リンカーンがヴァンパイアハンター? そんなことあっていいんだろうか……。そんな不穏な雰囲気とは裏腹にワクワクしてこないだろうか。
この映画は、リンカーンが直面する真実をダイナミックに描いている。全ての始まりはリンカーンの母がヴァンパイアに命を奪われたことだった。リンカーンはハンターになることを決意。復讐に成功したものの、恐るべき真実を知ることになる。それは、奴隷制度の裏側はヴァンパイアたちが“食料”を得る格好の場だということ。それを知ったリンカーンはヴァンパイアが仕掛けた南北戦争に北軍の最高司令官として立ち向かう。エンディングテーマを歌うのはリンキン・パークだ。彼らの曲が見終わった後の余韻をさらに盛り上げてくれるだろう。
映画『リンカーン / 秘密の書』はエイブラハム・リンカーンのイメージをくつがえす。リンカーンといえば「人民の人民による人民のための政治」の言葉であまりにも有名だ。南北戦争で戦い、奴隷制に反対した“正統派の英雄”。しかしこの映画ではオノを振り回し、ヴァンパイアの首をはねるという何とも暴力的で残忍な“顔”を見せる。善人のイメージからかけ離れ、血しぶきを浴びるリンカーンを想像できるだろうか。
けれどリンカーンがヒーローになることは極端な話ではない。アメリカ国内では人気があり親しまれている大統領であり、偉大な人物。そのためヒーロー扱いされやすいのだ。そしてヒーローにはギャップが必要だ。運の悪いアナログオヤジヒーロー、ジョン・マクレーン(映画『ダイ・ハード』シリーズ)、女好き金持ち社長ヒーロー、トニー・スターク(映画『アイアンマン』シリーズ)などヒーローとは似つかわしくない特徴がよりヒーローらしくするのである。
製作はティム・バートン(映画『チャーリーとチョコレート工場』『アリス・イン・ワンダーランド』)、監督はティムール・ベクマンベトフだ。監督は映画『ウォンテッド』で有名になった。この映画はとにかく爽快でクレイジー。ハンドガンから放たれた銃弾の弾道はありえない曲線を描き、車を回転させながらターゲットを暗殺。この『リンカーン / 秘密の書』も相当のアクションシーンが期待できる。
けれど案外“女子向け”なのではないか。ヴァンパイアが絡む映画や海外ドラマは多い。透けるような白い肌、黒い服、赤い血のイメージ。しかし、本能で人間の血液を求めても繊細な感性を持ち、姿は人間と同じ。時には“愛”を与え、時には“脅威”を与える存在。なんかこの人間とヴァンパイアの関係性って“恋愛”に似てる、と思ってしまう。
リンカーン役はベンジャミン・ウォーカー(映画『父親たちの星条旗』に出演)、最強のヴァンパイアであるアダム役はルーファス・シーウェル(映画『ホリデイ』に出演)。”ハンターとヴァンパイア”の関係性や、俳優のイケメンさなど乙女をドキドキさせる要素満載だ。
秋深まる頃、スリルを求めて映画館に足を運ぶことをオススメする。
<公開情報>
映画『リンカーン / 秘密の書』
2012年11月1日(木)からよりTOHOシネマズ、日劇ほか全国公開。3D/2D同時公開。
配給 20世紀フォックス映画
公式サイト http://www.foxmovies.jp/lincoln3D/
※画像クレジット (C)2012 Twentieth Century Fox