2017年頃から、機械学習、人工知能、ビッグデータなどの単語をメディアでよく見かけるようになりました。テクノロジー系のメディアだけでなく、人材やキャリア系のメディアでも「AI時代に生き残るためには」のようなタイトルで、人工知能に人間の仕事が奪われる、ディストピアな社会でのキャリアアドバイスをしています。
しかし、本当にAIによって仕事はなくなるのでしょうか。人工知能を搭載したRPA(ロボティックプロセスオートメーション)を開発している企業、Workfusionの技術者1000名に、AIが人間の仕事を奪うかアンケートをした結果、意外にもほぼ全員が前向きな回答をしました。
大多数の従業員が、AIは仕事をより簡単にするだけでなく、多くの日常業務が自動化されることにより、従業員はより「楽しい仕事」に従事できるようになると回答しています。また、テクノロジーの発達により、むしろ雇用は増えていると65%の人が回答しています。実際に、「雇用」や「企業」という概念が登場してからずっと人口は増え続け、テクノロジーはずっと発展し続けていますが、人口の増加率に比べて、失業率はほぼ変わっていません
自動化によって、従業員が不要になるとは考えにくいでしょう。むしろ、より柔軟で、充実した仕事の機会が創出される可能性があります。
2018年は、AI普及の元年となるでしょう。とくに、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を採用する企業は増えるでしょう。RPAとAIにより、テクノロジーは、「コストダウン」ではなく「付加価値の創造」も可能になります。
アクセンチュアでも、同様の意見があります。アクセンチュアでは、AIによる雇用の減少よりも、AIに対応できる人材の不足を心配しています。ロンドンを本拠地とし世界各国で会計、税務、アドバイザリー・サービスなどのプロフェッショナル・サービス事業、アーンスト・アンド・ヤングは、世界中のCEOの57%が、短期的には人材の不足がAI導入の障壁になると答えています。
同じくアーンスト・アンド・ヤングのアンケートに、40%のCEOがAIに関する人材育成に力を入れると答えています。また26%がテクノロジー全般に関する人材育成に力を入れると答えています。
また、アクセンチュアは、人間と人工知能の円滑な連携を生み出すために必要な体系的なアプローチを提唱しています。
「必要なスキルを備えた労働者を準備する前に、雇用から仕事へのスポットライトを移すことが原則だ」とアクセンチュアは指摘しています。
同社は、主に下の3つのステップを提唱しています。
タスクとスキルの評価:企業は、一般的に社内の業務については把握していますが、その業務で実行される具体的なタスクや必要なスキルについては把握できていません。AIの能力を十分に活用するためには、これを把握しなければなりません。なぜなら、AIを活用するために、新しいタスクと新しいスキルが業務に必要になるからです。
新しい業務を作成する:
AIが進歩すれば、従業員は単純な繰り返し作業から解放されて、より価値の作業に取り組むようになります。具体的には、人工知能によってまとめられたデータを元に、洞察力と戦略性が求められる仕事、例えば、個別に最適化された顧客へのサービスなどが考えられます。
スキルと業務をつなげる:
最後のステップは、前述した新しい業務に必要なスキルの対策です。例えば、短期的には契約社員を活用し、長期的には社内研修制度を設けることになるでしょう。
人工知能は、間違いなく企業や従業員に大きな影響を与えるでしょう。しかし、人工知能を活用できるかどうかは、組織と人次第です。