まるで暴漢!現役スリ師が語る最新スリの手口とは?

  by 丸野裕行  Tags :  

どうもどうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です!

突然あるはずの財布がなくなっていることに気がついた。それってよくあること? まず疑うべきは“自分が落としてしまった”ということ。
今どきなら、皆さん自分のせいにしてしまうだろう。

だが、昔は違った。それは、ある職業が幅を利かせていたからだ。その職業・スリ。人の財布をスッと抜きさって、その前から行方をくらまし、財布から現金を抜き取る窃盗犯のことだ。昔は、異名を持ったスリの名手というのがいたが、最近では聞くことはない。未だに、こんなのことを生業にしている犯罪者がいるのだろうか。

実は最近ではさらに巧妙化、さらに大胆になって被害が続出しているそうなのだ。そんなスリの集団とコンタクトを取ってみた。彼らへのインタビューを聞いてほしい。

プロの高齢化で集団化するスリ

今回取材に協力してもらったのは、関西地方を中心に窃盗を繰り返しているS氏が率いるスリ集団である。
彼らに、近年のスリの手口とスリに遭わない対策を教えてもらいたいと思う。

でもここで疑問だ。彼らも昔のスリのように手先が器用で、人とぶつかった拍子に胸ポケットに入った財布を引き抜く芸当ができたりするのだろうか。

[S氏]
「そりゃ、昔ながらのスリの爺さんやで。ぶつかった拍子に財布を抜くという芸当は、プロフェッショナルの諸先輩方ならではの神業や。一応、オレも師匠おんねん。基本中の基本、満員電車の中でもやったしな。まず場所とターゲット選ぶやろ、そのあとは金の出し入れを確認するんや、支払いしてるところとかな。財布の場所も確認しておく、尻ポケットか、上着のポケットか、で、あとは満員電車に吸い込まれたところで一緒に乗り込むんや。どれだけ相手に密着して、財布から気をそらせるか、というのがポイントやと、師匠が言うとった」

そう懐かしそうに話すS氏の師匠はもう91歳にもなり、現役を引退しているという。S氏は、師匠の高等なテクニックを学んだが、後世に伝えるには難しすぎて、若手を集めて、スリ自体の手法を変えたのだそうだ。「今ではほとんど集団強盗みたいになっているって言われても仕方がないような手口に変わってしまってる」と彼は語る。

では彼らの手口を具体的にお教えしよう。
まず、スリ入門編として、寝込みを襲うことからはじめる。いわゆる昏睡強盗というやつで「大丈夫ですか?」と終電で酔いつぶれた乗客を介抱するように近づき、そのまま財布を抜いてしまうというやり方だ。

[S氏]
「酔って寝てる客に“起きてください、終点ですから!”と話しかけながら、スーツのポケット、手荷物の中を探る。新人は、ここから人に慣れていくんや。で、人間というものはこの程度のもの、と知る。そこからは、さらに大胆になっていく。たとえばバーゲン会場や競馬場、競輪場なんかで、何かに対して夢中になっている環境下で、財布を狙う

さらに祭りやイベント会場などもターゲットになる。勝負事やバーゲンは、それなりの軍資金を用意しているものだから、実入りもいいのだ。

ここで、お教えしておきたいことは、電車の中では決して酔いつぶれないこと。格好の餌食になりかねないと肝に銘じておくことだ。

数人に囲まれる恐怖、絶対に忘れてはならない。満員電車などで、スリ集団が取り巻いたと感じた時でも、すぐに脱出するのが得策だという。相手は、気を抜いているあなたを見つける目をもっているからだ。

被害に遭わないための注意

そのほかの注意点は、
1.財布の出し入れは素早くスムーズに
……スリは現金がいくら入っているかを遠くからでもしっかりとみている

2.上着の内ポケットに財布を入れているときはつり革を持たない
……胸が開き、無防備になったところにスリの手が伸びてくる

3.飲食店で、椅子などに貴重品の入った上着をかけない
……ハンガーなどに吊り下げられた上着から財布を抜き取られる事件は絶えることがありません、事前に貴重品はカバンやズボンのポケットに移す

4.常に財布をバッグにしまい、ファスナーを閉めておく
……小銭だけはポケットに入れておくという一番安全な方法

5.トイレに立つときでもカバンは持っていく
……「大丈夫だろう」という油断が命取り、同席している友人に見てもらっていても、他人は自分のもののようにカバンをしっかり見ていない

などがある。

カードや個人情報が次の被害を生む

スリの目的はなにも現金だけではない。
今では誰もが持っているクレジットカードデビッドカード身分証明書も二次的な被害を生む。

[S氏]
「とにかく標的から素早くスッてきたら、詳細は教えられへんけど、クレカでショッピングやな。専門の業者がいくつもの店をやってるから、そこですぐに現金化できるような人気商品を買いあさる。で、そのままポイや。これは、泥酔者の寝こみでスリをやったときに有効やな。酔ってるからカードを停止したりするのが遅れるやろ? その間に商品を買ってしまう。どうせ盗難保険に入ってるんやから、持ち主も痛くもかゆくもないやろ」

そのためにも、日頃からカード番号を控えておいて、把握しておくのが重要だとS氏はいう。もちろんカードの緊急連絡先もちゃんとチェックしておくべきだろう。

ちなみに携帯電話にすべて書き込んでおくのは本末転倒。携帯電話までも、スリ集団は持っていってしまう。最近では携帯電話のロック番号解読ソフトもあり、ショッピング情報やネットバンクの情報などもログイン状態であればすぐに把握。よからぬ結果に結びつく。

[S氏]
「女なんかはな、カードキーやら自分の家の鍵、免許証なんかを入れてる場合がある。そんなときには、可愛かったら先に家に乗り込んで、待ち伏せ。スマホ片手に帰ってきたところをそのままレイプや。そりゃ興奮するやつばっかりで。オレも一回ついていったけど、ひどかったわ。縛り上げて、そのまんま吊るして、そのまま複数で襲う。考えられへんから、オレは途中で手を引いたけどな。ひとり暮らしやったら何度も何度も犯され続けて、気を失ってたらしい。で、吊るされたまま放置。誰にも言われへんわな、そんなことされたこと。可哀想に、そのままその子は自殺してもうた

なんという鬼畜の所業なのだろうか。私自身、女性を大切に扱う主義なので、少しこのときは怒りを覚えた。S氏は、警鐘を鳴らす。

[S氏]
「一番被害を受ける人っちゅうのは、“俺には、私には、関係ないやろう”とこういう犯罪系のことに無関心な人。振り込め詐欺でも、年寄りは無関心やから引っかかる。そんなあんたでも犯罪集団は、みんな平等な目でみてるよ。関係ないと思ってようがこっちには関係ない。無関心というのが、被害にあったとき一番怖い」とS氏は話を締めくくった。

情報過多と言われている昨今ではあるが、おかしなことに巻き込まれたくなければ、私たちは常に自分の目で世の中の流れを知っておかなければならないと思う。

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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