ニューヨーク市を中心に、地下鉄、鉄道、バス等の公共輸送を運営しているのがメトロポリタン・トランスポテーション・オーソリティー(Metropolitan Transportation Authority)、通称MTAである。五万人強の従業員がいる独立法人の大組織である。
MTAはこのコロナ感染で大打撃を受けた。地下鉄の利用者は激減し、今も通常時より利用者は少なく感じる。市バスは半年以上も無料で運営していた。↑写真の男性はMTA最高責任者のパトリック・フォイ氏で、先月地下鉄車内で無料のマスクを利用者に配っていた姿である。
ニューヨークは9月29日、デブラシオ市長が新型コロナ感染者をこれ以上増やさないため、マスク着用を拒否した場合、罰金を課すと発表した。公共機関を利用する際、マスク着用を拒否した際には50ドルの罰金を課すと。
残念ながら有名無実だなと思ったのは、昨日、地下鉄に乗った。マスクをしていない少年のような小柄な黒人女性が隣の車両から移ってきて、いきなりの演説を始めた。この演説風は地下鉄車内の日常茶飯事で、運行中の車内で自分がホームレスであることを語りお金をせびるのだが、その女性は演説の後に歌を歌うと言う。
その女性の野太い声と大きさは、丁度、魚河岸で競りをする男性のようで、ドア近くで私の目の前に立ち、耳をつんざくほどにうるさい。演説中に端っこに座っていたファンキーな若者が「歌わないでくれ、金はくれてやるよ、やめてくれよ、うるさいよ!」と言うと、少年風女性はプライドがあるのか、お金はもらいにいかずに「歌わなきゃお金はもらえないんだ!」なんて正義ぶる。
そもそも地下鉄車内でマスクもしていないのだから、その時点で罰金を課される立場の人ですよ。そのルール違反者はマスクなしで大声で演説の後、歌を歌い始めた。文句を言ったファンキーな若者は怒りをアピールしながら隣の車両に移った。
少年風女性の歌は上手い、確かに上手い。しかし、うるさい、本当にうるさい、日曜の朝である。このような行為は当然禁止されているのだ。
マスクもせずに、演説や歌を歌うルール違反のこの少年風女性は歌い終わって、数人の人から数ドルを稼いで隣の車両に移っていった。
隣の車両に移っても、同じ演説をしたのだろう。演説は聞こえなかったが、隣の車両から歌声はしっかり聞こえた。
この女性にお金を上げた数人は心優しいと思う。だけど、やはり違反した人を応援するのは正しいのだろうか?隣の車両の歌声を聞きつつ、この街のいつもながらの矛盾に戸惑った。
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