新型コロナウイルスの感染拡大でなかなか広範囲な旅行には行きにくい状況ではあるが、今回は乗り換えなしで目的地に直接移動し、訪ねる場所を絞りに絞っていく旅をしてみたのでレポートする。その一例として東京・新宿から乗り換えなしで行くことができるローカルなお好み焼き店「夢工房トマト」を紹介する。実質2日あればプチ観光プラス地元の人しか知らない美味しいカレーやお好み焼きを食することができるので、時間と状況が許せばプチお出かけの参考にしていただきたい。
場所は九州だ。東京のバスタ新宿から西日本鉄道が誇る日本最長距離夜行高速バスでる「はかた号」で13時間11分。北九州市八幡西区の「黒崎インター引野口」停留所で下車する。最近の高速バスは約5分で車内の空気を総入れ替えすることができる空調を完備しているし、はかた号には空気清浄機も設置してある。個室の座席もあるので感染対策が心配な方はそちらも検討すると良い。
引野口(ひきのぐち)バス停は、北九州都市高速道路に面した一般道路上のバス停で高速バスが運行され始めた1980年代にはすでに高速バス停留所では主要な地位であった。そのため、現在でもほぼすべての高速バスが停車する一大ターミナルでもある。写真は同店から高速バス停留所方向を撮影したものである。
その高速バス停留所から対角線上にある国道上の引野口バス停の裏に「夢工房トマト」がある。
プチお出かけのモデルコースは後述する。
最近リニューアルしたばかりの同店はすでに開業してから約20年を数え、地元の人たちに愛されながらお好み焼きやカレーを提供してきた。店内は10名程度しか入ることはできないが、テイクアウトにも対応しているので混雑時間帯以外であれば比較的ゆっくりと食事をとることができるだろう。
はかた号が引野口に到着するのが10時11分で同店の開店時刻は11時であるので、バス停の待合室で荷物を整えたり休息をとったりしながら待てばよい。待合室内にはトイレも自動販売機もある。また、北九州市内を散策するのであれば乗車券売り場で北九州都市圏1日フリー乗車券(800円)をあらかじめ購入しておくと後の移動が楽だ。同乗車券は北九州市内の西鉄路線バスに1日乗り放題で、路線バス車内でも購入可能だがスクラッチする手間を考えると、あらかじめ購入しておいて同店で注文している間に削ってしまうとスムーズだろう。
メニューはいたってシンプルで基本的にお好み焼きとカレーのみ。実はお好み焼き店なのに、このカレーが大人気でルーだけのテイクアウトもできる。このカレーの販路を通販市場に乗せたことがあるそうだが、あまりの注文とリピーターの多さに作るのが追い付かず寝る間もなくなってしまったことから中断するに至ったという幻のカレーでもある。現在ではここでしか食べることができないので、通販で購入したことのある方からすると幻級のカレーである。
今回記者は通常のメニューではなく、ソーシャルディスタンスの観点から貸し切りの上で開催した数名のグループによるプチパーティーを取材した。貸し切りによる宴会メニューでは大皿ではなく個人個人によるプレートにも対応する等の配慮がなされ、また通常にはないメニューが登場する。写真はその一例である。
そして鉄板に盛られた同店自慢のお好み焼きだが、パーティーのためにあらかじめ小分けされた量で、これで通常メニューの3分の1である。厚さをご覧いただければお分かりだと思うが、これの3倍の大きさがあるとかなりの食べ応えがある。
それ自体はフワフワの食感で、しかし中身のぎっちり詰まった関西系のお好み焼きだ。テーブルに鉄板はなく、すべて厨房において鉄鍋で作られてアツアツの状態で提供される。カレーとお好み焼きを同時に食べるのは無理かもしれないが、もし気に入ればブランチと夕食で立ち寄りたい。
そのためのモデルコースを紹介する。観光は門司港レトロのみを目的地とした旅程である。
なお、1日乗車券は高速バスと特急バスには乗車できないが、都市高速道路を経由する一般路線バスや特快・快速バスには乗車可能。また都市高速道路経由の路線バスは立ち席での乗車も認められているので満席でも乗車可能だ。
1日目
21:00 バスタ新宿から「はかた号」に乗車・車中泊
2日目
10:11 黒崎インター引野口に到着
11:00 ブランチ1時間「夢工房・トマト」開店時刻
12:00 1日乗車券は北九州市内の西鉄路線バスに乗り放題なので、
黒崎バスセンター・小倉砂津の2大ターミナルを経由して門司港レトロ地区へ所要約2時間
16:00 夕方になると都市高速経由の路線バスが増えるのでワープ可能
門司港レトロ 1553都市高速経由 170番 砂津行き 砂津1620着
砂津バスセンター前のチャチャタウンで1時間のお土産タイム
砂津1720 都市高速経由 快速 星ケ丘五丁目行き 引野口1754着
1900 夕食1時間「夢工房トマト」閉店時刻
1955 黒崎インター引野口から「はかた号」に乗車・車中泊
3日目
0919 バスタ新宿に到着
車中泊2回の弾丸旅行だが、1日目は夜出発で3日目は朝到着なので、金曜日の夜出発で日曜日の朝に戻る行程でれば無理に休みを取らずにかつ、宿泊費用を掛けずに楽しむことができるのではないだろうか。
もし航空機を利用するのであれば、羽田から北九州空港へ飛び、エアポートバスで黒崎インター引野口まで乗り換えなしで直接行くことも可能だ。
福岡といえばラーメンや明太子と思いがちで、福岡市をディスティネーションにしがちだが、北九州市のみに絞っても味のある旅をすることができる。状況と時間が許せば、北九州に立ち寄る際にはローカル色豊かな食べ歩きで心もお腹も満たしてみてはいかがだろうか。
※写真はすべて記者撮影