バイト恐怖体験記!辞められない&トイレに行けない!地獄のテレアポワーク!

  by 丸野裕行  Tags :  

どうもどうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です!

ブラック企業というのはいまだに多く存在しています。そんな超暗黒企業でバイトをした経験のある方から、身の毛もよだつ体験談をお聞きする『恐怖バイト体験記』!今回は、勤めると3日で廃人になってしまう、関西某市にあったテレアポ専門企業のお話を聞いていただきましょう!

テレアポといえば定番の高収入バイトのひとつ。エステにサプリ、マンション、英会話テキスト、宝石、清掃、インターネット回線、ウォーターサーバーなどなど扱う商材は様々で、中にはうさん臭さ100%のものも。しかし、主婦やフリーターなどより高い時給で短時間に働きたいという人々には人気の仕事です。だから、求人募集も非常に多く、応募者だって一定の人数が集まるといいます。

しかし、このテレアポバイト、キツいノルマを課して、バイトとは到底思えない負担を強いる悪徳業者も多いらしいのです。今回、お話を聞かせていただいたのは、京都に住む片岡依子さん(仮名、25歳、主婦)。彼女が体験した恐怖の8日間を聞いていただきましょう!

超高待遇の仕事

私がその会社に勤務したのは、平成28年の4月。4歳の息子を保育園に預け、夫の少ないお給料の手助けになればと、短時間ワークを探していました。

【社名:ハイクラスインフォメーション 内容:未経験でもすぐに稼げるお仕事です! 簡単なテレアポのお仕事です! 商品は様々で、1日4時間からOK! 時給1,500円~スタートで各種バックが揃っています! 待遇:バースデー休暇あり、個人ロッカー完備、1週間の希望シフト制です】

求人サイトで見つけたのは、高待遇のテレアポバイト。この労働条件とお給料なら、自分の遊興費まで捻出できそうです。すぐに電話を入れて、次の日に面接。事務職の経験があるので、電話対応はお手の物です。

働くなら早い方がいい、と私はさらに次の日に入社。20名ほどの新しい仲間と共にミーティングに参加しました。入社して数ヶ月経つ先輩たちはなぜか顔色が悪く、皆一様に目の下にクマを貼り付けています。

整列するとまもなく、一見爽やかな雰囲気をまとった主任が現れました。

「おはよう! はい、では、今日の目標の数字を右から言ってみよう!」

主任は怒鳴るような声で、先輩たちに圧をかけます。な、なんなん、この雰囲気。私は違和感を覚えました。

「お~い、はよ目標わい!」

「ご、午前中だ、だけで、8件……。午後からは、10件は、い、いきます……」

「なんや、その目標! そんなんかい、目標ってのはな、達成できないけど、達成する気でいる数字を出すものや! もうええ!」

震える声を喉からひねり出すように出した先輩のひと言をかき消すかのように大声をあげた主任。なんだか、異様です。しかし、入社初日だったので、「この会社はこうやって士気を高めているのか……」と自分を納得させて、研修へと進みました。

インチキ商品を売る仕事

「はい、ここに『長命健水』という難病を治す水を買った顧客名簿があります。マニュアル通りに、その隣にあるガンが治るサプリメント『霊芝延命丸』の購入を促す電話をジャンジャンかけてください!」

は? なにこれ? 誰がこんなインチキ臭いもの買うの?

「とにかく、お昼の時間帯は、定年を迎えた夫婦や年金生活の年寄りが多いです。気合を入れて頑張ってください! なお、契約成立の場合はあなた方の歩合になりますよ!」

オフィスのスチル棚には、小中高の卒業名簿、会社員名簿、商工会議所の会員名簿などが並んでいます。中には、何度も悪徳業者に騙される“テレアポ優良顧客リスト”まであります。こ、コワぁぁ~

まぁとりあえず、アポ取りまでは私たちバイトが取りつけ、そのあとは専門の社員が契約交渉を行うとのこと。無事に締結すると20%がキックバックされます。とにかく頑張ってみることにしてみました。

トイレに立っただけで……

仕事をはじめてみて、5分。ビギナーズラックというものなのか、いきなり契約が取れ、それが立て続けに6件も続きました。

「片岡さん、あんた才能あるわ。慣れてきたら、1日で3、40件契約取れるで」

「い、いやぁ~、ホントにまぐれで……」

主任に褒められたことで有頂天になる私のそばに、50がらみの女性チーフがやってきます。

「あんた、もう辞めといたほうがええ。悪いこと言わんから……。このままいったらえらい目に遭うで」

女の嫉妬とは面倒なもの。嫌味を言われた、とそのときは思っていました。

その翌日。その日は、アポ取りも不調が続き、午後になっても、まったく契約が取れませんでした。

気分転換にトイレに立った瞬間、主任がしかめっ面で腕組をし、仁王立ちで行く手を阻みます。

「何しとんねん、便所なんて行く暇ないやろがい」
「す、すいません」
「何、泣いてんねん! 泣こうが喚こうが辞められへんど、コラ! おまえとの契約は3年契約や、サインしたわな? 勝手に辞めたら労働契約違反で損害賠償請求したるからな! 家族ごと追い込んで必ず取り立てるさかいな!」

そのすごい剣幕に腰を抜かした私を、悲痛の顔で見ていたのが、昨日忠告してくれた女性チーフでした。

その異常な運営実態は日増しに大きくなり、私自身も恐怖にがんじがらめになっていきます。トイレを禁じられて、同僚の前で経血を垂れ流す主婦、急性胃炎を起こして吐しゃ物をパソコンにぶちまけたフリーターの女の子、突然けいれんを起こして救急車で運ばれるシングルマザーもいました。

完全に洗脳状態の私も報復を恐れて、欠勤をすることなんて考えられません。もう口の中は口内炎だらけ。完全にストレスにやれていました。

1週間が経ち、いつも通り重い脚を引きずりながら出社すると、主任と女性チーフが大声でなんだか揉めています。

「もう限界や! もう辞めさせて! さもないと、労働基準局に駆け込みますよ!」
「な、なんじゃい、コラ!」

主任が怒鳴り声をあげながら、チーフの髪の毛を引っ掴みます。次の瞬間驚くことが起きました。なんと、チーフの頭髪がずるりとずれて、脱毛症でハゲタカのようになった頭皮が丸出しになったのです。彼女もかなりのストレスを抱えていたのでしょう。

「おい、おまえらなぁ! 労働基準局なんかに駆け込んだら、おまえらはウチの政治団体を敵に回すことになるど! 毎日、おまえらの家の周りで拡声器使って、軍歌流したろか!

続く主任の恫喝。その瞬間に、私は早足でその場を去り、この会社との一切の連絡を絶ちました。

履歴書にはしっかりと住所などを書き込んでありましたが、その後の追い込みや恫喝などは一切ありません。主任がオフィスで振りかざした恐ろしい言葉の数々は全部ポーズだったようです。あれから数年。今ではその会社はありませんが、どこかで同じようなこと行っていないことを切に願っています。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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