日系アメリカキャスターの突然の解雇

  by あおぞら  Tags :  

アメリカの朝は7時から各局が朝のニュース番組を放送する。16年間も視聴率1位を誇っていたNBCのTodayはABCのGood Morning Americaに視聴率を抜かれた。朝のニュース番組の巨人が崩れた感はあるが、これからは抜き抜かれつと拮抗する朝のニュース番組バトルになるのだろうと思っていた。しかし、制裁は下された。昨年、6月ようやくTodayの司会者なったアン・カリーが突如降板させられたのだ。

 

日本では知名度がないだろうが写真のニュース番組Todayの女性司会者はジャーナリストでもあり、世界各国を飛び回り重要人物をインタビューする。国内ではオバマ大統領、ブッシュ前大統領、クリントン元大統領をインタビューするし、ダライ・ラマからアンジェリーナ・ジョリーまでその守備範囲は広い。昨年の東日本大震災のレポートもいち早く日本に乗り込んだ。アメリカ全土誰でも知っている人物がこのアン・カリーである。

 

日本でもハーフのアナウンサーが活躍しているが、アン・カリーもハーフであり、父親は海軍勤務のアメリカ人、母親は山形出身であった。日本では特に欧米の白人とのハーフは売りになるが、アメリカにおいての日米のハーフは日本とは全く違い、それがプラスに働く”役得”はあまりないのではないだろうか。アン・カリーのかつてのインタビューではハーフであることでいじめを受けたことがあり、それが父親の仕事上アメリカ国内で転勤を繰り返した先々で、また佐世保に住んでいても同じくいじめにあったそうだ。

 

幼少期の辛い体験をバネにしてアン・カリーは、1978年地元オレゴン州のテレビ局でインターンにつき、その時点での将来性は全くの未知数。1980年に局初めての女性レポーターなり、そして同州内の更に大きなポートランドの局に移りそこではアンカーの椅子に座る。

 

4年後の1984年、主要局NBC系列のロスアンゼルスKCBS-TVにレポーターとして移る。そこでテレビ番組の優秀な番組に与えられるエミー賞を2度も受賞。1990年にNBCのシカゴでアンカーかつ特派員として1996年まで活躍。その間にニューヨークの朝のニュース番組Todayの現司会者マット・ラウアーが前職のニュースを読んでいたアンカー職のピンチヒッターでも度々登場した。

 

マット・ラウアーが司会に昇進するとアン・カレーに白羽の矢が当たり、マット・ラウアーのアンカー職をアン・カリーは手中にした、1997年の出来事である。1997年から2011年の14年間もアン・カリーはTodayのアンカーを務め、ようやく昨年の6月に全米1位の視聴率を誇る朝のニュース番組Todayの女性司会者になったのであった。

 

先週、CNNの画面にアン・カリーの姿が映った。それはジム内の音声無しの画像でニュース文字を読んでいくと『アン・カリーはクビになる可能性もあり?』とあった。それがまさかの昨日6月28日(木)ニュース番組Todayでメインの司会者二人は朝の9時までを担当するのだが、8時51分にアン・カリーが涙でお別れの挨拶をする姿を見るまでは信じられなかった。

 

番組側ではアンカーやレポーター含む番組出演者が他局へ引き抜かれるケースもあるし、また契約満期により延長を望まず去っていくケースもある。昨年前任の女性司会者メリディス・ビエラが番組をおりるときの盛大なパーティー形式に比べて、昨日のお別れの挨拶はいつもどおりのセットのソファーに、いつもどおりの番組スタッフがアン・カリー含めて4人並び、涙のアン・カリーの話を神妙に聞くだけのなんとも簡素なもので後味の悪さがあった。

 

アメリカにはパッケージと呼ばれるリストラの形態がある。大手企業では用いられていることが多いのだが、リストラされる際に2,3ヶ月分の給与を支給するのである。当面の金銭的工面は出来るが、それにしても突然のリストラはされる方には痛い。大物司会者にもこのパッケージに該当する処置がとられていたようだ。HUFF POST MEDIAと言うインターネットニュースの見出しにNBC News To Pay Ann Curry $10 Million To Exit ‘Today’: Reportとある。NBC局がアン・カリーの退職に関して10ミリオンドル(日本円で約7億9千万)を支払いとある。ここまでの大金を積んでも送り出したかったのであろう。

 

アメリカのメディアは厳しい。日本のように局アナは存在しない。自分の看板は自分で背負い、己の力で仕事を勝ち取っていくのである。日本のように欧米のハーフアナウンサーがその容姿で知名度をあげることはあり得ない。アン・カリーの降板に関して各種のメディアが取り上げているがDISGRASIANというインターネットのサイトではIs Ann Curry Getting Fired From “The Today Show” Because She’s Too Asian?の見出しに驚く。アン・カリーがTodayをクビになったのはあまりにもアジア人過ぎたから?と恐ろしく人種偏見の憶測が述べられている。

 

しかし、こういう見方があるのも事実なのだ。

 

アメリカの処置は厳しすぎるし、テレビ業界で働くキャスター、アンカー、レポーターの凋落を目の当たりにすることは多い。何もアメリカと同じように日本も厳しくすべきと思っているわけではないが、日本の局アナでタレントまがいの女性達を見るとテレビ局の資質を考えてしまう。実力勝負のアメリカで実力がありながら詳しい理由は闇の中だが、契約期間中にもかかわらず降板させられる日系ジャーナリストの胸中を察するに、日本のぬるま湯に浸かっているアナウンサーの状況が果たしてよいものなのかと感じ入る。アメリカには局アナは存在しない。

 

改めてこの降板劇はショッキングなニュースであった。お別れの数分の涙の挨拶は言葉は悪いがTodayでの15年の功労者のキャリアにおける公開処刑の様相に感じた。

 

画像: from flickr YAHOO!

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