舞台『アリスインデッドリースクール コネクト』が多くの観客を魅了した理由とは  堀越せな「支えられているのを実感しました!」

11月10日、東京・新宿村LIVEにてアリスインプロジェクト主催 舞台『アリスインデッドリースクール コネクト』千穐楽公演が行われ、300人を超える満員の観客が集まった。ダブル主演としてガールズ演劇に挑む墨尾優 役・堀越せな、百村信子 役・白石まゆみ、紅島弓矢 役・栗生みな、総勢21名の女性キャストたちが舞台の上で演技を披露する。タイトル通り”繋がり”をテーマとした本作の内容に、初めて作品を知った人だけでなく、これまでのシリーズを観劇した人からも絶賛の声が上がり、全7公演のチケットが完売するほどの人気ぶりだった。これほどのハイクオリティの作品を作り上げた秘訣は何なのか。千穐楽を終えて、本作の魅力を振り返ってみたい。

開演と同時に観客を引き込む二人のやり取り

定刻の時刻に照明が落とされ、次に光が照らされたとき、舞台に立つのは一人の少女。墨尾優を演じる堀越せな。舞台は彼女が通う学校の屋上、そこにもう一人の少女、百村信子 役の白石まゆみが登場する。本作での二人のポジションは漫才コンビを組む相方同士。しかし、序盤では少し意味深な雰囲気を醸し出していた。回想シーン、とも思わせるやり取りの様子に、くぎ付けになった観客もいたかもしれない。

そんな二人が二言三言の言葉を交わし、照明が落とされた次の瞬間、本編へと進展していく。

日常から生き残りをかけた少女たちの生き様

学校に登校した学生たちの前に、突如として人を襲う影が現れる。屋上には、生き残るために、命からがら逃げてきた生徒たちが集結。

アリスインプロジェクト誕生10周年を記念し、初演から長きに渡りリメイクし続けた『アリスインデッドリースクール』シリーズの新作が、新キャストの座組と共に新宿村LIVEの舞台で幕を開ける。

これまでのシリーズを知っている人にとってはお馴染みのストーリーかもしれない。だが、本作の反響は予想以上のものだった。観劇し終わった人たちからは「凄い!」「良かった!!」と、驚きの声ばかりがつぶやかれる。

注目ポイントは人それぞれかもしれない。その中でも敢えて取り上げたいのが、キャストたちのお互いを支え合う気持ちを表現し尽くしたところ。

本作において、キャストたちのコメントで共通していたところ。それは”自分の演じるポイント”について語らなかったこと。全キャストの言葉で一致していたのは”仲間に支えられている”だった。

千穐楽に臨む直前、堀越せなは「7公演があっという間だったけど、みんなの熱は最後まであって楽しい」とコメントした。座長である彼女からその言葉を聞くと、熱を絶やさずに全員が最後まで駆け抜ける気持ちを持ち続けることができたからこそ、集大成を迎えることができたのだと実感する。

さらに、それぞれのキャストたちが演じるキャラクターの個性についても触れてみたい。

バランスの取れたキャラクターの個性を維持

本作の登場キャラクターで気になったこと。それは、誰一人として物語上で突出していないことだった。漫才コンビを組む墨尾優、百村信子の二人をはじめ、金属バットを持つ気性の荒い紅島弓矢、科学部に所属するサイエンティストの氷鏡庵など、個性の強いキャラクターたちにバランス良くスポットが当てられる。

演出家の上條恒は「座組を作る上で環境を作ることに徹した」と説明している。配役の演技やセリフの表現については、キャストたちが考えることを第一にしていたとのこと。それだけ、キャストたちの団結力を信じていたのかもしれない。

稽古中、キャストの中にはシリアスな場面で気持ちを臆してしまうメンバーもいたらしい。そんな状況でも、一人で抱え込まずに演技経験のあるキャストにアドバイスをもらいにいくなど、自分たちでどう乗り越えていくのか試行錯誤しながら公演日を迎えたとのこと。

本作のテーマでもある”繋がり(コネクト)”は、決して作中だけでなく、稽古時の過程から育まれた結果だと感じた。

稽古から本番へと育まれる仲間との繋がり


▲舞台「アリスインデッドリースクール・コネクト」主題歌・オープニングシーン「世界の始まりはいつも君と~コネクト~」オープニング

キャストたちの中にはスケジュールの関係で稽古を欠席したり、遅れての参加になったりしたメンバーもいた。欠員がいる状況でも、誰かが代役を務め、途中から稽古に参加したメンバーがいても進捗状況を伝えて、全員が舞台の成功を目指して意識を高めていることがわかる。

初演からの公演について「屋上が毎公演違うんです! 私が演じたあとに気になった場面があったんですけど、メンバーがフォローしてくれることもありました。そのあと、舞台を見たお客さまから褒めていただけて、ホントに仲間に支えられているのを実感しています!」と、自身の胸の内を明かす堀越せな。自身の演技について振り返ると「演技を通して周囲を気に掛けることが多くなりました。私が無意識にしてしまうことも、みんなから指摘してもらって直すことができたので、今までと比べて立ち姿から違うかもしれません!」と、意識している成長の要素を話した。

座組メンバーに感謝する堀越せな、彼女を支える相方の白石まゆみの二人が中心となる座組だからこそ、キャストたちが会話の中で視線を向ける力強さ、客席に放つ眼力の強さが印象的だったのかもしれない。それほどの真剣な面持ちが客席から見ていて、肌で感じられる舞台だった。

息の合ったダンスのアンサンブル、セリフを口にしたときの場内に響き渡る効果音、情感のこもったキャストたちの表情、ちょっとした小ネタの導入など、細部までこだわり、工夫を凝らすのは、妥協のないキャストたちの意気込みが作り上げた演出にも感じられる。

観劇中に思わず涙腺を緩ませる観客がいたのは、キャストたちが伝えようとする想いを五感で感じることができたからだろうか。気持ちが一つになって作品と向かい合うキャスト、座組だからこそ、演技を見ていて共感できたのではないだろうか。

キャスト同士、そして、舞台を観劇する人たちに全身全霊で向き合うメンバーだったからこそ、観客を感動させる舞台を完成させることができたのかもしれない。

※トップ画像はオフィシャルスチール

オンラインライター/ニュース記者。主に舞台・ミュージカルのゲネプロ公演の特集や各アーティストのインタビューをしています。

Twitter: ryosuke_nojima