ブラック企業を捕食する「悪徳転職口コミサイト」の手口とは?

  by 丸野裕行  Tags :  

特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。

過剰すぎるノルマや恐喝まがいのパワハラ、理不尽な新人研修、睡眠時間を削った強制労働etc……そんな悪名高きブラック企業を喰いものにする業者がいるのをご存知だろうか? それが、“悪徳転職情報サイト”である。

求人誌やサイトに高い金を支払ってでも、奴隷代わりに働く転職者を確保しているブラック企業。今回はそんなブラック企業に脅しをかける、“悪徳転職情報サイト業者”のH氏にお話を聞いた。ブラック企業と互角以上に渡りあいメシの種にするという、さながら猛禽類のような彼ら。一体、どのようにしてブラック企業を“捕食”しているのだろうか。

転職サイトの仕事に誘われる

丸野(以下、丸)「どういういきさつで、このお仕事をはじめられたんですか?」

H氏「元々大手の求人広告企業に勤務していて、Web求人サイトのライティングを担当していたんですよ。その頃は、リーマンショックのあおりを受けていて、超不況でした。もちろんウチの会社も人員削減で……。まず切られるのは、営業よりも内勤の事務員やら、僕やら、デザイナーやらで……。退職金などでいい条件を出されて、円満退社したんですが、再就職というものなかなかでね……」

丸「なるほど、よくわかります」

H氏「そこに、独立起業した先輩・Fさんが声をかけてくれたんですよね。“ウチの会社来る?”と。失業生活が続いていたので、ワラにもすがる思いで、Fさんを頼りました。でも、Fさんも古巣と同じような求人広告の会社をやっていたんです。しかし、その会社は活況。大手の求人サイトなんかは閑古鳥が鳴いているのに、なぜなのか不思議だったんです」

丸「ほほう」

H氏「でも、Fさんは“ウチは顧客が増えに増えまくっている”と答えるばかりで……。具体的な話を聞くと、相手はいわゆるブラック企業だっていうわけです。普通求人誌や求人サイトなどでは、掲載に関するその会社独自の審査があります。その審査に落ちた会社は、掲載不可の烙印を押されます。以前、僕たちが在籍していた会社にもそうした掲載不可情報を集めた《掲載お断り情報》というのがありました。彼は前の会社からそういった不良企業の名簿ファイルをくすねたというんです。すごい根性してるというか、なんというか

《掲載お断り情報》とは?

丸「それって、犯罪じゃないですか」

H氏「ですよね。最近激増しているんですが、求人広告の会社は、暴力団とのつながりや粉飾決算していた履歴、社員の賃金の不払い、社員へのパワハラ教育など“問題アリ”とされる企業の求人を原則的には掲載しません。

Fさんは、そんな企業の求人情報をネットに掲載し、実際に働いたことのある元社員などが書き込んだマズい評判などがあれば、企業側に金を払わせて、記事を削除するか、取り下げるという恐喝まがいの商売をやっているというんです」

丸「そっか~。おかしな評判が求人サイト上に掲載されてしまうと、広告をいくら出しても“新戦力”となる次なる餌食である新入社員が、面接にすら来なくなってしまう

H氏「その通りです。ステマ恐喝みたいな感じですね。“お宅の会社の悪い評判を買い取ってくださいよ”と」

丸「企業側についているヤクザとかは大丈夫なんですか?」

H氏「Fさんは、“その交渉は、任しておけ”と。昔から黒い噂が絶えない先輩だったので、妙に納得してしまいました(笑)。やっぱり、新卒者や転職者が恐れおののくブラック企業でも、悪い噂がたちまち巷に広がってしまうネット評価や口コミの怖さは理解しているようですね。Fさんから話を聞いて、私はひとつ返事でその会社に入社しました」

丸「その総会屋のような会社に入社したんですね」

鬼畜の所業を繰り返すブラック企業の数々

H氏「私は入社初日から、ブラックと名高い企業やベンチャー企業の口コミをすべて確認していきました。様々なブラック企業が、大手の求人広告やハローワークなどに広告を掲載しています。やはり多かったのが、過剰なノルマを課して馬車馬のように働かせる不動産会社やプロバイダ営業などの通信会社が多かったですね。テレアポもそうです。その他にも、ラーメン店や居酒屋、ホテルなどの飲食系は、どこもすこぶる評判が悪かったです」

丸「どんな書き込みがあるんですか?」

H氏「やはり体育会系の経営陣が幅を利かせている会社は、鉄拳制裁も日常化しているという書き込みが多かったですね。さらに新人教育では、顕著にそのひどさが伝わってきます

《H氏が口コミで読んだとてつもない新人教育》

・空手有段者である専務の正拳突きを毎朝受けなければならない
・朝礼で、全員が喉を潰すほど絶叫させられる
・休憩時間には上司の説教を受けながら、苦手なものを食べさせられる
・肉体労働で水分を摂らせてくれない
・本人が仕事を辞めないように、家族が脅される

H氏「こんなのばっかりです。各企業、そのブラックぶりって言ったら凄まじいですよ」

丸「ひどいもんですね。で、こんな企業の連中を脅して、金を巻き上げると?」

H氏「正義の味方的に言えば、そうなりますね(笑)。でも、“月額30万円の子守料を支払ってくれれば、当社の企業口コミサイトに御社にとってもいい投稿をしますよ”みたいな感じの営業をしているみたいですね、ウチの営業は。私は、好印象を受けるようなライティングをして、多くのブラック企業にイキのいい新入社員を送り込んであげていますが(笑)」

働き方改革を推進しようとしている日本だが、労働基準監督署への総合労働相談件数は、前年度から1.2%増の111万7983件。11年連続で100万件を超えている状態で、不当な雇用を未だに行っている企業が多いことを物語っている。

問題を起こしているそのほとんどの会社がブラックもしくはグレー系だそうだ。

そのような企業体が存在する限り、それを利用して金を稼ぐ彼らの暗躍はとどまることを知らないだろう。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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