2003年に当時の小泉純一郎首相(当時)が提唱し、昨年10月に提唱国の日本など8か国が署名した「偽造品の取引の防止に関する協定(Anti-Counterfeiting Trade Agreement, ACTA)」が7月4日に欧州議会で反対多数により否決されEUが不参加を決めたのは記憶に新しいところですが、7月18日にはメキシコ議会も上下両院でACTAの批准手続きを停止するよう12月に就任する予定のペニャニエト次期大統領に勧告しました。
メキシコは当初からACTAの起草作業に参加していたものの、昨年10月に東京で行われた署名式には参加しながらも署名を見送っていました。ところが、残り任期が6ヶ月を切ったカルデロン大統領はACTAへの署名を行わないよう求める上院と下院電気通信委員会の決議を振り切ってヘレル駐日メキシコ大使に署名を指示し、7月12日にヘレル大使が外務省を訪れて署名を行いました。
この署名強行に対する議会の反応は非常に早く、わずか6日で上下両院の本会議においてペニャニエト次期大統領に対して「署名撤回・批准手続きの停止・ACTAの枠組みからの完全な脱退」を勧告する決議が採択されました。決議においては「ACTAの何点かの条項は憲法により保障されている個人の権利と矛盾し、推定無罪の原則に対する脅威となり得るものである」と指摘されています。
今回のメキシコ議会による署名撤回勧告は当然にEUの否決と軌を一にしたものですが、提唱国の日本政府は依然としてこうした“ACTA包囲網”を「杞憂で騒いでいるだけの対岸の火事」としか見ていない状態が続いています。そのような姿勢は政府・外務省だけでなく国会議員の大多数にも共通しており、ACTAの承認案件は議論も低調なまま8月1日に参議院本会議を賛成多数で通過しています。既に日本国外では発効そのものが絶望視されているACTAですが、衆議院でも参議院と同じようにEUやメキシコで燃え盛っている“反ACTA”の炎が外務省の言うような「杞憂」に過ぎないと考える大多数の議員によって無風のまま批准されてしまうのか、それとも危険性に気付いた議員の方が多数になる逆転劇が起きるのか。衆議院外務委員会での審議は、今月中に実施される予定です。
画像:「Stop ACTA 24」(martinkrolikowski) http://www.flickr.com/photos/martinkrolikowski/6858379441/