裏社会インタビュー:悪行を繰り返す旅館の仲居

  by 丸野裕行  Tags :  

どうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。

世界に誇る温泉大国の日本ですが、社団法人日本温泉協会に登録された温泉地は、全国で約2,700ヶ所。風呂好きの日本人なら誰でも旅館などに宿泊した経験があるとおもいます。

うやうやしく出迎えてくれる従業員さんに身も心も預け、湯がとめどなくあふれ出る露天風呂にゆったりと浸かり、うまい料理と酒に舌鼓。上げ膳据え膳に日常を忘れる至福の時間。

しかし、あなたの世話を引き受ける満面笑みの仲居さんたちに秘密があるのをご存知でしょうか? 

もちろんすべてとはいいません。しかし有名な温泉旅館でも、「履歴書を出せないというワケありの女」が働いているという事実があるのです……。

今回は、トラブルが源泉かけ流しのように湧いて出てくる温泉旅館に勤めるKさん(38歳)にお話をお聞きし、彼女が知る温泉旅館の裏側をお伝えしたいと思います。

偽名を許す女将

丸野(以下、丸)「仲居になられたキッカケを教えていただけますか?」

Kさん「平成18年に、北陸・Z温泉にある『旅亭・花木屋(仮名)』に流れ着きました。女性誌の求人欄をみて電話をかけたんです。交際していたDV男から逃げるために、人里離れた場所に行ったんです。“履歴書は、こちらで書いていただきますから結構です”と言われたのも私には魅力でした」

「昔は身分証明書も提出しないでいい働き口が多く、新聞や女性誌に掲載されていましたもんね」

Kさん「ええ。その通り、“この紙に住所と電話番号、歳と名前だけ書いてね”と言われただけでした。水商売と同じで、詮索されたくない過去があるなら何も言わなくていい、という感じでした。でも、厄介ごとは勘弁というスタンスですが、日常茶飯事のようでした」

「で、偽名とウソの住所を書いたんですね」

よくしてくれる先輩たちの素顔

Kさん月給16万円、寮費・食費2万円引きの説明を受けて、私は就業契約書にサインしました。あてがわれた部屋に荷物を置き、支給された地味な和服に着替えてみなさんに紹介していただきました。全館で部屋数30室、お土産物コーナーとカウンターラウンジがあり、100名様を収容できる宿を、女性従業員18人、男性従業員7人でまわすのですが、朝からは戦場ですね

「布団の上げ下ろしとか、朝食の用意とか、館内の掃除、お客さんのお見送り、客室メイキングとか大変そうですもんね」

Kさん「休息時間はお客さんが出払ったあとのお昼間と深夜11時からのプライベートタイムだけ。毎日クタクタになっても、仕事の憂さ晴らしに必ず外に出かけます。それ以外にお金を使うこともないし、楽しみがないからです。でも、よかったのは初めの2週間だけ。3週目にはこの宿で働く人間たちの隠れた本性を知ることができたんですよね」

「それはどんな?」

お客さんの金を盗むのは当たり前

Kさん「仕事にも慣れた頃、商店街の親睦旅行御一行さまがお酒を召し上がって温泉に入られていたときに、清子さんがクローゼットの金庫の中を探っていたんですよ、合鍵使って。止めたんですが、“私ら、安い給料でこき使われているから、女将も黙認してるわよ”って、財布の中からお札を数枚抜いていました。それの半分を、私の着物の胸元にねじ込んできたんです。みんなもやっている……悪魔の囁きが何度もリフレインして、ありがたく受け取りました

丸「なるほど」

Kさん「環境というのは恐ろしいものです。それからは、清子さんから盗みの手口を教授され、ワタシも盗みにハマってしまいました。客の財布に入ったカードを盗み、週1日の休みをとっている仲居仲間が変わるがわる街に出て、換金できるブランド物の買い出し。団体客がくると格好の狩場になります。金庫に財布を入れるのを面倒に思った客の千円単位の小銭をネコババ。ちなみに、清子さんは窃盗での逮捕歴が2度ある過去を持っているそうです」

「マジすか!」

Kさん老人会なんかだと、ネコババし放題ですね」

自分を売る仲居

Kさん「シーズンオフには“ワケありカップル”が出没しはじめ、よほど2人きりにしてほしいのかチップをはずんでくれますし、結構割りがいい

「ほほう」

Kさん「それ以上稼ぎたい場合は、男性客相手に売春する仲居もいます。女将を頂点とする女の縦社会。ライバル意識と意地の張り合いで成り立っているんですよね。副業ですね、副業」

どれだけ稼いだか、で競り合うと……」

Kさん女将さんが斡旋してるときもあるんです。“枕仲居”ですね」

「女将さんが?!」

公安警察が旅館を訪れる……

「最後に、とんでもない事件に巻き込まれたとおっしゃられていましたね?」

Kさん「はい。旅館はじまって以来の大事件でしたね。私が1番仲のよかった同僚の美千代さん(31歳)は、何につけても、私のことを気づかってくれる仲の良い友人でした。2人でクリスマスを過ごしたり、買い物に行ったり……。でもある日、旅館に美千代さんを捜して、警察がやってきたんです。それも、どうも警視庁公安部の刑事で、彼女のことを探していたんですよね。そういえば、朝から美千代さんの姿を見ていないと思いました」

「公安警察ですか」

Kさん「あなた、親しくされていたあずささんですよね? “え、なんで私の本名を知っているの?”と思ったんですけど、刑事さんは“ちょっと、御足労願えますか?”と言われ、最寄りの署に……。取調室に閉じ込められ、3人の刑事が尋問をはじめました。“谷口美千代こと、キム・ジヒョンはどこへ行った!!”と言われて……。なんと美千代さんは、北朝鮮から密航で渡ってきて、日本で諜報活動を行なっていたというのです。本当に驚きました。もう訳がわからなくて……。共犯に間違われた私が釈放されるのが、2日後でした」

いかがでしたか?
さすがに最近では身分証明書の提出を求められるそうですが、旅館を利用するみなさん、くれぐれもお気を付けください。

(C)写真AC

※編注・本記事は取材に基づく内容となっていますが、全ての旅館でこのようなケースがあるわけではないことを、あらかじめおことわりいたします。

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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