空き巣が語る「巷にあふれる“留守情報”」

  by 丸野裕行  Tags :  

特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。今回はずばり“空き巣”についてお話してみたいと思います。知っているようで知らない空き巣の実体、プロの手口に隠された思惑とはいったいどんなものなのでしょうか。

先日、高須クリニックの高須克弥院長の別荘に、空き巣が入り、なんと金の延べ棒3,000万円相当が盗みだされた。

高須院長のみならず、現在日本の空き巣被害は、1日平均300件。年間11万軒が空き巣に入られているという。
じつは空き巣に入るのには、そうコツはいらない。今でも変わらず、日本人はセキュリティ意識が低い民族だからだ。

空き巣に入る唯一の難関といえば、押し入る家に本当に住人がいないかどうか。
最近では、自宅にいることを確認されて、金品を強奪しにくる輩もいるが、やはりリスクが高いし、捕まったときに量刑が強盗になってしまう。

では、どうやって長時間住人不在“お墨付き”の家を探すか。そのコツを掴んだコソ泥歴10年のF氏(46歳)に話を聞いた。
(※取材を元に再構成しています)

大学教授の家や芸能人は簡単

定職に就くことなく、ブラブラとした生活の中で覚えた盗みの味。

36才のとき、初めてぶらりと入った空き巣で、60万近くの現ナマを手に入れたオレは、それ以来ずっとコソ泥で糊口をしのいでいた。おかげさまで4年後の40歳のときには、大阪市内にささやかながらマンションを購入できるまでになった。

しかし、間一髪で逮捕を回避、寿命が縮むような目に遭うこともしばしば。ほとんどの原因は、オレの仕事中に住人が帰ってきてしまうことだ。ガラスの割り方、ピッキングの方法、サムターン回し、金品の探し方……そんなものは入った家に誰も帰ってくる心配さえなければ、たいした問題ではない。

一番の問題は「いる」か、「いない」かだ。

なにか、いい手はないもんか。絶対に住人が帰ってこないことを確信できるもの……。考えあぐねるオレの目に飛び込んできたもの。それは、大学教授の講演会の告示板だった。

《4月18日(土) Wホールにて1時~3時まで講演 講演内容『伴侶をなくすということ』》

テレビにも時折出演する名の知れた地元大学の初老の教授だ。ということは、このオッサンはこの時間に自宅にいないということじゃないか。しかも、嫁さんも亡くしてる! これだ!!

SNSでも情報ダダ洩れ

芸能人一歩手前の教授など自分の情報管理など行き届いていない。さらに目立ちたがりの著名人であれば、SNSなどに現在地を載せているセキュリティー意識が低すぎる人間もいる。

当日、教授の自宅に忍び込めば、案の定、家族も誰もいない。

オレは、目ぼしい金品の隠し場所(仏壇、ソファの下、冷蔵庫、米びつの中など)を物色し、現金や時計、貴金属など120万円相当を盗んだ。「この手は使える!」そこからオレの中で“空き巣熱”が再燃した。

芸能人は金を持っているはず

調子づいたオレは、全国の単身者の教授や評論家、学者のスケジュールを調べて、18件の盗みを繰り返し、総額で2千万以上の金を稼ぎだした。もっとほしい!――金目のものを持ってることがわかる連中……そうだ、芸能人だ!!

欲の皮がさらに突っ張ったオレの次のターゲットは、見せる商売を生業にしている芸能人。芸能人ならコンサートや番組収録、撮影などで地方に行く機会も多い。生放送なんて自宅にいないことを公言しているようなものだ。

インターネットで公式サイトみれば、ある程度のスケジュールはわかる。同時に家を留守にする時間もわかるということだ。

自宅住所を極秘にしているつもりでも、ド派手な車を“出待ち”のファンに写メられ、その頃はナンバープレート伝いに所有者の氏名や住所を知ることは誰でもできた。

セキュリティーが厳しい芸能人の家

タクシーの運転手は「ここは〇〇さんの家ですよ」と個人情報を喋ったりするので、ネット上には裏情報が飛び交っていた。

東京出張し、狙いを定めたのは歌手のF宅。半信半疑のまま、ネット上にアップされていた住所に行くとちゃんと自宅があった。簡単に忍び込み、100万ほどの金を盗んだ。

それから、芸能人Iや歌手のFなどで300万程度。思ったよりも金額が少ない。それに、大物どころになればなるほど、とにかくセキュリティーが厳しいのだ。何でもかんでもカギだらけで、必ず四方を監視カメラがにらんでくる。

割に合わないと感じたオレは芸能人を狙うのをやめた。

遂に逮捕され、懲役へ

悪いシノギは続かないものだ。それから6ヵ月後。帰ってきた男の住人と鉢合わせをしたオレは、男の渾身のタックルで吹っ飛ばされ、御用となった。

即刻警察に引き渡されたオレは、同じ手口での余罪がバレて平成23年2月、懲役4年の実刑判決を受けた。こうしてオレは空き巣歴10年にピリオドを打った。

今では自分の盗み癖を猛省し、地方都市の自動車工場で期間工として働いている。

いかがでしたでしょうか。

元プロの空き巣が最も着目していたポイントのひとつが「いる」か「いない」か。防犯の観点からすると、盗む側に不在であることを知られないことが重要となってくることがわかります。
また、「リスクが大きい」「割に合わない」と考えた場合にもターゲットとならないようです。

施錠がされていることはもとより、防犯意識が強そうに見える事、不在であるかどうかが外部からわかりづらいことが空き巣を防ぐ第一歩と言えそうです。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『丸野裕行の裏ネタJournal』や『初めての不動産投資マガジン』などのポータルサイト編集長、文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンデージャポン』、テレビ朝日『EXD44』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、ABC『雨上がりのAさんの話』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビ・ラジオなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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