「映画の固定観念を覆した」「これは危険な映画だと思う」 映画『おとなの事情 スマホをのぞいたら』益岡徹・田口浩正・淵上泰史インタビュー

  by ときたたかし  Tags :  

主演の東山紀之さんをはじめ、鈴木保奈美さん、常盤貴子さん、益岡徹さん、田口浩正さん、木南晴夏さん、淵上泰史さんという国民的豪華キャストたちが共演した注目作、映画『おとなの事情 スマホをのぞいたら』が現在公開中です。
 
本作は、イタリアのアカデミー賞で作品賞・脚本賞を受賞、世界中で驚異的な大ヒットを記録した『おとなの事情』のリメイクで、“スマホの秘密をバラし合う”世界が戦慄した大人のゲームが展開するというストーリー。その設定は、気のおけない仲間である3組の夫婦と一人の独身男の男女7人が久々に集ったパーティで、あるメンバーの提案からスマートフォンに届く電話・メールの内容を全員に公開するゲームが始まるというもの。もしも自分だったらと想像すると…という作品ですが、本作に出演・このゲームに参加した叩き上げの美容外科医・六甲隆役の益岡徹さん、法律事務所勤務のパラリーガル・園山零士役の田口浩正さん、カフェレストランの雇われ店長・向井幸治役の淵上泰史さんに話をうかがいました。

■ストーリー

ある出来事をきっかけに結びついた3組の夫婦とひとりの独身男性。彼らは年に一回集まって友情を育んでいた。ところがある参加者の発言がきっかけで「スマホに届くメールと電話のすべてを全員に公開する」ゲームを始めることに。後ろめたいことは何もないと言いながらも全員がスマホが鳴らないことを祈っている。なぜなら、そこにいる誰もが“絶対に知られたくない秘密”を抱えていたから! スマホに着信があるたびにパーティは修羅場と化していき、7人は想像もしなかった“決断”を迫られる!

●最後まで目が離せない作品でしたが、最初の脚本の印象はいかがでしたか?

淵上:僕は元の映画を観ていなかったので、脚本で内容を知って、大変そうだなと思いました(笑)

益岡:僕も映画を観ていなくて、年上という設定で、ひとつの条件でおたつくというアイデアは、読みながら面白いと思いましたよ。さりげない、なんでもない会話の積み重ねで、予想もしない窮地に陥る。最終的にこの人たちどうなるのだろう?と、非常に興味深いものはありました。

田口:非常に面白かったですね。会話だけでキャラクターが見えてくる。岡田(惠和)さんの脚本が優れていて素晴らしいなと思いましたね。

●会話が多かったので、リハーサルから大変そうです。

益岡:さりげないセリフのやりとりだから、どこが誰の部分なのか稽古しないとわからないわけですよ。舞台の立ち稽古に準じていたような感じ。

田口:セリフはプロデューサーから覚えてくださいって言われていて、撮影当時、年内までは台本を持ったままでよくて。新年開けたら(手に持っている台本を)外してくださいと言われ、外さなきゃいけないプレッシャーはありましたよね。

益岡:(セリフはその頃すでに頭の中に)入っていたじゃないですか(笑)

田口:「今日は(台本を手から)離す?離す?」って会話をしましたよね(笑)

淵上:全部先輩方が説明してくれたとおりです(笑)

●演じる上で、苦労した点はどこでしょうか?


淵上:たくさんあるのですが、冒頭のシーンでダンスをしなくちゃいけなくて。でもダンスなどしたことなかったので、東山(紀之)さんに教えてもらおうかなとも思ったのですが、そういう感じでもないので、そこは自分の中では大変なことでした。7人が集まるまでのシーンの稽古はなかったので、非常にプレッシャーでしたね。

益岡:夫婦でお互いを許すか許さないかというポイントが、かなりありますよね。突きつけられた状況といいますか、その中には割り切れないものがきっとあるんじゃないかなと。対人関係とかまずい関係の中で続いていくことはあるわけだし、そのへんは難しいというのかな?考え方が少し、考え方は変えなくちゃいけないだろうなって思いました。

田口:僕の役はみんなにこう(いじられて)やられている感じで(笑)、僕がやることにウケてもらったという印象がすごくあって。僕がやることを常盤(貴子)さんはしっかりと受け止めてくれて。東山さんにも。皆に可愛がられていた役だったなあと、今になって思う感じですね。

●ちなみにどなたかのスマホをのぞいてみたいと思うことは???


田口:あんまり見たくないですね、人のを(笑)

益岡:見ない前提があるからね。そこを覆すアイデアですよね。この映画は。

田口:前提が見ないって言ったら、元も子もないでよ(笑)。見ちゃう人もいるわけですよ。

●さて、この作品を通じて、何か気づきなどはあったでしょうか?


益岡:映画っていうものはこういうものだっていう固定概念、もしそういうものがあるならば、それを覆してくれた気がしますよね。映画って、これが映画ですって規定があるわけじゃないですよね。火薬を使った大爆破があったり、事件が起こったり、スタントがあったり、お金をかけたもの、すごい物量の映画が大作だとしても、今回のこれも映画だという感覚ですよね。それぞれの人間の心の動きを丁寧に追っていると、面白い映画になっていく。そういう発見を今回はしましたかね。

田口:コメディーって言われて読み、確かに面白かったけれど、やってみたらサスペンスだなって思ったし、ヒューマンだったり、ホラーだなっていう見え方もした。ただ笑ってはいられないという見え方まで、そういう複合的な感じの作品のような気がします。映画を観た時に、そう思いました。演じてみたら脚本の印象と違ったので、それは気づかされたことなのかな。いろいろな受け取り方がある。お客さんの嗜好にもよりますよね。

益岡:こうなるだろう、というものを上回ってくるよね。

●ジャンルでくくるのが難しい作品かもしれないですね。

田口:そうですね。そのような気がしますね。

淵上:田口さんがおっしゃっていましたけど、自分が読んだ脚本のイメージと出来上がった映画が違うのは当たり前なんですが、「ここ使ったんだ」「ここカットしたんだ」って(笑)

海外の元の作品は観ていないけど、僕もある程度切るだろうなって予測はしていました。テンポ感というか、リズム感を監督が作っていましたので。この映画はコメディーとは言っていますが、いろいろな表現方法があるんですよね。観る人の人生にどこかしら当てはまっていくところもある。怖い映画でもあるなって。夫婦、カップルが観に行くと、何かが起こるんじゃないかなって。

田口:夫婦がスマホを見せ合おうと言い出すかもしれない。

淵上:危険な映画だと思いますよ(笑)。僕は独り者ですが、フランクに観ようって誘えない。何もしらないまま観に行って……。この映画は怖いなって、ずっと思っていたんですよ。

田口:オレも嫁には見せられない(笑)!

公開中

【クレジット】
出演:東山紀之、常盤貴子、益岡徹、田口浩正、木南晴夏、淵上泰史、鈴木保奈美
監督:光野道夫
脚本:岡田惠和
製作・配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
制作プロダクション:共同テレビジョン
原作:映画 “Perfetti Sconosciuti”
©︎ Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc.
公式サイト: https://www.otonanojijo.jp/
公式twitter: @otonanojijo

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo