ニューヨークは変な人が多いと思う。こういう言い方は偏見と受け止められがちだが、それはニューヨーク愛だと思っていただきたい。例えば、大阪出身の方が「大阪人ってちょっと変ちゃう?」と大阪愛をこめて言うのと似てる感じかしらん。
野暮用があり、スタテン島というマンハッタンからフェリーで25分くらいで行ける島に行ってきたんです。島と言っても普通に生活している人がいて、ニューヨークシティーとはマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、そしてこのスタテン島の五つの地区から成り立っているから、島と言えども立派なシティーなんですね。
写真はそのスタテン島からマンハッタンを撮影、多少ズームアップしてますが、フェリーで25分の距離とはこの位なのです。
さて、フェリー乗り場も美しく快適で、平均して1時間に2往復するスケジュールで、大理石風椅子がいくつもあり、ゆとりをもってフェリー待ちができるようになっているんです。隣の席に白人女性が座りました。紙袋の中に顔をツッコミ何やら匂っている動作を繰り返す、ああ、変な人!!
話しかけられたくないけど、その動作から変わった人なのできっと話しかけられるだろうと思うと、ほぉら、話しかけられてしまいました。
「イーベイで買ったんだけど、このバッグ、革の匂いするかしら?ニセモノつかまされたかしら、革の匂いがしない気がするんだけど、私はちょっとアレルギーがあるんだけど、あなた、匂ってくださらないかしら?」
そ~きたか。この中年女性、態度もおかしければ声もチトおかしかったです。甲高い変な声と言っては失礼ですが、実に耳障り。私が困った顔をして戸惑っていると……
「そうよね、コロナウイルスもあるから匂いたくはないわよね」と言うので、私は嘘も方便と「私もアレルギー持ちなんです」とお茶を濁したんです。
中年女性は私の隣に座っていた女性にまで、声をかけて同じことを言って、更に説明を加えて「娘の誕生日プレゼントに買ったんだけど、革の匂いがしないんですよね。売り手は前のボーイフレンドからもらったとか言っていて、住んでいる所もいいところだから偽物を掴ますことはないと思うんですけど…」と話しているんです。私自身イーベイでモノを買ったことがないので、売り手と買い手でそんなことまで分かり合えること自体が不思議!
私の隣の親切なちょっと訛りのある女性は、私の視界には入ってなかったのですが、どうやら紙袋に顔を突っ込んで革の匂いを嗅いであげているよう、なんとも親切と言えば親切だが、ニューヨークに於いては『ちょっと危ないなぁ…』と感じる人にはかかわらない方が圧倒的にいいんです。
そのイーベイで娘のためにバッグを買った女性は危険人物ではなかったけど、それにしてもマスクをして、ソーシャルディスタンスを保ちましょう!と言われている風潮で、全くの他人に近寄ってマスクを外して自分が買ったバッグが革の匂いがするかを試して欲しいなんていいますか、マトモな人は?
変な人がいるものだと往路のフェリー乗り場で思い、帰路はフェリーでとんぼ返りのマンハッタンに戻りバスに乗ると、今、ニューヨークのバスは、コロナの危機的状況でなぜか無料で乗車でき、それはありがたいのですが、困った事にホームレスの方々がよく利用され、時に悪臭を振りまいたり、悪い態度で乗車されることもあり、結構、困惑することも多いのです。
ああ、実にイヤな光景に出くわしてしまったんです。
先ず、変な… イヤ、こういう書き方が本来はいけないのでしょうが、変な男の人が乗車してきたのです。アメリカインディアン風の方で、長い髪をいくつも三つ編みにしている。一触即発でトラブルを起こしそうな雰囲気がバンバン出ていて、私の前に座りそうになり『いやだな…』と思ったら、一つ間隔をあけた前に座ってくれて、ほっ!ニューヨークも長いと、だいたいトラブルを起こしそうな人って、すぐわかっちゃうんですね。
三つ編みの男性はとりたて普通にしていらっしゃいましたよ。しかし、途中で本当にホームレスというより、乞食さんと言うような黒人で歯が抜けて、汚い恰好をした小柄の人が乗ってきたんですよ。三つ編みの男性の前に座ったら、三つ編みの男性が『うぅ~』と意識してイヤそうな声を出して、後ろの席に移動したんです。それをきっかけに周りにいた人たち数人が一斉に三つ編みさんに追従したんですね。
私? 私は移動しなかった。その黒人のホームレスさんに寄り添おうと思った… イヤ、嫌がって席を変わるって失礼ですよ。大人しく座っていれば、害は及ばされないのはわかっていたから、私だけが残ったわけなんですね。
そしたら黒人のホームレスさんが、野太いつんざくような大声で「なんだ、お前、プエルトリコか?」って後ろに移動した三つ編みの男性に対して嘲笑的に言ったんですよ。差別ってされる側は、差別をするんですね。黒人と差別された場合、黒人はお前だってプエルトリコじゃないか!と。三つ編みさんは何系だかわかりませんが、アメリカでこの国籍の諍いはもう致命傷!
小柄黒人ホームレスさんは「白人のホモセクシャルは最低だ!」や「お前らも最低だ!」と三つ編みさんから矛先を変えました。しかし、その声の大きさ!ちょっと恐怖ですよ、それに私は中国人にも見えるから「中国人!コロナ!」とか言われるだろうか?
でも、実はその心配はなし!黒人男性がバスに乗り込み着席したとたんに、私を除く人たちは皆、席を移動しましたが、私はしなかったので私には攻撃しない確信はあったのですね。
私に被害は及ばなくても、しかし、まぁうるさい!バス停に泊まった時、若い黒人運転士が、穏やかな感じで黒人ホームレスさんに近づいて「ちょっと声抑えてもらっていいですか?」と言うと、更に切れてしまったホームレスさん。
私には背後の乗客は全く見えなかったのですが、それでもまだ三つ編み男性と黒人ホームレスの間で、聞くに堪えない攻防戦が繰り広げられていたのですが、いきなり三つ編み男性が前にやってきて、黒人ホームレスを蹴ったのです。本気と言うより椅子を蹴ったようにみえましたが、それにしても、もしどちらかがナイフでも持っていたら、そこで血の海になることも想定できそうなヤバい空気でした。
後方の声だけ聞こえる乗客が「落ち着いて、落ち着いて!」と言っていたので、三つ編み男性席に戻りました。
それから三つ編み男性が降車していきましたが、降車するとこの黒人ホームレスさん、勢いづいてまだ悪あがきしているのです。私のバス停も近づいているので、ちょっと早めでも下車することにしました。
これ誰が悪いか?って言うと、三つ編み男性なんですね。バスに乗ってきた時から変な人って思っていたので、それは当たりでしたが、ホームレスの黒人男性が目の前に座ったからと言って、わざとイヤそうな声を出して席を変わるなんて、そりゃ失礼ですよ。周りの人たちも同じように後ろの席へ移動するのは、私には耐えられなかったなぁ….
黒人のホームレスさんも問題を起こす人ですよ、きっと。でも、タチの悪さで言ったら三つ編みの男性。だいたい、年老いた小柄の酒の匂いをプンプンさせている人を、椅子であっても蹴りはしないでしょう?そんな弱い人に強く出てどうする?卑屈な奴め!
黒人を侮蔑する『二ガー』を言って、自分が優位に立っているとでも思っているのでしょうか?言った時点でそいつの負け。
改めて人を馬鹿にすることの愚かさ。だいたい、賢い人、優しい人は人の気持ちを害する言動をしませんよ。
ニューヨークのイヤな面を今日は久しぶりに体感してしまったなぁ。