私がみた禁断の光景!「高層ビル窓ガラス清掃業者」に話を聞いてみた!

  by 丸野裕行  Tags :  

どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。極度で病的なほどの“高所恐怖症”です。

どのくらいひどい高所恐怖症かといいますと、鳥取県三朝三徳山投入堂に登った『ガジェット通信』ルポ記事に書いております。よろしければご覧ください。

『高所恐怖症が登るとどうなるか? 標高900メートルの超険しい霊山・三徳山』[リンク]

さて、今回取材させていただいた八代哲也さん(仮名/47歳)の職業名は「高層ビル窓ガラス清掃業者」。聞いただけで、足がすくむ思いがします。

首都圏にそびえたつ高層ビル。そこに吊られたゴンドラに乗せられ、高さ100メートル弱のビルにはめ込まれた巨大な窓を、雨だれや曇りをひとつ残らず拭き取る命がけの仕事です。あまり知られることのない裏方仕事・高層ビル窓ガラス清掃業者の仕事ぶり、そしてそこで目の当たりにしてしまったビル内の秘め事など、様々なお話をお聞きしました。

高校の先輩から声がかかり……

丸野(以下、丸)「高所での窓ガラス清掃のお仕事に就いたキッカケを教えてもらえませんか?」

八代さん「20年前のことですかね。そのときは、フリーターをやっていまして。当時は就職氷河期で、仕事がなかったので、知り合いの飲食店のアルバイトをしていました。久しぶりに、高校時代に世話になっていた先輩から電話があって、“高いところが大丈夫で、体が丈夫な友達はいないか? 仕事で人が足りない”と言われましてね。“僕じゃダメですか?”と自分を売り込んだわけです。バイトばっかりやっていても、せいぜい稼げて月に13万くらいですから」

丸「あのころは僕も大学生になったばかりでしたが、だんだんとバブルの影響が出てきた時代だったと思います」

八代さん「学も手に職もないし、チャンスがあればどこかにしがみつこうと思ってました。でも、まさか高層ビルの窓清掃の仕事だとは、そのとき思いもしませんでしたね」

集合場所に行くと地上100メートル、40階建てのビルがそびえる

八代さん「それから翌朝7時に集合場所だった丸の内の高層ビルへ向かいました。ビル関係者だけが立ち入れる清掃員の事務所が1階フロアにあるんですよ。管理室と併設になっていて、窓なんてない、かなり小さな事務所です。そこに、作業着と清掃道具が用意されていて……。そのまま作業着に着替えて、すぐに作業に入りました」

丸「ええっ、安全に関する講習会とか研修とかないんですか? 普通、警備員さんとかいろいろあるじゃないですか?

八代さん「いや、なかったですね。一応、安全意識を高めるための室内にある貼り紙に書かれた《安全確認十訓》を確認したり、「指差し呼称は大きな声で!」や「ムダなく、1箇所1箇所確実に!」「焦らず、慌てず、指示を待つ!」という唱和を外装部スタッフみんなで行いますよ

丸「ですよね」

八代さん「でも、基本的には新人教育もなく、先輩の身内という扱いでそのまま現場入りです。さすがに初っ端から、いきなりゴンドラに乗せられるようなことはなく、《頭上注意》の看板を黒と黄色の通称・トラロープでつないで、ただ立ち尽くしているだけの地上監視からはじまりました。人が通ると、“すいません、こちらをお通りください”っていうだけのヒマな仕事です」

恐怖の高所作業開始

丸「やっぱりこの業界は人手不足なんでしょうか?」

八代さん「そうですね、離職率は高いと思います。熟練したベテラン清掃員だけが残る世界ですね。いくら高いところが好きな人でも、強い風に吹かれると体力を奪われますし、緊張感がずっと続いているでしょ? 高所好きだからって務まるものじゃないんですよ。やっぱり危険な作業なので、ムダな動きが多いと命を落とします

丸「入社して何日ぐらいで高所作業に回されましたか?

