宝くじの悲劇! 不幸まみれの半生! 年末ジャンボ1億円当選男、最悪の顛末! – 第2回 –

  by 丸野裕行  Tags :  

当選金である1億円を受け取るために、2週間後に家族連れで再びみずほ銀行大阪支店の応接室へ出向いた西田春夫さん(仮名・56歳)は、担当者と支店長、警備員が見守られる中で、テーブルの上に置かれた10個のビニール袋の札束を眺めてるだけだった。
この後、彼に降り注ぐ不幸の雨とは?

初めての敵は、他ならぬ兄弟

札束と一緒に記念写真でも撮ろうと思っとったんですけどね、写ルンですのシャッターすら押せんかったですね。
その場で銀行側に指示したのは、1億円のうちの5千万円をみずほ銀行に預けて、残りの2千万円をローンの全額返済に回し、3千万円は引き出しやすいように地元の地方銀行に入金してもらったんですわ。

それからは、みずほ銀行側から粗品が入った大きな袋を5つと、今までの人生で聞いたこともない【高額当選証明書】というものを手渡されました。

「西田さん、高級車や不動産物件をいきなり買ってしまうと、脱税を疑った税務署が来ることがあります。宝くじは非課税なので、そんなときにはこの証明書のコピーを提出してください」
「は、はぁ、そんなことあるんですか?」
「ええ、けっこうあるんですよ」

この証明書のおかげですぐに脱税の誤解が解けた当選者はかなり多いらしいです。

しばらく、目立たないようにしれぇ~っと過ごそうと思っとたんですけど、やっぱりいいことがあると人間は性格が激変するもんです。

仕事をしていても、そりの合わない上司のひと言を聞き流すことができる、嫌なお客さんのクレームにも腹が立たない、どちらかと言えば、もうみんなのことが【可哀想な人】に見えてくるんですわ。「はぁ~余裕がないんやね」という感覚で受け流せるゆとりがある。

まぁほんわかした気持ちのままで、年末恒例の自分の母親と4人の兄弟と一緒に行く家族旅行の時期を迎えました。
今までいろいろと世話になってきた親兄弟にだけは高額当選のことを伝えておこうと、ほろ酔いのまま、宴会の席で発表したんです。

「この度、サマージャンボ宝くじで1億円当選しました!」
「……」

兄弟は、徳利とお猪口を手に石像みたいに固まってしもうてね。母親は驚きのあまり、心臓マヒで死にそうになっとりました。僕が酔った勢いでそんな冗談を言うはずがないとみんな知っているんです。

「よ~やった! おまえはやる男やと思うとった!」

そのうち拍手が起こり、春夫コールが響きました。気を良くした僕は、このときの贅沢旅行を全額支払ったりましたわ。もうねぇ、今からしたらアホですわ。兄弟は本当に祝福してくれていると思ってたんやからね。

そのあと、兄弟間がギクシャクしはじめたのは言うまでもありません。
旅行から帰って、次の年を迎えたころ、兄弟からの金の無心がはじまったんですわ。

脅しをかけてくるように無心してきたのは、一番上の兄でした。長引く不況の中で、建設業をしてきた兄の台所は火の車だったようです。初めは、100万円、次は200万円、400万円、800万円と倍々ゲームで無心してくる額が増えていきました。合計で1,000万強。さすがに、次に融通するのは断りましたね。すると、

「オドレはオカンの面倒看てないから苦労はないけど、ウチは大変なんじゃ! 1億円もあるんやから吐き出さんかい!

兄弟でも金のことでこうなるんか、と。ほかの兄弟にもなんだかんだで600万円程度持っていかれたんですわ。

宗教信者や難病を抱える遠い親戚が湧いて出てくる

それから堰を切ったように、嫁さん側の親類が頼るようになってきました。
特に新興宗教に入っている親戚の勧誘がヒドい。

「(冊子を取り出し)ここに書かれているように、お金のような不浄なものは捨てるのが一番。ねっ、春夫さん! おばちゃんと仲良く一緒に幸せになりましょう!」

オバハン、誰やねん。葬式で2回くらいしか会うたことないわ……。
その他には、生命保険の外交員をやっている親戚や不動産会社で働く甥っ子なんてのが毎日家に押しかけてくる。

驚いたのは、鹿児島からわざわざやってきた親戚がやってきたこと。なんでも、嫁の妹のダンナの弟の従弟の奥さんらしい。いやぁ、こんな人知らんなぁ~。

「私の息子が難病で……。本当に困ってるんです!」
「はぁ、何の病気なんですか?」
「ウチの子は、【ハンチントン舞踏病】なんです」
ハッ、ハンチントン?!

もう冗談やないですよ、ホンマに。自分ん家に駐車した車には毎日キズをつけられるし……。
災害義援金の団体とか孤児救済団体とか連日のように電話をかけてくる。

ナミビアの山火事で焼けだされた野生動物に愛の手を……
ルーマニアのマンホールで暮らす子供たちを救えるのはあなただけ!
エスキモーたちが移民できるように、カナダの中心部に非難できる家を建てませんか! 彼らは本当に困っているんです! 北極の氷は溶けはじめているんですよ! あなたが考えている以上に!!

とかよくわからない救済の責任を負わせようとしてくるんです。もう、ちょっとノイローゼですわ。

でも、どうしても引っ越すのはイヤやったんです。せっかく建てたマイホームに愛着もあるし、職を変えて、家族と一緒にどっかに潜る気にもなれんかった。それが間違いの元ですわ。

手元にまだ6,000万ほど残ってたのに、家に固執してしまいました……。

≫≫『投資信託を断ったばかりに……』へ続く

(C)写真AC

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『初めての不動産投資マガジン』などのポータルサイト編集長、文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』TBS『サンデージャポン』テレビ朝日『EXD44』テレビ東京『じっくり聞いタロウ』AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』などのテレビ・ラジオなどで活動。 地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中!

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