犯罪者インタビュー:「ブロークンウィンドウ恐喝を考えた男」に話を聞いてみた

  by 丸野裕行  Tags :  

どうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。

こんな商売をやっておりますと、様々なアイデアと言いますか、悪知恵をひねり出して、自分のシノギにする人たちに出くわすことがあります。

今回、話を聞いたM氏(38歳)もその中の一人。13年前、Vシネマの世界に憧れて、ヤクザ社会に足を踏み入れた彼。武闘派というよりも経済ヤクザを目指し、土地買収やシャブルートの仕切りなどの勉強をはじめた。が、しかし、暴力団新法の影響下では、なかなかいいシノギにはつながらない。

暗中模索で、彼が考え出したのが、“ブロークンウィンドウ恐喝”というものだった。

犯罪者心理をついた“ブロークンウィンドウ理論”を使ったシノギ

丸野(以下、丸)「そもそも一体何なんですか、“ブロークンウィンドウ恐喝”って?」

M氏「ヤクザの生活って本当に苦しい。丸野さんがスピードワゴンさんのヤクザ特集の番組に出ていたときに仰っていましたが、“貧困暴力員”が多いのは事実です。今日のメシ代もないって感じで……。そんなときに、テレビでやっていたのが、犯罪者心理をついた“ブロークンウィンドウ理論(割れ窓の法則)”です。世界で一番の犯罪都市だったニューヨークで、殺人事件が激減した、犯罪抑止の取り組みです。“まずは落書きを消す”という初歩的なことが犯罪抑制対策につながったんです」

丸「ヤクザと話しているとは思えないですね、このトーク内容(笑)

M氏「1969年にスタンフォードの大学教授が、とある住宅地にナンバープレートを外した乗用車を放置する実験をしました。様子を見守っていると、1週間ほど経過しても変化のない車の窓を叩き割ってみたそうです。途端に続々訪れた犯罪者が、バッテリーやホイール、部品など換金できるもののすべて盗まれました

丸「ほほ~」

M氏管理がされていない場所は、小さな犯罪を誘発しやすくて、それがやがて大犯罪に繋がるわけです。“自分だけじゃない”という意識が働いて、罪悪感が薄れ、結果的には自分も手を染めてしまう犯罪の連鎖理論。駅前に放置してある自転車がいい例ですよね。日本でも、2001年に札幌道警が導入して、駐車禁止や歩行者の信号無視などの小さな犯罪の取り締まりに尽力するようになった途端、犯罪件数が12%減少しました」

丸「犯罪に手を染めようとしているときに、それに注目。どうつながるのでしょうか?」

M氏「この理論を逆手に取って、金儲けはできないか……と考えたわけです」

丸「……!?」

ヤンキー車両を放置して親から20万ずつ脅し取る

M氏「そのアイデアをひねり出したオレは、板金工として働く後輩に連絡を入れて、タダで車を用意させました。車種は免許取りたてのヤンキーが乗るような10年落ちのセルシオです。ヤンキー小僧に人気のセルシオ、オイルがダダ漏れ、無車検の斜め赤斜線の車両を持ってこさせました」

丸「で、それを……」

M氏「とりあえず、そのセルシオを幹線道路を少し入った治安のあまり良くないススキが群生する土手に置き、ハンマーでウィンドウを叩き割ってみました。どう見ても、乗り捨てられた車の完成です。川に自転車が捨ててあったり、タグなど団地の壁一面に書かれていたりと、低所得者が住む街の典型です。半日経った深夜3時。オレは息を殺して、ススキの影から監視し続けました。2つの光が近づき、土を踏む数人の足音が近づきました。相手は3人。軋むジャッキ音。ターゲットは、タイヤを外そうとしていました

丸「本当だ、割れ窓の法則ですね~」

M氏「で、いい頃合いに“コラァァァ~! ナニさらしとんじゃ~!”と飛び出していく。一目散にガキたちは逃げますが、1人を引っ捕まえて、引き摺りまわします。で、全員の親に話をつけるわけです。ヤンキー小僧の家を一軒一軒訪ね、そこでは“警察に行く”と脅すわけです。むこうに“どうかこれで穏便に済ませてください”と言わせるように仕向けます」

丸「被害届けを出さないのを条件に慰謝料をもらうと……」

M氏ひと晩に3人で60万円になりました」

他人の土地に駐禁5万円罰金の看板を設置

M氏「相手は自分に非がある以上、払わずにはいかないわけです。それからは、場所を転々として、十数件同じ手口で恐喝し続けました。半年で500万ほどになったかな。でも、もっと効率的にやりたいな、と。で、街をブラブラしていると、街の外れに広い空き地があったんです。そこは有名な無料駐車スポット。管理地になっていないかなにかで、街に繰り出す連中が、ここに車を止めて歩くんです」

丸「よくありますよね」

M氏「誰が所有者だか誰もわからない。誰かが立ち入り禁止の囲いを外して、ほったらかしになっているようです。1台が駐車しはじめると、県外ナンバーまで当たり前のように止めていくわけです。閃いたオレは、ペンキで【駐車禁止罰金5万円】と書いた小さな看板を作成。一目では気がつかない場所に勝手に立てかけました。で、見た目でしょぼい車と弱そうな奴に片っ端から声をかけようと」

丸「うわっ……」

M氏「写真を撮って、やってきた家族連れに“おっさん、ここは私有地だ。ウチが管理してるんだけどな、あの看板みえないのか!”と怒鳴りつけると一発です。ごちゃごちゃ言えば、“民事で争おうか!”でOKです。ちょっとくらいなら値引きもしてやりますし。社用車なら“写真で押さえたから会社に払ってもらう”といえば、すぐに支払いますよ」

丸「あくどいなぁ~」

M氏深夜と土日の朝は狙い目です。酒を飲んでいたり、酒が残っている奴もいますから。一週間ほどで130万くらいになりました。笑いが止まらなかったですね」

丸「それって、バレないものなんですか?」

M氏「一週間半後にバレました。そこを管理している会社の人間がやってきて……。思いっきりヤクザでした。しかも、ウチの組とは比べ物にならない感じの……。平謝りで逃げました」

丸「あららら、バチが当たっちゃいましたね

廃墟に入るとホームレスたちが……

M氏「結局、他人の土地に勝手に看板を立てるのはさすがにアレなんで、また元の手口に……。ヤンキーたちが溜まるような誰も住んでいない建物の中に車を置こうと考えたんです。廃墟ブームでもありましたし、車にイタズラするだろうな、と」

丸「で、廃墟に?」

M氏「調子乗りのガキなら、すぐに盗むか破壊行為に及ぶだろうと。若者たちのドライブコースになっている廃墟に入ったんですが、薄闇の中に人影が見え、中にはホームレスが数人。彼らの住処だったようで、ボコボコに殴られましたね。若い奴らのイタズラに反撃していたようです」

いかがだったでしょうか。
彼はそのあと、命からがら逃げだし病院に入院したそうです。しかし彼は懲りません。ベッドの上でも退院した後でも、犯罪心理の本を読んで、また違う手口を考えていたとのこと。

意外にも勉強家の彼。正直、その情熱を他のものにぶつけた方がいいような気がします。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『丸野裕行の裏ネタJournal』や『初めての不動産投資マガジン』などのポータルサイト編集長、文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンデージャポン』、テレビ朝日『EXD44』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、ABC『雨上がりのAさんの話』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビ・ラジオなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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