八代さん「そうですね、5日くらいですかね。入社3日目は風が強すぎて、作業中止になりました。安全ベルトのフックをしっかりとひっかけて、極太のワイヤーに吊られたゴンドラに屋上から飛び乗ります。いや、地上100メートルなんてビル、丸の内ではザラですが、いややっぱり恐ろしいですよ、ホントに。下をみると、人は豆粒よりも小さいし、車はミニカー以下でしょ? 金玉の裏がヒヤヒヤして、冷や汗が全身から吹き出てくる、さらに吸い込まれてもいいような錯覚にたびたび陥るんですよね。ふとした瞬間にすごく怖くなる。先輩からは、“最後まで気を確かに持て!”と言われました」

「作業的には、まずビルの屋上にある水道の水を数個のバケツに入れ、ゴンドラに積み込みます。それから、中性洗剤に浸した窓清掃用モップで清掃箇所のガラス汚れを落とし、スクイジー(ゴミ製の水切りワイパー)で残る水滴をキレイに落とします。それからは雑巾で仕上げるんですが、この作業を“かっぱぎ”といいます

数ヵ月の勤務経験がないとできないロープ作業

丸「ほほう。1日でどのくらい作業が進みます?」

八代さん「1箇所ずつ清掃計画通りに、着実に人の手で窓掃除をしていくので、1日でできる作業は5~6フロアですかね。風に吹かれると、ゴンドラが安定しなくて、“かっぱぎ”をするときなんて、ホントに恐ろしいですよ」

丸「何度か、チビってしまったことなんてありますか?」

八代さん「さすがに安定したゴンドラではそれはないです(笑)。でも、10階建て未満の小規模ビルなんかだとゴンドラが使えないので、屋上の専用ループから垂らしたワイヤー入りのロープにぶら下がって、初作業したときには、正直チビりましたね。先輩たちは器用にスパイダーマンよろしく右往左往して、外の幅数センチの窓枠につま先だけひっかけて、“かっぱぎ”をしているんですが、ロープの扱い方ひとつ、安全装置の取り扱い、降下の仕方まで、うまくできない。肛門が緩くなって、大きい方も漏らしました(笑)

朝イチから不倫カップルの情事、自殺現場etc……

丸「なにか、見てはいけないような光景を目の当たりにすることもあるそうですね?

八代さん「そうですね。天気がよければ早朝から作業を開始するんですけど、朝イチで就業時間前に、男女が抱き合って、ヒドいときには行為に耽っているところをみたことがあります。それも東証一部上場の大企業の人だから、もうびっくりですよ。だいたいはこちらが見ていると収まるんですが、わざと行為を見せつけてくる輩もいて、目のやり場に困りますね

丸「僕なら喜んで見ちゃいますけど(笑)。 ほかには?

八代さん「大きな高層ビルになると、ゴンドラも大き目の親機と子機に分かれるんですが、親機に乗って作業していたときに、子機の縁に落ちてきたなにが「ゴーン!」って当たったんですよ。それから、地面で「パン!」て音がして……。自殺です。飛び降りたときに、手が子機の手すりに当たって、そのまま落下していったんですね。下を覗くと、マリオネットの人形みたいになった人影が小さく確認できました。衝撃で子機のワイヤーが切れないでよかったと、胸を撫でおろしましたよ」

丸「それ、すごいですね」

八代さん「本当に目のやり場に困ったこともありましたよ。社長室みたいなところで、いかにも偉い感じの60代くらいの男が、男性社員の服を脱がしているところにも出くわしました。嫌がりながらパンツを脱ぐ社員さんの隣で、社長らしき男がすごくはしゃいでいるんです。ゲイ社長、と仲間内で笑い話にしていましたが、もう訳がわかりませんね」

丸「(爆笑)よくその場で吹き出しませんでしたね

まるで『半沢直樹』! 検察に会社の不正を内部告発

八代さん「とっておきなのは、会社の不正を内部告白する社員を見かけたときですかね。数日間張りつく常駐現場だったので、なにかをやっているということには気がつきました。会社の役員がやってくるまでの早朝、重役室をひっくり返している若い社員たちがいたんです。まるで人気ドラマの『半沢直樹』みたいでしたよ

丸「ほほう!」

八代さん「携帯電話で話しながら、必死になってなにかの書類を探しているんですよね。こっちから見てると、会社の偉いさんが出社してくるのがわかる。内情のことはわからないけど、思わず窓を叩いちゃいましたよ

丸「すごいな、それ」

八代さん「その後にその会社では内部告発があって、検察が家宅捜索に入っている映像がニュースに流れました。公共工事系の不正があったみたいですね。あのときは興奮しましたよ」

八代さんは、今年高層ビル清掃外装部の部長に昇進するそうです。地道な努力で掴んだ、誰にもマネできない高い技術力。八代さんには、これからも都会にそびえたつ高層ビルの窓ガラスを磨き続けていただきたいものです。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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