裏社会ライターが行く!:無断駐車に天誅を下す電波系ババアはどんな報復をしてくるか?

  by 丸野裕行  Tags :  

どうもどうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です!

本当に裏社会ライターってのは因果な商売でして……。
イヤな取材の経験が山ほどあります。

前回お伝えしたのは、

『Mission1.電車で怒鳴っているオヤジに話しかける』
https://getnews.jp/archives/2217653

でしたが、今回編集部にムチャぶりされたのが、「地元で評判の電波系ババアに話しかけてこい」という取材でした。

それは、意味不明な文言が無数に書き連ねてある看板を、所有している駐車場のいろいろなところに掲げている60代のばあさん。いろんなことに文句をつけて、市民運動に精を出す電波系の貧乏なばあさんではなく、彼女は地元でも名の知れた大地主です。

数ヵ所の月極ガレージを所有するほどなので、おそらくはセレブ。しかし、そんな金持ちがガレージにひと味もふた味も変わったメッセージ看板を張り巡らせているというのだから、不気味すぎます。

その中でも気になるのが、駐車禁止を警告する看板でした。

《ここに止めれば、子供にバチが当たる》
《警察が来る》
《自宅に押しかける》
《お経をあげに行きますよ》

脅迫めいた言葉が書かれています。

では、このガレージに無断駐車した場合、一体どうなってしまうんでしょうか? そこで、友人のボロ車を借りて、実際に駐車してババアがどんな報復をしてくるのか、実験してみました。

ショッピングモールの客が無断駐車するガレージ

まず手はじめに、友人にボロ車を借ります。もちろん用途は正直に言えません。電波系ババアの駐車場に無断で車を止めて、なにをされるのか実験したい……など拷問を受けても言えるわけはありません。

僕は、買い替え寸前のシートに子供のヨダレが染み込んだ10年落ちの乗用車を借り、無断駐車初日を迎えました。

周辺に住む知り合いに聞いた話では、このガレージ近くにショッピングモールがあって、週末の夕方になると、立体駐車場に止めた利用客の渋滞がひどいそうです。駐車場を出庫するだけで小一時間かかるということで、その渋滞を回避するために、近隣ガレージに短時間、無断駐車するらしいんです。そのモラルが皆無のドライバーたちに、ババアは、自ら鉄槌を下しているそうです。

平日ということもあってか、無断駐車もないほどのガラ空きぶり。名前のプレートがはめ込まれた契約者の駐車場もガラガラでした。

とりあえず車を契約者のいないスペースに滑り込ませて、じっと待ちます。正直、こうしているしかありません。その間、ガレージに掲げられた警告看板を確認。無断駐車以外の看板も多く、政治家について言及するものもあれば、地球温暖化防止を謳うものもあり、あまり一貫性はなさそうです。

ガレージの舗装はガタガタで、雑草も茂り、ゴミなども散乱したままなので、ババアはあまり管理には無頓着なようです。しかし、いつババアがえらい剣幕で何をしてくるのか……考えただけでも、恐ろしくなってきます。

ついにやってきた!

1日目はボウズで、張り込んで2日目。

雨がアスファルトを打ちつける中で、僕は車に乗って、ガレージ一台分を占拠していました。この雨じゃなぁ……となんだか弱気になってくるわけですよ、ホント。小粒の雨がフロントガラスの上で踊っているのを見つめながら、横山剣さんと面影ラッキーホールの歌声を聴いていました。

すると、傘を差さずにこちらを覗き込んでいる人影がちらちらと滲んでいます。ひょっとして、まさか!

その人影がどんどんとこちらへと近づいてきて、地主のババアだということがわかりました。ババアは、こちらを睨みつけながら、フロントガラスに貼りついています。

「この車、1週間前から止まってるやんか!」とババアが開口一番、オレを怒鳴りつけてきました。

「す、すいません」

1週間前には来ていないんだけど……よくわからんなぁ。

「ええ加減しいや! そりゃ、おんなじ地球の人やけど!

うん? えっ? その《おんなじ地球の人やけど》ってなに?

「私は先祖代々からのこの土地を守ってるのよ!」

「す、すいません」

「だから~、この土地に勝手に入ってくる人は許せないって!」

「え、ええ、すいませんでした!」

おんなじ地球の人でもやったらいけないことがある! 神聖な場所なの!

おいおい、また言ったよ。なんだ、その“おんなじ地球の人”って! やっぱ電波っぽい感じの話し方だ、このババア……。ここから、このおばちゃんのイカレっぷりがどんどん明らかになってきます。

“オンナイン”で警察に繋がっている

「ここに無断で車止めたら、警察が急行してくるでしょ! この駐車場と府警本部は直通してるの!

「直通、です、か? どんな感じで繋がってるんですか? オンラインで、ですか?」

「そう! “オンナイン”! “オンナイン”の電話で直通してるの!」

なんだ、オンナイン電話って?

「あんた、子供にバチが当たるよ! そう決まっています! 駐車するか!

まったく的を得ないババアの返答に、僕はちょっと怖くなりはじめました。よくも、よくわからないことをこんなに怒鳴れるものです。

「勘弁してください!」

「買い物で勝手に車止めて、何を言うの! 懲役ものよ、本当に! 弁護士も言っています!

はぁ? ……ホントに怖い。

「実は、隣の○○病院に母親が緊急入院し、病院の駐車場が満車になってるんです……。仕方なく、駐車させてもらいました」

ババアの怒り心頭具合をクールダウンしたいので、僕は親孝行の息子を演じました。

「母の見舞いと母の着替えを届けるためにやったこととはいえ、悪いことをしたと思っています。今後は、絶対に止めません。なんとか、お許しください! 警察に“オンナイン”で直通するのだけは勘弁してください

そうなだめると、ババアの表情がちょっと柔らかく……。

「お母ちゃんが病気になったのはわかるけど“オンナイン”してしまうよ。“オンナイン”が直通だからね。おんなじ地球の人が“オンナイン”になっていくよ!

な、なにを言っているんだ……。ちょっと怒りが収まったのか、ババアはトーンダウン。それにしても、なんかオンラインの意味がめちゃくちゃ。聞いているこっちがおかしくなりそうです。

「今からお詫びのものを買ってきますから、大家さんのご自宅へご挨拶に伺わせていただきます

僕がそう伝えると、ババアは頷きながら帰りました。きちんと筋を通すようなお詫びをすればなんとか“オンナイン”せずに許してもらえるらしい。許してくれるスイッチがよくわかりません。それから僕は、近くのショッピングモールへと走りました。

贈答用のラスクを買って、お詫びに行きましたが、ババアは一言も発さずに、こちらをじ~っと見ているだけでした。

やっぱり変な看板を掲げる物件や駐車場には近づかない方がいいようです。あんなメッセージを発信しているような人は、絶対普通じゃないから……。

僕にはまったく理解しがたいババアでした。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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