「ひどく追い込まれていた、復活の日までは…」本国メガヒット韓国映画イ・ビョンホン監督、撮影時の“後がなかった”胸中を明かす

  by ときたたかし  Tags :  

「昼はフライドチキン屋、夜は麻薬捜査班!」「“揚げる大捜査線”が開店!」などというワクワクワードが踊る韓国映画、『エクストリーム・ジョブ』が1月3日(金)より公開となります。本作は『二十歳』などのイ・ビョンホン監督が手がける刑事モノで、本国韓国で動員1,600万人を突破!韓国歴代興収ランキング第1位というメガヒットを記録しました。

■公式サイト:http://klockworx-asia.com/extremejob/

刑事モノではあるものの、「昼はフライドチキン屋、」で察するように、成績が上がらず後がない麻薬捜査班たちが、大物を逮捕するためにチキン屋に潜伏するも、隠れ蓑目的で揚げていたチキンが、まさかの大評判。営業と捜査の間大奮闘するコメディーに仕上がっています。一躍ヒットメイカーとなったイ・ビョンホン監督ですが、実は劇中の捜査官たちと同様、撮影当時は後がない状況だったとか。その当時のことをうかがいました。

●凄まじいメガヒットで大変おめでたいことだと思いますが、なんでもみなさんそれぞれ、撮影前は“後がない”状態だったそうですね。

実はこの映画と出会う前は関係者全員、切迫していた感はありました。なぜなら、前作がちょっと失敗していたからなんですね。また、一番年下のジェフン役のコンミョンさんは、ここまでの主役級を映画ではることは初めてでしたし、チン・ソンギュさんはいままで悪役が多かった。彼にとって今回はイメージチェンジだったわけです。そのことへのプレッシャーがあり、コ班長役のリュ・スンヨンさんも前作がちょっとコケていました。

●なんだか、そのまま映画になりそうなストーリー性ですね。

イ・ドンフィさんはしばらくスランプに陥っていて、何か月も休業していた後の映画出演でした。女性のイ・ハニさんは主演で映画に出ることが初めてということもあり、製作会社自体も前の作品で失敗していたんです。みなさん、大変な圧迫感、切羽詰まった状態で集まっていたんです。だから、この映画が成功したことは、単なる数字で計算できること以上のものがあったと思います。本当に大きな感動がありましたし、「お互いよかったね!」と肩を叩き合って、お祝いしながら過ごしたこの一年間でした。

●もしも今回ダメだったら引退、みたいな覚悟も?

そうですね、内心はものすごく追い込まれていました(笑)。俳優さんたちともお祈りし合ったり、韓国で公開された時は1月23日だったのですが、僕たちの間では<復活祭の日>と定めていて、そう呼ぶことにしています。それくらい今回の映画の成功というものは、わたしたち全員にとって人生のターニングポイントになるくらの出来事で、単に興行的に成功したということではくくれない、事件レベルの出来事になったと思います。

●みなさん全員が追い込まれていた事情を抱えていたことは、いつどうやって共有したのですか?

データでわかることもあるので、言葉にしなくともわかってはいました。ただ、撮影前にみなさんとはしょっちゅう会っていたんですよ。前作と比べても俳優さんたちとは本当に気が合いましたし、セリフの量も多かったので、セリフ合わせということで、とにかく会う機会が多かった。でもセリフ合わせで会ったのに、おしゃべりだけして帰ったこともありました。

そういうなか、お互いの心理状態であったり、個人が置かれている状況などを、みなさんで包み隠さずお話ししていたので、全員で分かち合うような感じになりました。なので絆が深まった関係がいまだに続いています。

●今回は「イケそう!」と、どの段階で確信しましたか?

キャスティングが終わった時点と言えます。もともとのシナリオそのものに自信があったので、これはもうキャスティングが上手くいけば、後は大丈夫だろうと思っていました。だから、その時点で成功するとまでは断言はできなかったですが、失敗はしないだろうとも思っていました。自分のキャスティングが完璧に終われば、「いける」という自身がありました。

●ちなみに、今後はどういう作品を撮りたいですか?

すでに進行している作品があり、2020年ホームレスワールドカップに初めて出場することを題材としたヒューマンドラマになりそうです。実はキャスティングの一部も決まっていて、今シナリオを脚色している段階です。

●どういうお話で?

ホームレスの人たちが置かれている立場というものは、外部から他者から何かを傷つけられたりとか、感情の面で何かが欠如しているところがあるじゃないですか。そういう人たちがサッカーなどのスポーツを通して、心の傷を克服していって、成長していく。そしてまた家族の元へ戻っていくという非常に温かい家族ドラマになると思っていただければと思います。

●さて今回の『エクストリーム・ジョブ』は1月3日(金)で、ちょうど日本でも「お正月はチキン!」などということを言っている人たちもいたり。意外にちょうどいいのかな、ということでメッセージを!

韓国もお正月の時期に公開されましたが、人には笑いが必要だと思いますので気軽に笑ってほしいです。そして笑った分、幸せになれるとも思います。家族と過ごす時期がたくさんあると思うので、家族と観てください。

■ストーリー

昼夜問わず走り回るが、実績はどん底、挙げ句の果てに解散の危機を迎える麻薬班。これ以上引き下がることのできないチームの年長者であるコ班長は、国際犯罪組織の国内麻薬密搬入情報を入手し、チャン刑事、マ刑事、ヨンホ、ジェフンの4人のチーム員たちとともに潜伏捜査に出る。麻薬班は24時間監視のため、犯罪組織のアジト前にあるチキン屋を買い取り、偽装創業をおこなうことに。まさかの絶対味覚を持つマ刑事の隠れた才能でチキン屋は一躍名店としての噂が広まる。捜査は後回し、チキン商売で目まぐるしいほどに忙しくなった麻薬班に、ある日絶好の機会が訪れるのだが…。犯人を捕まえるのか、鶏を捕まえるのか!

映画『エクストリーム・ジョブ』は、公開中

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo