裏社会インタビュー:「スパムメール職人」に話を聞いてみた

  by 丸野裕行  Tags :  

どうもどうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。

こんな商売をやっていると、いろいろなことを生業にしている人間と知り合います。

ネット社会になって、あなたの元にも数々のスパムメールというものが届くと思います。
奇をてらった変な文面が届き、思わず開いてしまったこともあるでしょう。あなたはあのスパムの内容を考え、書いているのが“プロ”だということを知っていますか?

今回は、スパムメール専門ライターであるO氏(48歳/スパムライター歴18年)に、どのようにして仕事を進めているのかのお話を聞いてみたいと思います。

転職先が超ブラック企業

丸野(以下、丸)「なんで、スパムメール専門のライターになろうと思ったんですか?

O氏「胡散臭いワンクリック詐欺とか出会い系サイトなんて世界とは無縁のところで生きていたんです。大学中退後にタウン誌を制作する会社に入社して、飲食店の店舗紹介記事やキャッチコピーなどを書いていたんですが、突然、会社が倒産してしまって……。大手求人広告に掲載されていたのが【HP制作のコピーライター】の仕事でした。キレイなオフィスのその企業に面接に行ってみると、即採用が決定しました。しかし.その企業には問題があったわけです

丸「なるほど。グレーを売り物にする企業だったんですね?」

O氏「ええ。違法なスパムメール代行と出会い系サイトの運営会社でした。ですから、同僚はみんな当たりのあった客へむけてメールを返信するサクラ役のお兄さんや女の子ばかり。でも、背に腹はかえられませんでした。そこから、全国配信される“スパムメール”の文言を考える専門ライターになったわけです」

丸「ほほう」

巧妙な配信システムを駆使するスパム

O氏「勤めはじめると、スパムメールの作成をしながら、自社が運営する出会い系サイトのサクラの仕事も同時進行していくことになりました。元は社長や社員たちのような文章で生きていない人たちが考えあぐねて、なんとか1日数本のコピーを搾り出すという感じだったみたいですが、僕が入社してからは恐ろしい本数をあげられるようになりましたね

丸「当時はどんなシステムだったのですか?」

O氏「実態としては、スパムメール配信側は単純に生成したメールアドレスに対してやみくもにスパムメールを配信しているわけではありません。いかに有効なメールアドレス情報を取得してスパムメールを送りつけるかのフローを確立しています。ボットネット(遠隔操作できる攻撃用プログラムを送り込み、外部から一斉攻撃を行えるネットワーク)の開拓や存在する有効なメールアドレスを探すシステムを回したり、メアド配信リストをまとめるメンテナンス作業。その後にスパムメール配信します。精度の高いメアドリストを、他のスパム配信業者から買い取ったりもしますね」

丸「スパムメールは出会い系だけですか?」

O氏「出会い系だけではなくて、バイアグラやアダルトDVD販売、健康ダイエット系の痩せ薬や育毛剤、金融なども扱っていますね。他からも委託されていますから」

スパムのトレンド傾向と対策を調べる

丸「なかなかお忙しいんじゃないですか?」

O氏「1日に作成するスパムメールは40くらいでしょうか。ワンクリック詐欺なのか、振り込め系なのか、顧客案件内容を確認して、作っていきますね。自社にも多くの他社スパムが届くので傾向を見極めます。いいコピーはパクれますから。当初は【簡単登録!可愛い娘と出会える!】【昼下がりの人妻専科!】のようなダイレクトコピーでも十分な反響があったんですが、数年前からは、すぐさま“即削除”“迷惑メール”行き。“訴求力”って時代によって様変わりしますよ。いかにインパクトのある文言で強く印象を持たせるか、ということです」

丸「僕も文章で飯を食っていますが、本当に難しいですよね」

O氏「インパクト強めのものがコンバージョンが高かったりしますね。例えば、【件名:至急連絡です! 本文:あ、間違えました!“子宮”の連絡です!】とか【件名:財産を差し上げます 本文:近藤といいます。実は、余命3ヶ月で、肺がんステージ4なのです……】なんかは実際に反響が高あったと聞いてきます。実際にアクセスすると、メールアドレスが存在するという確認が取れたり、ワンクリック課金になって翌日に法的に債権回収するなど脅しメールが届いたりするわけです

丸「なるほど」

スパムライターは、人のココロを釣りあげる職人

O氏「数年前からはスパムメールとはいえない代物を送りつけることに注力していました。送りつけた相手が惹かれる、顧客のデータ情報に合ったフェチ系AVなどの内容を含ませたメルマガ風記事を付随させたスパムを送りつけることです。そこから、興味を引き、誘導していく。ランディングページでもそうですけど、やはりWebライティングの仕事は奥が深いですよ」

丸「ときどき、なんか突拍子もない文面のメールが届くことってありますよね」

O氏「僕もやりますよ、突拍子もないやつ(笑)」

《O氏のスパムメール(1)》

件名:なにやっとんの? あんたのお母ちゃんやんか! 

本文:ホンマにこの子は! このメールを送ったのもええ機会やから、あんたに前から話さんといかんかったことがあったんよ。落ち着いて聞きや。あんたは、実はプレイボーイ貴族ドンファン家の血を引いてるんやで。またなぁ、細かいことは今度こっちに戻ってきたときに話すけど、お母ちゃんが言いたいのはそんなんやない。あんたはプレイボーイ男の血筋を引いとるのに、何を真面目にセコセコ働いてんの! 生まれもった女たらしの素質でヒモになりぃいや! 一番大切な出会いがあるのは
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《O氏のスパムメール(2)》

件名:どうもはじめまして、火野正平です

本文:どうも、おっぱいポロリが刺激的だったドラマ『混浴露天風呂連続殺人』に出演していた芸能界の種馬こと火野正平です。今まで多くの芸能人を口説いてきた女を誘って落とす方法を、今だけ無料でお教えします! ↓URLはコチラ↓

丸「ただの悪ふざけじゃないですか(笑) 反響なんてないでしょう?」

O氏「いや、これが意外にもあったんですよ」

丸「……?!

いかがでしたか?
迷惑でしつこいスパムメールにもやはり裏社会の立役者がいたんですね。

違法送信者に対し、総務省から措置命令を警告メールが送信されたとしても、別のプロバイダーに乗り換えればお咎めナシ。ネット犯罪は横行するばかりです。
スパムメール自体をネット社会から追放することなど無理なのでしょうか。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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