大ヒット中の“プー僕”と一緒に観たい『ティガー・ムービー プーさんの贈りもの』プーマスターが語るその魅力とは?

公開33日間で観客動員160万人を達成、現在興行収入21億円を突破しているディズニー映画『プーと大人になった僕』。実は本作を観る前に観たほうがいい映画があると、日本一のプー専門家「舞浜横丁」の林田周也氏は力説する。その映画こそ隠れた名作として名高い『ティガー・ムービー プーさんの贈りもの』で、今回『プー僕』をもっと理解するためにティガー座談会を勝手に緊急企画! ところが企画こそよいものの、林田さんと同じレベルで語り尽すプーマスターが近所にいなさそうというものぐさ事情で、<『ティガー・ムービー』ひとり座談会>を無理くり実施した!

●日本ではいま『プーと大人になった僕』がロングランヒットをしていますが、なんでも『ティガー・ムービー プーさんの贈りもの』も隠れた名作とうかがいました。その力説の理由とはなんでしょうか?

林田A(以下、A):実は『ティガー・ムービー』だけオリジナル作品なんですよね。それ以外の『くまのプーさん/完全保存版』やピグレットが主体のほかの作品などいろいろ出てはいますが、それらはすべて原作のどこかのエピソードを元にしていて。

林田B(以下、B):2011年版もお話を5個くらいまとめていますよね。

A:『ティガー・ムービー』だけ、ディズニーの完全オリジナルストーリーなんですよ。

B:なのにすごい。

A:原作に依存していないのにすごくいい話で、なおかつ原作への愛がある。

●『プー僕』みたいなスタンスなのでしょうか?

A:いや『プー僕』と違って、誰も共感はしないんですよ。ティガーが親を探す話なので、ぬいぐるみの気持ちは誰もわからないじゃないですか。

B:でも、ちゃんとプーをなぞっている。プーの世界観なんです。これに対して、『プー僕』は言ってみれば別次元で、別の解釈のものと言っていいけれど、『ティガー・ムービー』は同じ原作をディズニーが映像化したほかの作品と同じライン上にいる話として、ちゃんとできています。

A:でもめっちゃ感動します!

●『ムーラン2』などとは違いそうですね。

A:そういう続編系の中でよく言われていることは、『ティガー・ムービー』と『グーフィー・ムービー』のそれが最高であるということですよね。みんなパート2が食傷気味になって、観なくなってしまうじゃないですか。

B:『ムーラン2』観た後に『ライオン・キング2』観ようとは思わないよね。

A:途中で止めちゃうもの。

B:でも『ティガー・ムービー』は普通にいい。時系列としては『くまのプーさん/完全保存版』がまずあって、1966年に作り始めて1977年に完成したという。1997年に『くまのプーさん クリストファー・ロビンを探せ!』で長編シリーズが復活する。その次が『ティガー・ムービー』です。

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●ざっくりどういう話なんです?

A:<世界一のトラはオレ一人>ってあるじゃないですか。あれの反面で、世界一のトラはオレ一人ということにティガーが気づいてしまう。

B:ひとりしかいないって。

A:それでティガーが自分の家族を探すことがメインストーリーになるんです。

B:いるわけないんですよ。ぬいぐるみだから。

A:で、どうするの? という話です。

B:2時間かけてそれだけ。

●それだけ?

B:それだけ。2時間かけてティガーが家族を探す話です。

A:でも、すごく世界観を理解した作りなんです。

B:実はそのタイミングで、奇跡的にプーの大ブームも起こりました。2000年前後ですね。

A:グッズの売上がミッキーを超えたこともありましたよね。

●おふたりは、なぜにそこまでプーが好きなんですか?

A:きっかけはまったく覚えていないですね。その前からディズニー好きでしたけど。

B:最初はミッキーだったみたいです。幼稚園の年中くらいからプーに変わり、それ以降そのまま。

A:だんだん原作側にスライドしましたね。原作って、いくらでも掘れるんで、ハマッた感はありますね。

B:なんたかんだプーはディズニーのアニメーションでコンスタントに作っていて、たぶん一番多いんじゃないかな。

A:期間としては1966年から定期的に作り続けていて、ほぼずっと今年まで作っています。

●『プー僕』では、リチャード・シャーマンが活躍していて感動を禁じ得なかったですよね。

B:彼は一度ディズニーを去りますが、戻ってきて。『ティガー・ムービー』の曲も全部シャーマンが作りましたからね。

A:もう一度いま『プー僕』を思い返すと、あの最後はやばい。

B:プーも最初は短編だったので「ワンダフル・シング・アバウト・ティガー」も2番まであるのに1番しか使っていなかった。

A:それを『ティガー・ムービー』では、いきなり2番まで使う!

B:2番歌ったー! ってなるよね。始まってすぐに。

A:これぞシャーマン兄弟って感じですよね。

●『プー僕』と一緒に観るとよさそうですね!

B:そうですね。普通にプーの中では一番入りやすい側面も強いと思います。

A:『くまのプーさん/完全保存版』が一番わかりやすいですが、ストーリーとしてはメインなので。

B:でもオムニバスなので、話が途切れ途切れですからね。

A:その点、『ティガー・ムービー』は一本の長編として出来上がっていて、純粋に作品の質もいい。

B:たぶん、一番日本人好みのプーになっていると思うので、いまおすすめですね。

●ぜんぜん関係ないんですけど、あのアイスリンクにプーのぬいぐるみ投げる行為については、どう思っているんですか?

A:プーのファン層が広まれば、オタとしてはうれしいことでもありますね。

B:プーはネタ扱いされやすく、ネットでまともな会話が進まないことも多かったので、良いニュアンスで世間に広まるなら、それでよいかなって感じです。

今日はありがとうございました!

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo