「ブルースが、彼の曲が主人公を救う」伝説の“ツアマネ”ウドー音楽事務所の高橋辰雄氏が『カセットテープ・ダイアリーズ』とブルース・スプリングスティーンを語る!

  by ときたたかし  Tags :  

1987年のイギリスを舞台に、パキスタン移民の少年がブルース・スプリングスティーンの音楽に影響を受けながら成長していく姿を爽やかに描いた青春音楽ドラマ、『カセットテープ・ダイアリーズ』が公開中です。原作は、パキスタンに生まれ、現在は英国でジャーナリストとして活躍し、自身もブルース・スプリングスティーンの大ファンであるサルフランズ・マンズールの回顧録です。今回、ブルース・スプリングスティーンと一緒に仕事をしたこともある伝説のツアマネ、ウドー音楽事務所の高橋辰雄氏が本作を緊急鑑賞!ブルース・スプリングスティーンのロック、そして本人の人柄を知る高橋氏は、未来に希望を抱ける本作をどう観たのか!?ブルース・スプリングスティーンとの思い出を交え、話をうかがいました。

▼映画『カセットテープ・ダイアリーズ』予告編▼

●ブルース・スプリングスティーンが来日した際に、ツアーマネージャーとして一緒にお仕事をされていたわけですよね?

そうですね。僕自身は彼と2回しか仕事をしていないですが、彼はボスと呼ばれ、みんなに慕われている存在でした。音楽業界で40数年、ある意味で世界的に影響を与えた、与えているアーティストですよね。

彼はいつもさまざまなランキングで50番以内に入っている人なんです。ボーカリスト、影響を与えた人、素晴らしい人間ですよね。

●当時、緊張はしましたか?

しましたよ(笑)。超大物で、僕も当時業界に入って10年足らずだったので、ちょうど僕の中でもいろいろなことがわかり始めた時期でしたから。当時はまず呼びましょう、それからみたいなイケイケなムードもありましたけれど、現実的な受け入れ体制の部分での課題もあったのでプレッシャーでした。

●どういうお人なのですか?

自己顕示欲がそれほどないみたいで、アーティスト特有の「Me,Me!」がまったくない。中には逆に勘違いして、「Me,Me!」って言ったほうがいいと思っているアーティストもいますけどね(笑)。でも彼は一切ない。控えめで、人格者です。彼を知っている人は、みな一様にそう言うでしょう。自己主張をするってことは自分に自信がないからしているわけであって、ブルースは周囲から認められているから周囲がそれなりに対応しちゃいますよ。

●だから映画の題材にもなるわけですよね!

そうですね。映画を観ていて主人公が立ち上がるわけですが、ブルースを知っているので、そうなるだろうなって思いました。主人公もピュアでしたね。移民の人で、当時のイギリスの状況が状況だったわけですよね。彼が陥っている環境をブルースの曲が自由にしてくれたというか、家族の関係もあったけれど、ブルースが、彼の曲が主人公を救う。

●最近、音楽系の伝記映画が多かったのですが、これはまた一線を画す魅力にあふれていました。

これはクィーンの映画と比較されるかもですが、あれは映画として面白いけれども、基本的にはエンタメ、娯楽作品ですよね。クィーンを知らなかった人には面白いでしょうし、以前から知ってる人には「ですよね」で終わってしまう。でもこの映画はそうではなくて、もう1回観たいなとか、単なるエンターテインメントだけではなくて、青春映画としてストーリー、脚本も面白いし、当時のファッション、時代背景も面白い。もう1回浸ってみたいなと思う。そう思うってことは、それだけピュアな青春時代が描かれ、大変だっただろうけれど、共感することも多いわけですよね。

身近な話題というか、自分の知らない文化や環境設定があるけれど、だからエンタメというか、当時のイギリスのことも含めて歴史書みたいなもの。映画の演出が素晴らしいということだけではなくて、脚本の素晴らしさ、映像と音楽がマッチングしている素晴らしさがある。この映画の中には学ぶものが非常にあります。ブルース・スプリングスティーンという題材は、非常にぴったりだったと思いますね。

●無関係の若者のストーリーという着想も面白かったです。

ビッグバンドのサクセスストーリーであれば、娯楽作として成立したかも知れないですよね。ジェフ・ベックストーリー、エリック・クラプトンストーリーとかね。大物ギタリストのストーリーはいいかも知れない。自叙伝的なことですよね。これはただシンプルに、ブルースの音楽の影響を受けた人の話。でもそれでサクセスしていくと。そういう映画なわけです。

ただ、時代性もあったとは思うんです。当時のイギリスにパキスタンの移民として入って来て、劣等感を感じながら生きていかなくてはいけない。その劣等感の中で跳ね返していく原動力が音楽。それがブルースだったということ。その人自体の影響力がすごいですよね。だからみんな彼のことをボスと呼んでいるんですよね。本当に尊敬する人ですよ。

●最近はお会いに?

おととしのNYのブロードウェイを観に行きました。この時はあえて連絡せず、席が空いていればいいなあくらいでしたが、ダメでしたね(笑)。三日間しかいなかったので、三日間とも売り切れで買えませんでした。2,000弱の客席で半年間以上やっていましたよね。

●今日はありがとうございました!最後にメッセージをお願いします!

よく世間で言っているノーミュージック、ノーライフじゃないけれども、僕は食べものに近いような感覚で音楽を聴いてます。精神的・内面的な食べものですよね。はるか昔から音楽はあったもので、僕たちの生活の一部にもなっている。そこから生き方のヒントになったり、ビジネスの方向性を決めたり、音楽は人生で重要役割を果たしています。それこそ今回のこの主人公みたいにね。映画を観れば、何か感じるものがあるでしょう。

公開中

配給:ポニーキャニオン
cassette-diary.jp
(C) BIF Bruce Limited 2019

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo