『ライオン・キング』ジョン・ファブロー監督を直撃!「この新しい技術をパークで展開したい」

  by ときたたかし  Tags :  

2019年度ディズニー映画、最大の注目作である『ライオン・キング』が、ここ日本でも絶好調の兆しを見せている。今作の『ライオン・キング』は、現代社会に生きる我々に向けた新たな魅力もあり、その最大の功労者が監督のジョン・ファブローだ。来日したファブロー監督に話を聞いた。

●3年ぶりでお久しぶりです。本作は『アベンジャーズ/エンドゲーム』を思い出すような勢いの興行収入だそうで、最近のディズニー映画は絶好調ですよね!

最初の発表よりも数字が上がったよね。日曜日にキッズがたくさん観たようでね(笑)。

●そちら側にいる人の視点で見た場合、ディズニー社の映画作りのスタンスは、どこがスゴいでしょうか?

おそらくディズニー社は、自分たちのIPをきちんと理解しているスタジオだと思う。作品を作る際も全員で既定のエッセンスを守りつつ、仮に変えても変えすぎないところが絶妙だと思う。あとは、よく知っていると思うけれど、映画で体験した感動や世界観を、グッズ、テレビ、リゾート、パークなど、さまざまな形式で展開して、ディズニーのすべてのビジネスの側面の中でアイデンティティーみたいなものが、同じように流れて行くように作っているところだと思う。

たとえばフロリダのディズニー・アニマルキングダムというパークで『ライオン・キング』のショーを観たら、またそこでつながっていく。服であったり、おもちゃであったり、その作品のエッセンスを反映したクオリティーでつながっている。

●何度かフロリダにも行っていますが、映画を観ながらディズニー・アニマルキングダムに行きたいと思いました。パーク誘導なども意識はしていますか?

意識的には何もしていないよ。特にパークを連想するようなことはしていないし、誰にも頼まれてはいないよ(笑)。ただ、アニマルキングダムの動物たちを、かなり参考にはしている。当初、生きものたちをスキャンしたいという話になって、それは負担がかかるので辞めようと。代わりに何ができるかを考えた時に、アニマルキンダムだと思いついて撮影の許可を取った。

それでイボイノシシやライオンなど、今回登場する動物たちは全部アニマルキングダムの動物たちを撮影している。それだから、そう感じているのかもしれないよ。ただ、ティザーポスターはムファサの足跡にシンバの足があるものだけだったけれど、今回の作品があまりにも写実的だったので、それを観たエグゼクティブディレクターは、これで『ライオン・キング』ってわかるかどうか心配していたそうだが、さすがに『ライオン・キング』のファンはわかってくれたよ(笑)。

●ディズニーネイチャーも同じように作っているそうですね。

サルやヒヒだけの特集もあるくらいで、ストーリーがきちっとあるドキュメンタリーを50年代くらいから手がけていることは、すごいなと思う。物語性がある自然のドキュメンタリーの伝統というものを、その頃から作って来ていて、それは本当に素晴らしいことだと思う。

●ちなみにパークでは『ライオン・キング』のシーンになると、すごく盛り上がりますよね。

日本はどうなの? 東京ディズニーシー?

●「ファンタズミック!」など公演中です。

かつて家族を東京ディズニーシーに連れて行った時に、ものすごくエネルギーをゲストから感じた。すごく熱くて、水にもびっくりした。第一、日本に来る時は、いつも夏なんだよ(笑)。最初の『スウィンガーズ』の時も、『ジャングル・ブック』も。一度は桜の季節に来たいな(笑)。

●余談ですが、今年の東京ディズニーランドは、ジャングルがテーマです。

それはいいね! いろいろ行ったことがあるけれど、東京ディズニーシーは特別だよね。

●フロリダのマジックキングダム・パークで開催されたDJイベントで「サークル・オブ・ライフ」が流れた時、親たちが子どもを掲げたそうですよ(笑)。

最高だね。やっぱり音楽じゃないかな。特に今回、製作している最中に、それは思ったことだね。あの音楽が流れ、日が昇る映像を観ると、ああ、って感じになるでしょう? 太陽が昇っているだけだよ(笑)。もちろん音楽はハンス・ジマー。もはや写真だけで泣ける。それだけ力がある音楽だ。25年も経っているのでアニメーションのオリジナル版は、全部映像を覚えていないかもしれないけれど、音楽は覚えているはず。それは母親が作ってくれた料理のようにね。あの香りのように。たぶん深い記憶のところで覚えているもの。それだけのパワーが音楽にはある。

それと、いまパーク用にいろいろなアイデアを集めているところだ。特に新しいテクノロジーを使って、今回のはご存知のようにゲームのエンジンだ。映画にも使えるが、やはりたくさんの観客の体験として使える。だからスクリーンではなく、プロジェクションなどで違った没入体験を作り出すことが可能だよ。あるいはARなどが進化するなかで、いろいろなことができると思う。パークにすでにあるものに、技術面で加えて行けるはずだ。だから、いまいろいろなアイデアを温めている最中で、どんどんイノベーションが進めば、パークの体験に応用できないか試したい。だから待っていてよね(笑)。『ライオン・キング』の制作が大変だったけれど、でもその経験を活かして、ディズニーとパーク部門と話して、もっともっと参加できることに僕自身もわくわくしています。

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo