図りました」

丸「大丈夫なんですか? 総会屋と絶縁する企業人が危害を加えられたりした例もありますが……

田中さん「まず、警察はそういった絶縁した民間人の保護をするPO(身辺警戒員)育成を暴力団対策課ではじめ、事なきを得ています。警備業第4号警備業務に該当する民間の身辺警備員とは違い、拳銃使用もできるので反社会勢力と対峙できるわけです

フロント企業隠しや偽装破門が続発

田中さん「このように、暴力団幹部や暴力団員、それに関わる関係者の生存権すら脅かしてしまうこの暴対法と暴排条例ですから、暴力団から足抜けする人間も激増しています。さすがに、警察だけでなく、行政や金融機関、監督官庁に狙われてしまえば仕方のないことです。しかし、足抜けして暴力団員と名乗らなければ、クレジットカードが作れない、口座が持てないなどの5年間の地獄さえ耐えれば、一般人としてみなされます」

丸「5年間、どうやって生活するんですか?」

田中さん「それが、“フロント企業隠し”や“偽装破門”という裏技です

丸「はぁ……」

田中さん「本当はヤクザ稼業をやっているのに、偽装工作をするわけですね。組から“破門状”を出してもらって、フロント企業(企業舎弟)の従業員として、働かせるひと芝居を打つわけですよ。フロン企業隠しに関しては、社名変更や本店登記地の変更、取締役などの役員変更、株主変更を行うと新しい会社に生まれ変わります。偽装破門した本人は、借金でがんじがらめにした人間の名義を借りて養子縁組したり、改名したり、女房とは偽装離婚したりすれば、新しい人間に生まれ変われるわけですね」

丸「じゃ、誰が暴力団員かわからないじゃないですか?

田中さん「そう。暴力団排除の動きは、ヤクザが地下に潜って、その本性をわかりにくくしてしまうんです。おかげで、誰が暴力団員で、誰が一般人か、まったくわからずじまいになってしまいます。あなたの隣に住んでいる人が実は凶悪なヤクザだったなんてことが起こってしまうんです」

実際に田中さんは、養子縁組で名字を変えて別の人間として生まれ変わった、殺人罪で服役したこともあるヤクザに取材したことがあるそうです。

最後に田中さんは、こう締めくくりました。

「このまま暴力団への締めつけが強化され続ければ、暴力団員と名乗る人間は、義理事(冠婚葬祭や盃事)に参加する幹部数千名のみになるんじゃないですか」

(C)写真AC
※写真はイメージです

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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