輸入禁止〇〇から命の水までなんでも運ぶ「バイク便」の“裏”仕事!

  by 丸野裕行  Tags :  

どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。

急を要する商談や会議などが日常茶飯事の一般企業や1分1秒が命の新聞社や出版社、テレビなどのマスコミ業界。このようなビジネスを支えるのがバイク便の仕事です。

要するに依頼を受けた企業や個人から、一刻も早く目的地に荷物を届けるというものですが、大切なのはなんといってもフットワークの軽さです。さらに運転技術や要領の良さ、柔軟性、最後にが物を言うこの仕事。

しかしバイク便も近年では都市部で業者がダンピング合戦をはじめ、さらにデータですべてを送ってしまうデジタル化の波もおしよせ、この商売は衰退の一途を辿っています。

しかし、今回話聞けたバイク便業者の五島雅和さん(仮名/37歳)は、自分が所属する会社からの給料と一緒に会社にナイショで受けている報酬があると言います。

果たして、そのナイショで受ける裏仕事とは一体どんなものなのでしょうか?

完全歩合の委託業務が常識

丸野(以下、丸)「バイク便の業界について教えていただけますか?」

五島さん「バイク好きの僕が入社したのは中堅バイク便会社だったんですが、社員はみんなチームワークが苦手という連中が多い印象がありますね。やっぱり個人プレーを重要視しているので、仕事としてはピッタリだと思います。僕が入社したのが15年ほど前だったので、業界も上向き傾向でした。勤務時間帯は、朝8時半~21時までのフル稼働が基本で、感染業務請負です。もちろん営業は会社側がやってくれて、依頼があると携帯電話の方に入電があります。やったらやった分だけ、稼げるというのも魅力でした

丸「研修みたいなのはないんですか?」

五島さん「もちろんありますよ。運転技術が危険ではないかを見られたり、接客の仕方など事細かに指示されます。最終日は先輩に同行して、同行研修を受けますね。新人教育は3日ですね。日当も半額もらえますし、それから社用車を借りての実稼働になります。2キロまでは1キロ1,600円。それからタクシーのように料金が20%ずつ上がっていきます。売り上げは会社側と折半。ぶっちゃけて言えば、ライダーは走れるだけ走らないと稼げません。運び終えたとしても、次の荷物を待っている時間などはすごくムダなんですよね

丸「ということは、結構飛ばすから大変ですね」

五島さん「自分でタイムを計って、そこいらのカーナビよりも無数の地図データを頭の中に叩き込んで、常にフルスロットル状態です。グーグルマップ以上に頭の中で近道を検索できるので、何度も何度も天敵の白バイを振り切りました。車止めがある団地やマンションに飛び込めば、デカい図体の白バイは入ってこれません。巻き込みなどのもらい事故には神経を尖らせて、一刻も早く荷物を運ぶことに固執します。それで、“君に頼むと早いね~”とお客様に喜んでもらい、指名される仕事が激増しましたね。そこには料金以外にチップまで発生します。大体2ヵ月ほどで月収20万円ほどになり、やっとなんとか生活できるようになりました」

会社を通さないキナ臭い依頼

丸「なにをキッカケに裏仕事をしはじめたんですか?

五島さん「1年ほど経って月収が30万円くらいになったとき、研修係だった先輩社員に“おまえ、副業やってんのか?”と聞かれて……。“それってなんですか?”と尋ねると、“取っ払いの裏営業よ”と副業のことを教えてもらいました。確かに依頼を受けても、なにやら怪しげな荷物もあったんですよね。拳銃の先端がちょっと見えている1羽の鶏肉とか、塩と書かれた白い粉がぎっしり詰まっている箱とか」

丸「それ、マズい荷物ですよね

五島さん「見てみぬフリですよ、そりゃ。でも、所詮は善意の第三者ですから問題はないんですけどね。いわば合法的な運び屋です。で、先輩が“人手が足りないから紹介してやるよ。おまえも稼げって。ウチの松井なんかは裏で月120万くらい稼いでるぞ”。マジで! ってなりますよね。それからは、怪しげな貿易会社に呼び出され、金無垢の時計にダブルのスーツを着たヤクザのフロント企業の社長を紹介されました。“明日の夜に浦安の港へ来い”って言われて……

丸「なにがあったんですか?」

輸入禁止〇〇の配達に着手

五島さん「行ってみると、大きなコンテナがおびただしく重なる中で、男たちが蠢いていたんです。なにをやってるのかわからなかったんですが、動物が入ったカゴを両手に持ってたんです。“なんですか、これ?”と聞くと“密輸してきたスローロリスの赤ん坊や。ええ金になるんや。この住所に届けてくれ”と紙切れを渡されて……。で、板橋と赤羽、歌舞伎町に一匹ずつ届けましたね

※スローロリス:ベトナムやマレー半島を中心に繁殖するサル。ペット需要が高い絶滅危惧種でもある

丸「ペットショップかなにかですか?」

五島さん「いえ、民家でしたね。何人か外国人がいました。これで、輸入禁止されている動物を運んだわけです。それで、3軒で15万円もらえました。そこから、インドホシガメやハミルトンガメなどを納品しましたね」

「裏じゃない!」驚きのクレーム

丸「他にはどんなものを運びましたか?」

五島さん「裏DVDですね。当時全盛で依頼が多かったですよ。早く持って来いとなるみたいで、発送が待てないんでしょう。一度深夜にヤクザの事務所に持って行ったことがあって、お届け先のヤクザが“これ、今確認したら、裏違うやないけ! ナメてんのか!”と包丁を突きつけられたことがありました。あれは怖かったですね」

丸「割に合わないじゃないですか、それ

五島さん「僕は配達業者なので……ということで、ビデオ販売している会社へ案内して、そのあとはどうなったのか知りません。あとは、新興宗教が販売している『命の水』というのを運んだことがありますね。教祖の体を清めた水らしく、それを病院に届けたんですけど、病床に伏して、命を落としかけているおじいさんが狂ったようにガブ飲みしていました。“おじいちゃん、1リットル20万円するお水だから、これでもう大丈夫よ!”って娘らしき人が言っていて、号泣していましたね」

丸「うえっ」

他にも五島さんは、クスリをやりすぎてオーバードースで心臓が止まった女性を、蘇生させることができるという彫師の元へ運んだこともあるらしいです。

涙ぐましい努力の末に、副業で150万円の報酬が得られるようになったそうですが、こんなに危険な目に遭っていて、その報酬が高いのか安いのか、僕には正直わかりません。

(C)写真AC
※写真はイメージです

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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