どうもライターの丸野裕行です。
僕は映画が大好きです。好きが高じて、自分で映画製作に手を出し、原作と脚本、プロデューサーを務めたのですが、もうねぇ本当に大変! 死ぬ思いをしました。
その映画はなんとか公開にこぎつけ、インディーズ作品でありながらキャストも豪華だったために東映ビデオさんからDVDとして発売までされました。
しかし、世の中には様々な諸事情で完成しない、公開できないという“お蔵入り映画”というものが数多く存在します。
今でも映画のフィルム現像所には、「引き取り手がいない」「完成後に公開されるはずだった作品」が数百本倉庫に眠っていると言われています。
今回は、そんな日の目を見ない“お蔵入り映画”を7本ご紹介したいと思います!
豪華キャストの大作まで“お蔵入り”
『ガキ帝国悪たれ戦争』(1981)
監督:井筒和幸 脚本:西岡琢也
出演:豪田遊、北野誠、清水昭博、鶴田忍、島田紳助、松本竜介など
舞台は大阪のベッドタウン。佐々木良一は親友の兄経営のハンバーガーショップのバイトやケンカに明け暮れていた。ある日風俗店を訪れた良一と親友は風俗嬢と揉め、用心棒にボコボコにされる。性欲を持て余した親友は兄の嫁を暴行し、少年院へ……。
首を吊って自殺した親友の無念を晴らそうと、逆恨みした良一は兄嫁を襲撃し、少年院へ送致。塀の外へと戻った良一は、以前リンチされた用心棒に“女を一人ソープに沈めろ”と迫られて、やっとできた恋人を差し出す。しかし、彼女は暴力団組長の姪だった……。
劇中で主人公が「この店のハンバーガーは猫の肉や!」と叫んだことにより、企業側の抗議を受けて公開が中止されてしまったというこの作品ですが、前作が非常に面白かったので人の目に触れないというのは非常に残念です。
『ええじゃないか、ニッポン気仙沼伝説』(2006)
監督:小林政広 脚本:藤村麿実也、小林政広
出演:鈴木京香、杉本哲太、鈴木一真、岸部一徳、倍賞美津子など
考古学に熱中している主人公と幼馴染みである考古学者が、気仙沼の港町を舞台に縦横無尽に駆け巡る恋と冒険のラブコメディ。
潤沢な制作費などが用意されていたにも関わらず、製作する会社の倒産やM&Aなどの吸収合併が相次いでしまい、映画の権利が宙に浮くという現象に陥った作品として有名です。
『朽ちた手押し車』(1984)
監督・脚本:島宏
出演:三國連太郎、田村高廣、長山藍子、初井言榮など
新潟県親不知の漁村を舞台に、認知症を患う老父と難病の老母の介護と安楽死を描いたテーマに配給会社に敬遠された問題作。
そのリアルな老父の認知症の症状と重いテーマである安楽死の物語を、監督である島宏自身が執筆。湿っぽい雰囲気にさらに救いのなさを増長させています。
さらに、2時間16分という長尺が、上映しにくいと判断されたものと思われますね。
やはり資金集めが大変
『こおろぎ』(2006)
監督:青山真治 脚本:岩松了
出演:鈴木京香、安藤政信、伊藤歩、山崎努など
2006年の重要作ながら、海外での映画祭や一部の特殊上映以外は、上映されることもなくお蔵入りという憂き目に遭ってしまった作品。こちらも『ええじゃないか、ニッポン気仙沼伝説』に続いて、主演が鈴木京香。
静岡県伊豆を舞台に、若くなくなった女が盲目で口のきけない老人を飼うというストーリーで、こちらもおどろおどろしいです。謎の女・鈴木京香と音をたてながらチキンなどを貪り食う気持ちの悪さ満開の山崎努。海外で評価の高い青山真治の監督作品史上、最も具体性と抽象性が共存している一作になっています。
『THWAY 血の絆』(2003)
監督・脚本:千野皓司
出演:麻生あかり、チョウトウ、ミョウタンダートン、永島敏行ほか
異国の地・ミャンマーを舞台に、日本人である姉が、太平洋戦争にインパール作戦に徴用された父とビルマ人女性の間に生まれた異母弟を捜すという愛と感動を呼ぶストーリー。
企画から14年、様々な苦労を乗り越え、やっと完成した日本・ミャンマー合作の作品。しかしながら、3億5,000万円の膨大な製作費に対し、配給宣伝費(P&A費)が用意できず未公開になっています。
『ニート選挙』(2015)
監督:鈴木公成、沖田光 脚本:鈴木公成
出演:笠原賢人ほか
本物のニートだった鈴木公成が実際に市議会議員選挙に立候補した経験を基にして、自ら企画して作りあげた作品。自身の立候補経験を世の若者に伝えて、投票率の向上や立候補の促進に繋げようと考えたことで製作することになった。
ネットで製作協力者を募ったところ、元映画プロデューサーや映像関係者、テレビ関係者、脚本家などプロが集まり、ニート団体までもが協力することになったが、資金がなく、監督や制作会社がみつかりませんでした。300万円の資金ができ、監督が決まったことで、各メディアで取り上げられるようになり、やっと制作。その後は、ニコニコ生放送で公開され、その後賞レースに応募されました。
『ふうけもん』(2008)
監督:栗山富夫 脚本:国分洋、栗山富夫
出演:中村雅俊、浅野ゆう子、中村玉緒、竹中直人、笹野高史、哀川翔ほか
元祖便利屋の右近勝吉をモデルにした実話に基づいた作品。裏社会に生きていた主人公が世の中に役立つ便利屋をはじめる。タイトルである“ふうけもん”は、佐賀の言葉で、馬鹿者や怠け者、頑固者の意味がある。家族や友情、信頼など根源的なテーマを描いています。
2009年1月にお正月映画として全国東映系の映画館で公開されるはずでしたが、2008年12月に製作者サイドの諸事情を原因として公開中止を発表。理由は、ほぼ完パケとして完成したのだが資金面で問題が出たとしています。
まとめ
いかがでしたか?
こんなにも話題になりそうな映画が誰の目にも触れずに眠っているというのは、かなり残念ですね。製作サイドや演技者が血のにじむ思いをしながら作りあげた映画の数々に、お線香をあげるだけというのは忍びないものです。
ぜひDVD化だけでなく、これらの作品が劇場のスクリーンで観られることを願っています。
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