ウマいメシ!エアコン完備!塀の外より快適な“民間刑務所”の実態

  by 丸野裕行  Tags :  

どもども、最近裏社会のことをまったく書いていない特殊ライター・丸野裕行でっす!

あなたは、民間の刑務所というものをご存知でしょうか? な、なんと、PFI方式(Private Finance Initiative)を利用した刑務所なんです。
まぁ、非常に小難しい感じでお話しておりますが、要するに資金の一部を、民間企業からの社会資本整備事業(これをPFIって呼ぶんですって)のお金によって運営がなされている刑務所ということなんですね。

旧・黒羽刑務所喜連川刑務支所跡地に国が開設した施設の維持管理を『東京美装興業』が、総務事務支援を『フジスタッフ』が、共に総務事務支援とお得意の施設警備を『セコム』が、職業訓練や領置物保管・健康診断・刑務作業企画支援を『三井物産』が、教育面を『小学館プロダクション』が、食事・衣類提供・洗濯・清掃を『エームサービス』が振り分けて行います。

刑務所維持の財政負担を14億円を軽減できた国は万々歳で、その代わりに、維持管理費を各事業者に支払うというもの。
事業者側も、購買と職員食堂事業からの収益を得られるので、お互いにWinWinということなんですね。

僕らみたいに刑務所に収監されたことのない人間にとっては、どんな違いがあるんだろうと思ってしまうんですが、一般的な刑務所との差は、雲泥の差だそうです。

日本には現在5ヵ所の民間委託刑務所があるんですが、刑務所とは呼ばずに《社会復帰促進センター》と呼ばれています。

収容される基準は?

このセンターへ入所できる基準は、
【A級】……刑期が1年以上8年未満の犯罪傾向の進んでいない者(初犯者)
【P級】……軽度の身体上の疾患又は障害がある者(医療刑務所または医療重点施設への収容を必要とする者)
【M級】……精神障害がある者
この3種類の級のみになります。

更生プログラムとしては、収容者同士のグループセッションを中心とした改善指導。職業訓練なども行い、パソコン操作など企業の即戦力として就労できるサービス業に重点を置き、理容師養成、介護士養成、医療事務養成、パン職人養成、PC上級養成、デジタルコンテンツ編集者養成、調理師養成、経理養成などで資格取得もできます

身体に障害を持つ受刑者のためには、理学療法士、トレーナーによるリハビリ、作業療法なども行うそうです。もちろん、高齢の受刑者には、認知症予防のためにも、脳トレドリルを活用したりするとのこと。センター内には、運動スペースの付いた個室や庭園型運動場も整備されています。

どんなところなの?

テレビや映画で見かける一般的な刑務所とは違い、外壁はコンクリート壁ではなく、フェンスが3重に施設周囲を取り囲んでいて、建屋内には男性用の棟女性用の棟もあるんです。

収容される房は、なんと5施設の約90%以上が完全個室。鉄格子がマストなはずの窓にも、強化ガラスが使用されているんですね。かなり開放的な造りって感じなので、自分が刑務所に入っていることを忘れてしまいそうです!

しかもですよ! その個室には、テレビやベッド、机、鍵付きの棚はもちろん、冷暖房完備。まるでビジネスホテルじゃないっすか!
作業している時間以外は、就寝1時間前まで部屋から多目的スペースまでの同じ階に限って、刑務官の付き添いなしで自由に房から出入りすることができるっていうんだから、恵まれすぎでしょう! ちょっと刑務所っぽい感じといえば、水洗トイレの便座がむき出しになっているところくらいで、快適ライフを送れそうです。

ここまでいいところではありません!

さすがに厳しいところも、刑務所だもの

このようなPFI方式の民間刑務所でも、一般刑務所と同じく男性の受刑者は“丸刈り”。でも、これくらいは高校球児だってやってますから!
受刑者には胸部にICタグを縫い付けた『ユニクロ』の舎房着を着ることが義務づけられていますし、数百台以上の監視カメラで24時間監視が行われています。

さらに、受刑者を力で取り押さえることができない警備員とともに、刑務官も配置されています。だから、おかしなことをすると、怒鳴られるし、怒られます

気になるムショグルメは?

山崎努さん主演の傑作映画『刑務所の中』などでも、おいしい刑務所メシが紹介されておりますが、社会復帰推進センターのムショメニューは非常に多彩で本格的。ここでは、6年前に、美祢社会復帰促進センターに入所した元受刑者・F氏が食べたムショメシをご紹介しましょう。

〈食事メニュー〉
朝:

モーニングセット(トースト、ハムエッグ、バナナ、ヨーグルト、ミニサラダ、コーヒー牛乳)

焼き魚配食(焼き鮭、わかめと豆腐の味噌汁、白飯、きんぴらごぼう、さくら漬け)

昼:

ハンバーガーセット(チーズバーガー、ポテトフライ、サラダ、野菜ジュース)
カツカレー配食(カツカレー、福神漬け、ミニスープ、ミニグリーンサラダ)

牛丼配食(牛丼、うす揚げとわかめの味噌汁、キャベツの浅漬け)
※作業の休み時間、テレビを観ながらの昼食です

夕:

とんかつ配食(とんかつ、ポテトサラダ、なめこの味噌汁、白飯、白菜の浅漬け)
タンドリーチキンとキーマカリー

ラーメン配食(タンメン、中華丼)
エビフライ配食(エビフライナポリタンスパゲッティー添え、ツナサラダ、コンソメスープ、白飯、キュウリのぬか漬け)

って「オレよりいいもの食ってるよ!」となる方も多いのではないでしょうか?
塀の外とあまり変わらない喫食内容にしている意味は、いち早い社会復帰を目指すため。
とにかく豪華で栄養価も非常に高いです!

社会復帰促進センターならではのトラブル

この激ゆる~い規則のセンターでトラブルが起こらないはずはない!
よくあるトラブルをまとめてみました。

〈実際にF氏が見聞きしたトラブル〉

・センター内には、若い女性看護師が常駐する医務室があり、セクハラをしたとして懲罰を受けた受刑者がいた
・若い経験のない刑務官ばかりがセンターにやってくるので、受刑者からのいじめなどがあり、刑務官が数人辞めた
・私物検査が甘く、タバコの持ち込みが横行していた

・一般の刑務所とは違い、医務では薬が処方されるので、それを入手して、大量に飲み、トリップする受刑者がいた
・開所当時は一般の刑務所から移送されてきた犯罪傾向が進んだ受刑者が大暴れし、警備員をボコボコにした
などなどいろいろと問題点がる施設なんですね。

そりゃそうです、だって相手は犯罪者なのですから

ちょっといいなと思ったあなた、本当に別荘代わりに使えるんじゃないかと思ってしまったあなた!
このセンターに収容されるのは、厳選された“まだ救いのある受刑者”だけ!

この施設に収監されたことのある元受刑者も「こんなところならもう一度戻って快適ライフを満喫しようかな」と思うそうですが、
ここに分類されるのは初犯だけですから、あしからず!

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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