ニューヨークにはゴージャスなアパートが数多くある。それらはミッドタウン、アッパーイーストに特に集中している。トランプの物件は、トランプ・インターナショナル、トランプ・タワー、トランプ・パーク、トランプ・パレスと枚挙にいとまがない。外観も派手なら、ロビーも華やかで金キラキンしている。
↑写真のアパートは、アッパーイーストのレキシントン・アベニューにある。外観がゴージャスでもなく、質実剛健に見える古いアパートだ。しかし、この最上階に住んでいたのは、2009年詐欺・資金洗浄などの罪で150年の禁固の刑の判決を受けたバーナード・マドフの住まいだった。
この事件は、自身が興した証券会社で30年の長きに渡り、顧客をダマし続けて巨大な金額の金融詐欺事件を引き起こした事件で、被害総額は500億ドルから650億ドルあたりと言われている。こうなるともうお金の感覚に麻痺してしまうが、日本円にすると約5兆円から6兆円である。この額を知ると禁固刑150年が理解できる。
事件当初、テレビ局は各局のワゴン車を周辺に泊めて、レポーターたちが他の局のカメラに被らないようにニュース中継をしていた。
10年以上も前の事件でも、未だに人々の記憶に残り、2017年にはテレビドラマで、ロバート・デ・ニーロが犯人役のバーナード・マドフを演じた。
悪党は派手は住まいには住まず、このような慎ましいアパートに住んでいた。ただ、外観は質素だが、内装はそれはそれはゴージャスであったそうだ。写真には屋上に木が写っているが、ペントハウス住まいのマドフは屋上も所有していたので、人から見えないところにはトランプと違い、豪華に仕上げていたのだと思う。但し、その資金は顧客からだまし取った金であった。
何がこの事件で恐ろしいかというと、この人物はなんと全米証券協会NASDAQ(ナスダック)の会長であったのだ。このNASDAQにはキリンホールディングス、日産自動車、三井物産、東京海上ホールディングス、三菱電機、マキタ、ワコールホールディングス等の日本企業が上場している。
全米証券協会NASDAQ(ナスダック)の会長の肩書はこれ以上の信用はなく、顧客をダマしにダマし続けた。
ダマしにダマし続けた結実は、一生檻の中の生活。もう二度とニューヨークの街を歩くこともできない。
今週、アメリカは感謝祭、サンクスギビング・ディーを迎え、家族一同集うものだが、この時期の檻の中の生活が一番身に堪えるだろう。
マドフ、現在82歳、この時期、何を思うのだろう?